石野純也の「スマホとお金」
手が届くハイエンド「arrows Alpha2」発売、10万円以下を死守したFCNT執念のコストカット
2026年8月27日 00:00
FCNTから“手が届くハイエンド”と銘打った「arrows Alpha2」が登場します。スペック的にはいわゆるミッドハイに近いモデルで、同社のラインアップではという但し書きはつくものの、これまでハイエンドモデルを使っていた人が不満を感じないスペックに仕上げられており、耐久性や防水性能も強化されています。
チップセットなど、スペック的には据え置きになっている部分もありますが、この性能で10万円を切るのはコスパが高いと言えそうです。メモリが高騰するなか、各社が軒並み値上げに踏み切っている一方、FCNTは大きな値上げはしませんでした。販路によって異なるものの、差は1万円程度にとどまっています。こうした機能や価格には、同社の戦略が反映されていると言えそうです。
コストダウンで10万円以下を維持したarrows Alpha2
arrows Alpha2の市場想定価格は9万4900円から。価格はあくまで目安のため、販路によって異なりますが、AmazonやIIJmioではこの金額で、ビックカメラやジョーシンなどの家電量販店では、10万4390円に10%のポイント還元がついて販売されています。逆に、楽天モバイルは8万5900円と、ほかよりも安い金額を設定。楽天モバイル端末を単体購入できる楽天市場店でも、同額になります。
FCNTは、同モデルの発表会で初代arrows Alphaを購入したユーザーを調査した結果を挙げています。同社で統合マーケティング戦略本部本部長を務める外谷一磨氏によると、arrows Alphaの前に利用していたスマホの購入価格が7万円以上だった人と、7万円未満だった人がほぼ半々、7万円以上のうち、約3割が10万円を超えるハイエンドモデルを使っていたといいます。
こうした結果になったのは、「10万円以下という価格帯でハイエンド体験を提供できているから」(同)だと分析。arrows Alpha2も、ここを超えない価格設定を目指したといいます。8万円台で販売されていた販路が多かった初代よりもやや価格は上がってしまったものの、最小構成のモデルは10万円以下をキープ。IIJmioや楽天モバイルなどの割引を活用すれば、さらに安く入手できます。
ただ、メモリが高騰しているなか、単純にスペックアップをすると価格も大きく上がってしまいます。そこで、FCNTは徹底的なコストカットを断行します。外谷氏が「削るのはお客様の価値ではなく、自分たちのコスト」というように、機能性をなるべく落とさず、10万円以下を目指したといいます。
コストカットは多岐にわたり、「部材調達から設計、生産、製造の歩留まりまで、あらゆるコストダウンを行い、10%以上の原価削減を実現した」といいます。チップセットやカメラなどの機能的な部分はarrows Alphaから据え置きですが、性能を落とさず約1万円アップにとどめるだけでも、相当な努力が必要だったことがうかがえます。それほどメモリなどの部材が高騰しているというわけです。
苦渋の選択だったメモリの削減、仮想メモリなどの代替策も
それでも、10万円を下回る価格設定をするには、メモリやストレージをダウングレードせざるをえませんでした。先に挙げた初代arrows Alphaは、8万円台の最低スペックでもメモリが12GB、ストレージが512GB搭載されており、この価格帯では珍しいスペックでした。
一方、arrows Alpha2で10万円を下回っているのは、メモリ8GB、ストレージ256GBのバージョン。外谷氏は、「大きな葛藤があった」といい、苦渋の選択だったことがうかがえます。10%超のコストカットをしているにもかかわらず、メモリを下げても1万円ほど値段が上がってしまっていると言えるでしょう。
arrows Alpha2にはメモリやストレージを前モデルと同じ12GB/512GBにそろえたバリエーションも用意されていますが、こちらの想定価格は11万8800円。10%コストカットしたうえでもなお、メモリとストレージだけで3万円以上値段が上がっている格好です。こうした数字を積み上げていくと、12GB/512GBのメモリとストレージだけで、調達価格が4万円以上上がってしまったことが推測できます。
