石川温の「スマホ業界 Watch」
稼ぎ頭は「住宅ローン」――「ドコモの銀行」ドコモショップ展開で浮上する課題とは
2026年8月25日 00:00
「ドコモの銀行」が本格始動し始めた。8月21日、ドコモショップにおいてドコモの銀行の案内や口座開設のサポートを行うようになった。
ドコモショップは全国に2000店舗以上あるが、ドコモの銀行の案内や口座開設サポートを行う店舗は今のところドコモCSや販売代理店であるMXモバイリングが手掛ける196店舗となっている。将来的には1000店舗規模を目指す計画だ。
もともと、住信SBIネット銀行であった「ドコモの銀行」ことドコモSMTBネット銀行。ネットでの操作性やサービスに優れた、かつての住信SBIネット銀行が今さら、リアル店舗であるドコモショップに進出してくる意味はあるのだろうか。ドコモショップでは10年ほど前、保険を扱う店舗があったが、結局うまくいかず撤退したという苦い過去がある。
ドコモSMTBネット銀行の円山法昭社長によれば、まさにリアル店舗の拡充は「長年の悲願」だったようだ。
「現在の金融業界はメガバンクや地方銀行もデジタル化を進めている。かつて『クリック&モルタル』という言葉があったが、スマホが普及したことで『タップ&モルタル』になりつつある。これからドコモショップというリアルな顧客接点を組み合わせることで、ようやくメガバンクと互角に戦える体制が整った」(円山社長)というのだ。
ドコモSMTBネット銀行がドコモショップで扱われることにより、口座開設の機会が一気に増えることが予想される。
ドコモショップでは当然のことながら、携帯電話料金の支払いにdカードを勧められる。dカードの請求を引き落とすには銀行口座が必要だ。ここで、ポイント還元が増えるといったメリットをショップ店員から提示されたら、ついつい銀行口座を作りたくなってくる。
円山社長は「銀行口座を開設する際、多くの人は自ら意識的に特定の銀行を選んでいるわけではない。親が自分のために作ってくれた、就職先やアルバイト先から指定された、誰かから勧められたといった具合だ。そうしたお客さまに対して、ドコモショップのようなリアル店舗で、信頼関係のあるスタッフから直接、口座開設のきっかけを与えられるのは大きい」という。
円山社長によれば、日本の個人金融資産は約1200兆円になるのだが、ネット銀行全体の資産をすべて合わせても50兆円を超えないという。また、日本には6億を超える銀行口座があるとされているが、ドコモSMTBネット銀行のシェアは1%を超える程度だ。今回、ドコモショップというリアルの顧客接点を手に入れたことで、メガバンクと互角に戦う舞台に立てたというわけだ。
実はかつての住信SBIネット銀行はネット専業銀行というイメージが強いが、住宅ローンに関しては対面で相談や手続きができる店舗を展開している。住信SBIネット銀行は住宅ローンの新規実行額で国内ナンバーワンを達成しているのだが「実は住宅ローンの95%はリアル店舗経由であり、ネット経由はわずか5%にすぎない」(円山社長)という。
数千万円の住宅ローンを組むとなれば、当然、誰かに相談しながら進めていきたいだろう。ネットを見ながら、聞いたことのない言葉を理解し、膨大な資料をスキャンし、データとして送信するのは結構、骨の折れる作業だ。
筆者も家を建てる際、ネット銀行で住宅ローンを組もうとしたが、専門用語ばかりの資料を何度も提出しろというプレッシャーに負けてしまい、結局、住宅メーカーに相談し、メガバンクを紹介してもらった。
住信SBIネット銀行の住宅ローンは95%がリアル店舗経由という話の中で、さらに興味深かったのは、その店舗を展開しているのが、ドコモショップを運営しているMXモバイリングという販売代理店だという点だ。
今回、全国に2000店舗以上あるドコモショップの中で、まず銀行の相談や口座開設サポートに名乗りをあげたのがMXモバイリングだったというのは、まさに銀行業のことがすでにわかっているという点が大きそうだ。
銀行口座開設は対応店舗ではスタッフがサポートしつつ、利用者が自分でスマホを操作して手続きを進めていく。対応店舗ではない場合、テレビ電話などを使って、遠隔でサポートしていく。
口座開設に関してはハードルが低そうだが、住宅ローンはそうはいかない。円山社長は「住宅ローンは専門の知識や経験を持つ人材が必要であるため、ごく一部の店舗に限定される。しかし、今後は専門人材の育成を進め、体制が整った店舗を広げていきたい」という。
銀行にとって稼ぎ頭である住宅ローンを、ドコモショップでどれくらい展開できるか。まさに人材育成が今後の課題となってきそうだ。



