石川温の「スマホ業界 Watch」
次期iPhoneへの布石か、いま「5Gミリ波」界隈が急に騒がしい理由
2026年6月2日 00:00
先日、東京ビッグサイトで開催された「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク」に行ってきた。ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パークはもう何年も取材していなかったのだが、今年はなんだか「ミリ波が騒がしい」ということで足を運んだのだった。
ソフトバンクとKDDI、村田製作所とWOWOWエンタテインメントは、ミリ波を使った4K映像中継のプレゼン、デモを行っていた。KDDIが京セラと開発したミリ波中継器においては、NTTドコモのミリ波にも対応。1台で複数のキャリアのミリ波を中継できると話題となっていた。
また、5月20日にはKDDIがJR東日本と、山手線の車内に屋外のミリ波を引き込み、増幅して再放射する実証に成功したとリリースしていた。
駅のホームなどミリ波が飛んでいるところから、車両の窓に設置したミリ波対応ガラスアンテナが電波を受信。車内にあるアンプによって、電波を増幅した上で車内へ伝送・再放射するという。これにより、車両内で1Gbpsを達成可能な通信エリアが、車両全体の約40%から約97%へ改善されるとのことだ。
5G開始から6年、なかなか広がらない「ミリ波」
いまから遡ること7年前。日本では2020年に5Gがスタートしているが、筆者は2020年が待てずに、2019年7月に「ミリ波」を体験したくて、アメリカ・シカゴに飛んだ。アメリカのキャリアであるベライゾンの広報に連絡をとり、シカゴの街中でミリ波を体験させてもらう取材をしたのだった。
アメリカではベライゾンがミリ波にやる気を見せており、街中にミリ波の基地局を置き、エリア化していた。確かにミリ波を掴めば1Gbpsを超えるのだが、なかなかミリ波を捉えるのが難しい。その段階で「ミリ波はなかなか厳しいなぁ」と実感していたのだった。
そして、2020年に日本で5Gがスタート。あれから6年が経過するが、ミリ波を街中で掴んだことはほとんどない。5Gサービス開始時は、各キャリアが公開しているエリアマップとにらめっこして、空港やキャリアショップの店舗など、わざわざ購入したミリ波スマホを持って出かけて、速度測定して悦に入っていたものだ。
とはいえ、その後、コロナ禍もあって、キャリアがミリ波基地局を面展開している様子は一切感じることができず、ハイエンドスマホでミリ波対応していたメーカーも、ハイエンドをやらなくなってミリ波スマホが減っていくなど「ミリ波ってどうなるの」という雰囲気が漂っている。
ミリ波の命運を握るiPhoneとコストの壁
結局のところ、日本のミリ波の命運を握っているのはアップル・iPhone次第というところだろう。日本のユーザーの半分近くが持つiPhoneがミリ波に対応してくれば、4キャリアはミリ波の基地局をさらに強化せざるを得なくなってくる。
それこそ、2012年にiPhoneがLTEに対応。その翌年、ソフトバンク、KDDIに続いてNTTドコモがiPhoneを取り扱い始めた時は「どこのLTEネットワークが速いか」と、さまざまなメディアがこぞって、いろんなところで速度測定をして記事にしていたものだ。
当時も、NTTドコモの成績が悪く、理由を取材したら「3Gでまだまだ戦えるネットワーク品質を誇っている」と言われたのだった。
それはさておき。ここ最近、キャリアがミリ波に注力している状況を見ると「ひょっとして、次のiPhoneでミリ波対応があり得るのかも」という気がしなくもない。
KDDIの松田浩路社長はかつて「端末メーカーとの交渉にも陣頭指揮を執っていきたい」と語っていたことがある。数年前、9月に行われたアップルのスペシャルイベントで、KDDIの高橋誠前社長を見かけると、必ず、横には松田氏の姿があった。松田社長はアップルやグーグルとの交渉担当だったこともあり、日本向けのiPhoneにミリ波を対応させるよう打診している可能性が極めて高い。
別キャリアの幹部は「アメリカのベライゾンがミリ波対応iPhoneを調達できているのは、アップルに対して調達費用を上乗せしているから」と語っていたことがある。
つまり、ミリ波を掴むにはミリ波に対応したモデムが必要なわけで、その差額はキャリアが負担しているというわけだ。
昨今は円安基調が続き、メモリの高騰もばかにならない。ただでさえ、スマートフォンの調達費用が上がっているなか、日本のキャリアはミリ波のために、アップルからの調達費用の上乗せ条件を呑んだりするのだろうか。





