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AI時代のネットワークは「上り」と「共創」が鍵、「エリクソン・フォーラム 2026」で示された未来の通信基盤
2026年9月28日 19:06
エリクソン・ジャパンは、同社の最新技術や通信の未来を紹介するイベント「エリクソン・フォーラム 2026」を28日まで開催している。
開会に先立ち28日に行われた記者向け説明会では、2026年で創立150周年を迎える同社が、AI時代を迎えた現代におけるモバイルネットワークをどのように構築していくか、今後モバイルネットワークの進化でどのような社会が築けるかなどが語られた。
アップリンクの急増で基盤を再構築
エリクソン・ジャパン代表取締役社長のジャワッド・マンスール氏より「AI時代を支えるネットワーク基盤の構築」をテーマに、ネットワーク基盤の現在と将来が語られた。日本では、2017年に仙台オフィスを開設、2026年4月には横浜にR&Dセンター(研究拠点)を設置し、日本でのネットワーク基盤構築に関わる研究を本格化させている。
「ネットワークの進化」という点では、AI時代の今、転換の時を迎えているとマンスール氏は指摘する。1G→2Gでは人が人と対話するために進化し、3G→4Gでは人がアプリにアクセスするために進化を遂げてきた。4G→5G、それ以降のBeyond 5Gや6Gでは、AIがさまざまなリソースにアクセスするための進化が求められている。それゆえ、これまでの進化の過程では見られなかった「アップリンク(上り)の急増」が見込まれている。
実際に、世界の通信事業者では、「ダウンリンク(下り)の上昇率」より「アップリンクの上昇率」が高くなっている事業者が増加してきており、今後の通信の進化ではアップリンクへの重要度が高まると指摘する。同社では、5年後の通信量を「ダウンリンクで2倍」に対し「アップリンクで3倍」と予測する。
加えて、産業用ロボットなどで求められる超低遅延性、どこでもAIアプリに接続できるカバレッジ性がより一層求められるようになるとし、これらの要件を同時に満たすネットワーク基盤の構築が必要になってくると話した。
同社では、これらの求められる要件を満たすネットワーク基盤構築に向けて、ネットワークの各拠点に対して最適なハードウェアとソフトウェアを配置し、基盤を最適化することを目指す。たとえば、それぞれの装置に応じて独自に半導体を設計することで、汎用のチップを使うよりも小型化できるようになる。
AI RANと日本での取り組み
ネットワークの各拠点にAIを設置する取り組み「AI RAN」は、ソフトバンクが商用ネットワークへの導入を目指すなど、各所での活用が始まっている。
ソフトバンクの例では、AIによる最適化実証(8月)でスペクトル効率が約25%上昇し、一部でダウンリンク性能が約50%向上した。また、鈴鹿サーキットでのイベントで5G SAとネットワークスライシングを活用したユースケースの実証も実施し、エリクソン・ジャパン代表取締役社長の安東宏昭氏は「社会インフラの応用につながる大きな成果だ」とアピールする。
ほかにも、NTTドコモとは最新シリコンを活用し高性能かつ省電力なコンピュート基盤で、KDDIとはAIアプリケーションで将来のアップリンクの通信量を予測し自動で基地局設定を最適化する取り組みでそれぞれ協業している。
安東氏は、エリクソンのAIやクラウド、モバイル関連のビジョンと、日本政府が掲げる17分野の成長戦略と密接に関係していると指摘。ネットワークやAIが公共安全や鉄道、防衛など、社会や産業を支えるインフラの基盤につながるとし、今後これらが通信の新しいユースケースとなり、通信事業者の新しい収入源になるとした。
人材育成と国内産業への期待
ネットワーク基盤の研究開発には、人材の確保と育成、エコシステムの強化は欠かせない。エリクソンでは、毎年30名近くの新卒採用を進めるほか、エリクソンの本社があるスウェーデンと日本間でのインターンシップを実施するなど、人材育成に力を入れている。
また、R&Dセンターでは、約300人の人材採用を予定しており、電気通信大学や横浜国立大学、大阪大学などと6Gに向けての共同研究も実施している。
エリクソン北東アジアヴァイスプレジデント兼エコシステム開発総責任者のヨアキム・ソレリウス氏は、5Gや6Gでは「一般ユーザーだけでなく、警察や消防、防衛といったクリティカルな通信にも利用が拡大している」と指摘し、性能やセキュリティ、信頼性に厳しい要件が求められていると話す。これら高性能な通信基盤を研究開発するには、膨大な投資が継続的に必要だとし、企業や国を超えたパートナーシップが不可欠だとアピールした。
