ケータイ用語の基礎知識

第970回:Beyond 5Gとは

5Gの次「Beyond 5G」

 Beyond 5G(ビヨンド ファイブジー)とは、5Gの次の世代、2030年代の無線・有線を含めた目指すべきネットワークのあり方とされています。“beyond”は「超えて」「向こう」を意味する英単語です。

 これまでのモバイル通信は、アナログの第1世代、つまり1Gからスタートし、およそ10年ごとに次の世代の規格が採用されてきました。2020年の現在では、第4世代の4Gが主流で、5Gの中でも一部のサービスが特定の地域で開始されはじめたという状況です。

 このペースが続くとすると、次の10年先、6Gに相当する規格は、2030年ごろの導入が見込まれることになります。

 そこで、日本では、総務省が中心となりこの世代を5Gを超える世代「Beyond 5G」として、導入時に見込まれるニーズや技術進歩等を踏まえた総合戦略の策定に向けて以下のような事柄を「Beyond 5G推進戦略懇談会」を開催し、2020年1月より検討を始めています。

2030年代の社会において通信インフラに期待される事項

・これを実現するために必要な技術
・我が国におけるBeyond 5Gの円滑な導入及び国際競争力の向上に向け望まれる環境
・これらを実現するための政策の方向性

目指すところは「5Gのユースケースをさらに拡大していくのに必要な技術」

 ところでこの先の10年後、2030年代は、どんな社会が期待されるでしょう?

 内閣府が定義している「Society 5.0(ソサエティ5.0)」では、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」を目指す、としています。

 簡単に言うと、IoTやビッグデータ、AI、ドローン、モバイル、自動運転といった技術によって、現代社会の課題である、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服しようというのです。

 そして、社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会とする、としています。

 さて、その「Society 5.0」実現手段として見たときの現在の無線・有線ネットワーク、とくに5Gモバイルネットワークですが、必要充分な性能を持っているのでしょうか?

 「Beyond 5G」では、高速性能として「アクセス通信速度を5Gの10倍」「コア通信速度は現在の100倍」、超低遅延性能として「5Gの10分の1の低遅延」「CPSの完全同期の実現」「補完ネットワークとの高度同期」、超同時多数接続性能としては「多数同時接続数は5Gの10倍」が求められる、としており、そのための研究開発が行われることになるはずです。

Beyond5Gに求められる機能 総務省提言資料から

 そこで、総務省の基本方針としては、「グローバル・ファースト」(国内市場をグローバル市場の一部と捉えて最初から世界での活用を前提とする)「イノベーションを生む、エコシステムの構築」(多様なプレイヤーによる自由でアジャイルな取り組みを積極的に促す制度設計が基本)「リソースの集中的投入」(我が国のプレイヤーがグローバルな協働に効果的に参画できるようになるために必要性の高い施策へ一定期間集中的にリソースを投入)といった施策でこれらを促進することになります。

要素技術の確立は2025年頃から順次始まる

 ところで、日本以外でも、5Gの先の、いわば6Gの実現に向け有望と考えられる通信技術について学術的な議論、ユースケースや要求条件に関する議論が始まりつつあります。

 日本は、かつて通信技術では高いレベルを持つと自負し、技術・特許も持ち、国内ではそれなりの力を持っていましたが、現在では世界的メーカーの圧倒的なシェアの前に、国内メーカー・通信事業者は決して優位とは言えない状況です。

 そのため、今後、Beyond 5G推進に関しては、産学官が連携して戦略的に取り組む場として「推進コンソーシアム」が作られ、戦略的パートナーとの国際連携体制の構築を行いつつ、早期かつ円滑な導入、そして国際競争力の強化(インフラ市場シェア3割程度など)を目指すとしています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)