ケータイ用語の基礎知識

第972回:アクションプランとは

目標遂行に向けて必要なアクションの概要を示したプラン

 アクションプランとは、(携帯電話に限ったものではなく)一般的な用語で、目標や計画の遂行に向けて、必要なアクションの概要(「何」を、「いつまで」に、「どう」して、「どこ」で、「どのように」など)を示したプランのことです。

 少人数のチームで使われることもありますが、企業の経営戦略や、政府の国家戦略に関して用いられることもある言葉です。一般的には、何か目標が目標やゴール・着地点がありそこにたどり着くにはどう行動(アクション)すればよいかを考えたモノ、ということになります。ただ考えただけではなく、そのアクションが正当であるためには、アクションを企図した・実行する組織の課題、課題ごとの改善案、進捗の管理方法なども考えておく必要があります。

 さて、組織と言えば日本の政府といった大きな組織でも総務省、農林水産省、文部科学省、国土交通省など様々な省庁が「アクションプラン」を発表しています。

 一般の人にとっても、またスマートフォンファンにとっても、最近、もっともインパクトが大きかった「アクションプラン」に関するニュースは、2020年10月に総務省が公表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」の公表がそれ、だったのではないでしょうか。

 2020年10月27日に総務省が、モバイル市場への今後の取り組みをまとめた「アクション・プラン」を公表し、その内容に「携帯電話の月々の料金が安くなる・ならない」と大きな話題となったからです

事業者へ自主的な値下げなどを促す「アクションプラン」

 実際に公表された「アクションプラン」の中身を「目標」「課題」「改善案」「進ちょく管理」に分けてみるとこのようになります。

2020年10月に総務省から公表された「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」の概要(総務省資料より)

 「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」の遂行すべき「目標」は、事業者間の競争がしっかりと働くよう公正な競争環境の整備に取り組むこと、とされています。

 また、携帯電話事業者にも、同時に本プランを踏まえて、公正な競争環境の下、各自の経営判断に基づき、国際的に見ても遜色がなく、利用者にとって分かりやすく納得感のある料金やサービスの実現に向けて、不断の取組を行うことが期待される、としています。

 誰が、何をするかに関してはこれで明確であると言えるでしょう。さて、「課題」としては3つあり、 以下のことが必要であるとしています。

1.利用者が市場とサービスの現状について理解を深め、自らのニーズに合ったプランを選択することを可能とする観点からの「分かりやすく納得感のある料金・サービスの実現」
2.MNO-MVNO 間及び MNO 間の競争により料金の低廉化やサービスの多様化を促す観点からの「事業者間の公正な競争の促進」
3.競争により実現した多様なサービスやプランを利用者が自由に選択し、できるだけスムーズな形で乗り換えることができるようにする観点からの「事業者間の乗換えの円滑化」

 加えて課題ごとの「改善案」では、以下のことをピックアップおり、それぞれ時期も定めています。

1.分かりやすく納得感のある料金・サービスの実現
・通信料金と端末代金の完全分離
・ 「頭金」の用法の是正
・キャリアショップごとに端末価格が異なる可能性があることについての周知
・ 適合性の原則違反が認められた場合の対応
・ 提供条件に係る消費者の正確な理解の確保
・中古端末を含めた端末流通市場の活性化
2.事業者間の公正な競争の促進
・MNO-MVNO 間での競争環境の整備(データ接続料・音声卸料金等)
・MNO 間での競争環境の整備(周波数の有効利用の促進やインフラシェアリングの促進)
3.事業者間の乗換えの円滑化
・行き過ぎた囲い込みの是正
・番号持ち運び制度(MNP)の利用環境の整備
・キャリアメールの持ち運びの実現に向けた検討

 また、「進ちょくの管理」の取組に当たっては、公正取引委員会や消費者庁等と連携し、総務省として必要な対応を行っていくとしています。

 アクションプランを読む限りでは、少なくとも、料金に関しては「携帯電話事業者にも」「各自の経営判断に基づき」「利用者にとって分かりやすく納得感のある料金やサービスの実現に向けて」「取組を行うことが期待される」としており、政府としては直接料金に関して値下げせよ、というような介入をすることはない、と主張しているようです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)