石川温の「スマホ業界 Watch」

揺れる「フラグシップスマホ」の定義――多様化するニーズと最上位モデルの現在地

 フラグシップとは何なのか――ここ数カ月、スマホ業界でフラグシップモデルの立ち位置を改めて見直すタイミングが何度かあった。

 2026年9月22日から3日間ハワイ・マウイ島で開催された「Snapdragon Summit」で、クアルコムは「単一のサイズでフラグシップは定義できない」として、優れたAI性能と電力効率のバランスを両立する「Snapdragon 8 Elite Gen 6」と、最高峰のピーク性能を誇る「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」という2つのチップセットを発表した。

 実際、各スマホメーカーにおけるラインアップは多様化している。たとえばサムスン電子であれば、もともとのフラグシップモデルは「Galaxy S26」のようにSシリーズだった。しかも、そのSシリーズにおいても「S26」と「S26 Ultra」、その間に「S26+」がある。

 一方で折りたたみスマホにおいては「Galaxy Z Fold8 Ultra」や「Galaxy Z Fold8」、さらに「Galaxy Z Flip8」という3モデルがそろっている。

 それぞれターゲットとするユーザー層やニーズ、コンセプトは微妙に異なる。しかし、すべてに同じSnapdragonを載せるというのも、確かにもったいない気がしなくもない。

 今回発表された「Snapdragon 8 Elite Gen 6」と「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」は、共通部分もあれば、さまざまな違いも存在する。たとえば、カメラ性能においては「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」では8K60fpsの撮影が可能だ。カメラ性能を重視するという点においては、リアカメラが3つ以上搭載されているGalaxyに採用すべきだろう。

 一方、カメラが2つしかないようなモデルであれば、Snapdragon 8 Elite Gen 6で十分なのかもしれない。

 また、Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6では「Adreno GPU」において18MBの「HPM(High Performance Memory)」を搭載。「Adreno Neural Fusion」によってAIで解像度を高める技術が盛り込まれるなど、ゲーム向けの強化が図られている。

 「最強のゲーミングスマホが欲しい」という人にとっては、ゲーム向けの最高スペックを誇るスマホこそが「フラグシップモデル」であるため、そうしたニーズを捉えたいメーカーにとってはおのずとSnapdragon 8 Elite Extreme Gen 6が選択肢になるのだろう。

 今回、クアルコムは2つのチップをフラグシップ向けとアピールしてきたため、やや分かりにくい感じが出てしまったが、現状、メーカーのラインアップ戦略を考えると「2つのフラグシップSoCが必要」なのも納得というわけだ。ただ、名称が長すぎて、分かりづらいというのはなんとかした方がいいのではないか。

最高性能だけではない、各社が模索する「フラグシップ」の形

 フラグシップとは、そのメーカーの「顔」というべきモデルだ。メーカーのブランドや技術力を象徴する一台と言える。その点、アップルにおいては、初の折りたたみとなる「iPhone Duo」がフラグシップモデルになった印象だ。

 9月18日に発売されたiPhone 18 Pro、iPhone 18 Pro Maxの予約や売れ行き状況を見ると、多くのアップルファンはこれらをスルーし、10月23日発売のiPhone Duoを首を長くして待っている感がある。

 スペックのみならず、価格も最高峰であるが、アップルユーザーにとって、今のフラグシップは間違いなくiPhone Duoということになるだろう。

 一方、スペック争いから距離を置き、「必ずしも最高峰のチップである必要はない」と割り切っているのがFCNTだ。

 先日発売された「arrows Alpha2」のチップはDimensity 8350 Extremeとなっており、「手が届くハイエンド」という言い回しで、10万円程度でありながら、使い勝手のよい製品に仕上がっている。

 FCNTとしてはまずはユーザーがなんとか手が届く価格帯ありきで、その範囲の中で、最も使い勝手のいい使用感を重視し、スペックを決めていく。サムスン電子やアップルとは全く別のアプローチで「フラグシップモデル」ができあがってくるのだ。

 ここ数カ月、さまざまなメーカー担当者に「フラグシップとは何なのか」と尋ねたことがあったが、ある人は「ユーザーによっては、何年もOSをアップデートし続けられる機種こそがフラグシップになるのかもしれない」と答えていたのが印象的であった。

 各社ともしのぎを削って「フラグシップ」を作っているが、ユーザーのニーズが多様化している中、「フラグシップスマホ」の定義が改めて見直され始めているようだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。