石川温の「スマホ業界 Watch」
ターゲットは「楽天」と「ahamo」。通信品質と値上げの隙を突く、UQ・ワイモバイル新割引の狙い
2026年7月17日 00:00
KDDIとソフトバンクのサブブランドによる「楽天モバイル」「ahamo」包囲網が広がりつつある。安定したネットワーク品質を武器に、料金プランのてこ入れに着手し始めた。
KDDIは6月25日、UQモバイル(UQ mobile)の料金プランである「コミコミプランバリュー」をリニューアル。新たに加入すると660円が割引になる「UQコミコミおトク割」を開始した。
UQモバイルでは昨年、メインブランドのauとともに料金プランを刷新。コミコミプランバリューを始めたが、これが割安感がまったくなく、競争力に欠けた内容であった。実際、販売代理店などですこぶる評判が悪く、現場から改善を求める声が上がっていた。
1年が経過し、KDDIでは「コミコミプランバリュー」に対して、新規加入で月額660円を割り引きつつ、最大13カ月という制限をつけた。14カ月以降も同額の割引を受けたければ、au PAYゴールドカードを所有することという条件をつけたのだ。これにより、割安感を訴求しつつ、au経済圏による囲い込みを強化するという仕組みを構築した。
今回のUQコミコミおトク割は、月額660円を割り引くことで、かなり競争力のある料金プランに生まれ変わった。660円を割り引くと月額3168円(税込)となり、楽天モバイルの最強プランのギガ無制限である3278円よりも110円安い。楽天モバイルはギガ無制限だが、UQモバイルは35GBまでの容量だ。
楽天モバイルは国内通話が何回、何分かけても無料であるのに対して、UQモバイルは1回10分までが無料だ。ただ、UQモバイルの強みになるのが「auと同等のネットワーク品質」だ。
6月に入ってからというもの、楽天モバイルに対するauローミングのエリアが大幅に縮小されている。実際、SNSでは楽天モバイルユーザーの悲鳴が上がっており、auショップなどではローミング打ち切りをアナウンスして、顧客獲得につなげようとする動きも出ている。
ahamoとUQを同時に狙うワイモバイル「超!おトク割」
UQモバイルの動きに追随してきたのがソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルだ。
7月17日スタートの「超!おトク割」は「シンプル3 M/L」に加入したユーザーを対象に加入翌月から1年間、毎月1100円割り引くというものだ。
シンプル3 Mはデータ容量30GBで、基本料金は4378円だったが、「超!おトク割」とPayPayカード割(770円引き)によって、2508円になる。
シンプル3 Lはデータ容量35GBで基本料金は5478円だが、「超!おトク割」とPayPayカード割で3280円となる。ワイモバイルの場合、14カ月目以降、「超!おトク割」は消滅するがPayPayカード割は継続となる。
ワイモバイルの改定を見るとUQモバイル、楽天モバイル、ahamoという3方向を一挙に狙い撃ちにしてきた感が強い。
シンプル3 Mはもともとデータ容量30GBということでahamoを意識してきたなかで、今回の改定によって2508円とahamoの2970円を下回ってきた。シンプル3 Mにかけ放題は含まれていないが「音声通話はほとんどしない」という人は特に不満を感じないだろう。
一方、シンプル3 Lはデータ容量35GBということでUQモバイルを意識しており、通話定額も1回10分まで無料だ。ただ、割引後は3280円とUQモバイルと比較するとやや見劣りを感じる。
ここ最近、ワイモバイルの料金プランは「おうち割光セット」を組み合わせることで、ようやく総額が安く見えるという立て付けであった。家族でまるごとワイモバイルに加入すれば、安価にすることは可能であったが、一方で、シングルの人からすれば、あまり安くならず、加入する意欲がそがれる状況にあった。
今回、ワイモバイルはおうち割光セットではなく「超!おトク割」を設定することで、シングルでも魅力的に見える料金プランに改定してきたというわけだ。
ドコモはサブブランドの攻勢で「値上げ」を封じられた?
UQモバイル、ワイモバイルが相次いで料金プランに手を入れてきたことで、ahamoは身動きができなくなってきたのではないか。
そもそも、NTTドコモではKDDIやソフトバンクと同様に料金プランを上げる方向で検討していたとされている。昨今、燃料費や人件費の高騰が続いており、通信業界もその影響を大きく受けている。そうした理由でKDDIとソフトバンクがメインブランドで値上げを行い、業績の改善につなげている。
燃料費や人件費の高騰はNTTドコモも抱えている課題であり、今年6月の決算会見で前田義晃社長は料金改定の可能性を示唆していた。
ahamoでは2970円の改定を検討していたようだが、UQモバイルとワイモバイルが競争力のある改定をしてきたことで、ahamoの値上げが難しくなってきた感がある。
表向き、オンライン専用料金プランであるahamoのユーザーは、オンラインでの契約に慣れているユーザーが多いとされる(一部は店頭でも契約している)。サービス開始当初は若年層を取り入れていただけに、ネットの操作には慣れており、他社にMNPするハードルも低いだろう。
NTTドコモは現在、ショッピングセンターなどでの出店での顧客獲得に注力している。ユーザーがネット経由で出て行く中、リアル店舗で他社から顧客を奪うという消耗戦を続けているのだ。
一方で、KDDIやソフトバンクはNTTドコモとの販促費勝負に勝ち目はないと距離を置きつつある。
まもなく9月という商戦期を迎えるが、サブブランドを中心とした顧客獲得合戦が盛り上がりを見せそうだ。