メモリが12GBから8GBに減ってしまったことを受け、FCNTはarrows Alpha2にストレージをメモリとして使う「仮想メモリ」を実装。「将来的なご利用状況を見据えて、仮想メモリを最大16GBまで拡張可能にした」(同)といいます。
ストレージに関しては、単純に保存できるアプリや写真などのデータが減ってしまうため、仮想メモリのような新たな解決策はありません。ただ、arrows Alphaシリーズは昨今、多くのモデルで非対応になっているmicroSDカードに対応しており、前モデルから拡張が可能。arrows Alpha2にも、この機能は受け継がれています。
microSDカードは保存できるデータに制約があるものの、写真や動画をこちらに残すようにしておけば、内蔵ストレージをアプリなどのためだけに利用可能。データを分散できるため、256GBでも十分と感じる人が多いかもしれません。もっとも、そのmicroSDカードも価格が上がっているため、安くはないのですが……。
メーカーごとに分かれる対応、重要になるスペックの吟味
メモリやストレージの価格高騰を受け、各メーカーとも、昨年までの価格を維持するのが難しくなっています。素直にそれを価格に反映するメーカーもあれば、端末により付加価値をつけ、より上位モデルとして売るメーカーもあります。その反面、FCNTが選択したのは、メモリやストレージを抑えて価格をある程度まで維持する道でした。
それだけ価格に敏感な層が購入しているということでしょう。特にミッドレンジモデルの場合、すべてのコストの中に占めるメモリやストレージの価格が大きくなりすぎてしまい、カテゴリーとして成立させるのが難しくなっています。スマホの性能は年々上がっていくのが半ば常識でしたが、スペックダウンしてしまう可能性も出てきたと言えます。
FCNTと同様の手を打っているのが、同じレノボグループのモトローラです。同社が7月に発表した廉価モデルの「moto g37/g37j」は、昨年登場した「moto g66j 5G」からチップセットや防水・防じんの等級が落ちているほか、メモリも一部バリエーションでは4GBになっています。一方で、価格は維持。キャリアモデルは2万円台の本体価格がつけられているほどです。
真逆の戦略なのがシャープで、同社はミッドレンジ以上の比率を高めていくとしており、ミッドハイだったAQUOS Rシリーズは、「AQUOS R11」でチップセットのクラスを上げ、ハイエンドモデルが搭載する「Snapdragon 8s Gen 4」を採用したほか、カメラも3眼になり、望遠カメラを搭載しています。メモリやストレージだけでなく、トータルで機能を上げ、価格アップに見合うような機種に仕上げてきたと言えるでしょう。
ほかにも、サムスン電子はGalaxy S26シリーズやGalaxy Zシリーズを値上げしているほか、シャオミも9月1日から、「Xiaomi 17T Pro」を、2万円ほど値上げします。Xiaomi 17T Proは、発売時点でも先代の「Xiaomi 15T Pro」から1万円値上げされており、発売時と発売後の2段階値上げで3万円上がった形になります。
グーグルはやや複雑で、「Pixel 11」の256GB版や「Pixel 11 Pro」を値下げした一方、Pixel 11 Proの256GB版はメモリを16GBから12GBに減らすといった措置を取っています。Pixel 11 Proについては、価格維持のためにメモリ容量を下げたと見ることもでき、その点ではFCNTと同じと言えます。単純に価格を上げるのがいいのか、スペックを落としてでも価格を維持すべきなのかはまだ正解が見えていません。
ただ、値上げはあっても、1年前よりスペックが落ちているのは過去になかったことで、異例とも言えます。メモリ高騰の影響が、それだけ大きいということでしょう。今は過渡期でメーカーごとに対応が分かれているため、ユーザーは価格だけでなく、今まで以上にスペックを吟味したほうがいいと言えそうです。










