DATAで見るケータイ業界
5G商用化を前に活発化する各社の「アライアンス戦略」
2019年7月12日 11:47
2020年春の5G商用化を前に、今年携帯各社はそれぞれプレサービスを予定している。
先日は、ソフトバンクが2019年7月26~28日に苗場スキー場で開催される国内最大級の野外ロック・フェスティバル「FUJI ROCK FESTIVAL '19」で、5Gのプレサービスを提供すると発表するなど、まずはその実力に注目が集まりそうだ。
ところで、5Gは基地局展開やビジネスモデル、活用領域などで、これまでの携帯会社の役割やビジネスモデルとは大きく異なってくるとされる。
そんな変化を前に、携帯各社が現在積極的に取り組んでいるのが「提携(アライアンス)戦略」である。ひと昔前なら、携帯会社同士が手を組むというのは考えられなかったのだが、これも新たな競争ステージで勝ち抜くための戦略なのだろう。
今回は、5G時代の到来を前に、携帯各社のアライアンスに注目していきたい。
上記の図は、現状の携帯4社の競争関係を整理したものである。
携帯会社は、これまで「通信レイヤー」の戦いを通して契約者数や基地局数、ショップ数などを増やしてきたが、最近は決済やポイントなど上位レイヤーへと戦いの舞台が広がっている。一方、楽天は2019年10月に携帯事業への参入を計画しているが、「コンテンツ・プラットフォームレイヤー」では、高い競争力を持っていることが伺える。
そうしたなか、驚きを持って受け取られたのが、2018年11月に発表されたKDDIと楽天による決済・物流・通信分野の提携だった。楽天が決済基盤と物流基盤をKDDIに提供し、KDDIが通信ネットワークをローミング形式で楽天の通信サービス事業に提供する。携帯会社の競争力比較という観点から、お互い競争劣位にあるレイヤーの強化が目的だった。
また、5G向け無線機(RAN)開発へ向けては、NTTドコモ向けメインベンダーであるNECがサムスンと、富士通がエリクソンとそれぞれ提携する形に供給体制を再構築。旧パナソニック部隊を買収したノキアを含め3グループとなった。
ここへきて国内ベンダーがグローバルベンダーと相次いで提携した背景には、「5G無線機の開発力強化」と、従来から続くいわゆる「ドコモ仕様への対応」という両立が必要だったためと推測される。
一方、7月に入り飛び込んできたのが、KDDIとソフトバンクによる5G基地局整備に関する提携で、鉄塔や装備を相互に利用できるようにするというもの。今年秋から北海道旭川市と千葉県成田市、広島県福山市の3カ所で実証実験を開始し、共同出資の管理会社設立も検討していくとしている。
携帯4社は、総務省に提出した5G向け基地局の開設計画のなかで2023年度末までに全国に7万局を設置するとしているが、それでは足りないと言われている。総務省としては5Gを地域課題の解決や地方創生に活用する観点から、「全国への展開可能性」と「地方での早期サービス開始」を求めており、今回の提携はそれに応える1つの解決策という捉え方もできそうだ。
そして、こうした動きは、スロースタートだった5Gの全国エリア競争を加速させることになるだろう。電力会社による送電鉄塔や配電柱貸し出し、全国20万基の信号機開放、NTTによるJTOWER出資による5G基地局のシェアリング推進の動きなど、それらを後押しする動きもでてきている。
5Gの覇権争いでは、アライアンス戦略が大きな鍵を握ることとなりそうだ。