日本の産業界に対してソレリウス氏は、技術開発の基盤となる半導体や電子部品の開発力を評価し、次世代無線機器に搭載する半導体部品を製造できるようになれば、「日本が次世代通信技術をけん引できるチャンスになる」と期待感を示した。
同社は、日本において他社との協力関係の構築を進めている。たとえば、同社は村田製作所と住友電気工業(住友電工)と、次世代モバイルネットワーク技術の推進に向けた協力協定を個別に締結している。横浜のR&Dセンターを拠点に、幅広い産業分野における通信を活用した技術開発を加速させて、次世代通信基盤の研究開発と、適用できる範囲の拡大を模索していくという。ソレリウス氏は、信頼できるパートナーシップを業界全体で締結していく必要があると話し、通信業界だけではないより規模が大きい開発体制が重要だと語った。
人とAIの関係
エリクソンでは、日本のさまざまな産業界とともに、AI社会で2035年に実現する日本の未来を議論する「エリクソン未来対話プロジェクト」を進めている。
記者向け説明会の後半には、「AI時代を動かす、コネクティビティ」と題し、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻准教授の馬場雪乃氏とエリクソン・ジャパンチーフ・テクノロジー・オフィサーの鹿島毅氏によるパネルディスカッションが実施された。
馬場氏は、「人の会話を支援するAI」を開発している。これは、声が大きい意見や多数派の意見にとらわれるのではなく、少数派の意見の中にある重要な部分をピックアップし、議論の中に提示することで、AIが人の熟議や深く考えることを助けることにつなげている。
研究開発の中で馬場氏は、人とAIが安全な関係を構築するためには、「AIの言うことを簡単に信じず、AIの仕組みを理解する『AIリテラシー』を身につけることが重要だ」と指摘。
AIをネットワーク基盤で活用する鹿島氏も「ネットワーク運用においても人とAIの協業が重要だ」とする一方「障害時の復旧をAIが担うシーンでも、どのような方法で復旧させたのかを明らかにすることが不可欠だ」と語る。
馬場氏は「AIの振る舞いの中で人が介入できる仕組みづくりが必要だ」と指摘。先述のネットワーク基盤でのAI活用については「技術の進歩により、人間がより判断しやすいような“納得しやすい説明”を提示できるようになるのでは」と期待感を示した。
同社の最新技術が一同に集結
会場内では、同社やパートナーとの協業により開発された最新技術やソリューションが展示されている。
たとえば、ネットワーク帯域の最適化という面では、巡回ロボットの帯域最適化や帯域を予約して確保するネットワークAPIの取り組みが展示されている。
巡回ロボットの帯域最適化では、平時は解像度が低い映像を中継するが、火災発生時など有事の際は帯域を優先的に割り当てて、鮮明な映像を中継する。
ネットワークAPIの取り組みでは、ユーザーが任意の時間と場所で優先されたネットワークを利用できるもの。展示ではソニーと協業したネットワークAPIが紹介されており、ユーザーが予約した時間と場所で専用のネットワークスライシングを利用できるAPIが紹介されている。一眼レフカメラで撮影された大容量のRAWファイルを短い時間で転送できるようになり、速報性が求められるメディアなどへの活用が期待される。
コンシューマー向けのサービスでは、通話における本人性のAI確認サービスが紹介されている。通話相手の声紋データを登録しておくことで、通話時に相手が登録されたユーザー本人かどうかを声で判定するもので、詐欺対策などに活用できる。
このほか、最新の基地局設備が紹介されている。従来よりも広い帯域幅に対応することで、複数キャリアと設備を共有するインフラシェアリングがしやすくなるものや、より多くのアンテナを備えたMassive MIMO対応設備などが展示されていた。このほか、高い周波数帯で建物の内側に電波が浸透しづらい5G通信向け屋内設備なども展開しており、カバレッジ確保に向けての設備も紹介されていた。
6Gにおけるユースケースの1つに挙げられている「電波によるセンシング」技術も紹介されている。電波の反射などを利用して、飛行機やドローン、自動車などを検知する技術で、カメラなどの光学センサーとあわせて活用することで、従来よりも正確なセンシングが実現できる。










































