石川温の「スマホ業界 Watch」

GoogleのAIを積んだiPhoneの「新しいSiri」が凄い、WWDCとベータ版で試して分かった“かなりの実用度”

 米アップルが6月8日(現地時間)から開発者向けイベント「WWDC26」を同社本社で開催している。

 いまから2年前の2024年6月に行われた同イベントにおいて「Apple Intelligence」を発表。当時、アップルは「iPhoneの中の情報を読み取り、ユーザーが次にやりたいことを提案していく」と豪語していたが、技術的な壁にぶつかったようで、その後、実現することはなかった。

 いつしか世間は「アップルはAIで他社に大きく出遅れている」という審判を下した。

 アップルとしては自力で他社に勝てるAIを作るには時間的、人材的にも限界がある。

 そこで、アップルはライバルであるグーグルとタッグを組む道を選んだ。

 今回、アップルはグーグルと共同開発を行い、AIのモデルにグーグル「Gemini」を採用。クラウドにはNVIDIAのチップを用いた。これまでの自前主義から軌道修正を図ってきたのだ。

 世間的には「アップルがGeminiを採用した」と思われているが、あくまで「Geminiベースのモデル」であり、Geminiとは似て非なるものだ。

 WWDC滞在中、発表となった「Siri AI」が動いている様子を取材することができた。

 2011年に登場して以降、音声パーソナルエージェントとして期待値は高かったが、大したことができなかったSiri。Geminiの力を借りて、かなり実用度がアップした感がある。

 たとえば、Siriに対して「妹がオススメしていたポッドキャストの番組、なんだっけ?」と聞くと、数日前に妹からもらったメッセージを探し出し、どのポッドキャスト番組かをすぐに表示してくれる。もちろん、ここで「再生して」とお願いすれば、すぐに番組を聴くことができる。

 ここで注目は「妹」という家族関係をSiriが理解しているということだ。
iPhoneの内部にある個人のメッセージやメール、写真、メモなどの情報を横断して、探し出してくれるのだ。

「妹がオススメしていたポッドキャスト番組は?」といった質問にもキチンと答えるようになった

 また、友人からもらったキャンプのお誘いメールを見ていて、道具をまとめて購入しようと思った時、Siriに「購入リストを作成して」とお願いすれば、必要なものをTo Doリストにまとめてくれる。さらに「出かける時に知らせて」と付け加えておけば、家を出たタイミングで購入すべきTo Doリストが表示されるようになる。

 Siri AIはオンデバイスAIで処理しつつ、クラウドでもAIが処理を行っている。

クラウドとオンデバイス両方でアップルとグーグルによるモデルが稼働している

 Siri AIに対して、質問を投げかけると「Apple World Knowledge」から情報が引き出されるようになっている。

 「次に見える流星群はいつ?」といった情報もApple World Knowledgeを経由して、ネットにある情報が検索される。万が一、情報が怪しいと感じたときは引用元を開くことができる。

 Siri AIはiPhoneだけでなく、iPadやMac、Apple Vision Proなどにも搭載される。

 MacではSpotlightの検索窓を呼び出す。検索窓に自然言語で質問を打ち込むと、Siri AIで調べるべきものは「Siriに依頼」という文字が出てきて、調べられるようになる。

 乱雑に書き殴ったメモに対してSiri AIに「綺麗にまとめてメールに書いて」とお願いすれば、要約して、清書してメールの文書にしてくれる。実際に目の前でデモを見たが、メールが起動し、すぐに文書が入力されるなど、かなり高速に処理していて驚いてしまった。

 Webサイトやメールなどに試合日程が書かれていた場合、ビジュアルインテリジェンスを呼び出すと、画面に表示されている表のタイトルや日程、時間などをSiriが判断し、一発でカレンダーに登録できる。

一覧表を一気にカレンダーに登録できるビジュアルインテリジェンス

 画面に表示されているものがなんなのか、Siriが把握できるからこそ、次のアクションにつなげられるのだ。

 アップルでは今回、「Siri」のアプリをiPhoneやiPad、Mac向けに提供する。さまざまなデバイスを持っているユーザーはSiri AIに頼んだことを、iPhoneだけでなく、他のデバイスで引き継いで使うといったこともできるのだ。このあたりの横展開はアップルならではの強みだろう。

Siriアプリが提供され、iPhone、iPad、Macなどで検索結果を共有できる

 今回、アップルの人たちが見せてくれたデモでは時々、うまく反応しないなど、まだまだ開発中な感じが伝わってきた。

 サービス提供は年内となっており、しかも今のところは英語版のみとなっている。ものは試しと、自分のiPhone 17 Pro Maxにデベロッパーベータ版を入れてみた。

 まずiPhoneはすべてのデータのインデックス作成を行うため、若干時間がかかる。

 最初、英語の設定にしたのだが、Siri AIに「日本語も使える?」と聞いてみたところ、「大丈夫」という反応だったので、いくつか日本語で聞いてみた。

 「明日のフライト、何時だっけ?」と尋ねたところ、見事に大量のメールの中から航空券の予約情報を見つけ出し、フライト時間や航空会社を教えてくれた。

 いままではメールアプリを起動し、航空会社の名前を入力し、検索をかけ、該当するメールを開いていた。それがSiriに聞くだけで、すぐに目的の情報を引き出せるだけで、相当、iPhoneの利便性が向上したといえるだろう。

 もちろん、開発中のため、安定している動いているわけではない。英語版は年内だが、日本版の提供時期について、具体的なアナウンスは一切ない。

日本語対応も提供予定だが、時期などは未定だ

 日本語でSiriを正式に使えるようになるには、英語版提供と同時ではなさそうだが、意外とそんなに遅れることはないのかもしれない。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。