石川温の「スマホ業界 Watch」
スマホ割引規制の緩和に”待った”、浮上した「短期解約者問題」とは
2026年1月20日 00:00
総務省において「情報通信行政・郵政行政審議会 電気通信事業部会 市場検証委員会 利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」という有識者会議が開かれている。
1回目の会議において、電気通信事業法第27条の3の規制について「目的に見合った必要最小限なものに見直すべきではないか」と言及があった。
その前から「行き過ぎた端末割引規制が議論の対象になるのではないか」という空気感も出ていたこともあり「総務省が軌道修正を図るのではないか」と期待されていた。
現状、「端末の購入等を条件とする利益供与は原則上限4万円」、「新規契約を条件とする利益供与は上限2万円」という規定がある。
しかし、昨今、原材料の高騰や円安基調もあって、スマートフォンの価格が高騰している。ハイエンドモデルでは30万円を超えるのも珍しくなく、売れ筋の中心は8万円を超えないミドルモデル以下になっている。
「端末割引規制が見直され、スマホを買い換えやすくなる」と期待されたが、一筋縄ではいかないようだ。1月14日に開催された2回目の会議ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの関係者が出席。4キャリアとも「端末割引規制は現状維持が望ましい」というスタンスを貫いたのだった。
確かにそれも無理はない。キャリアにとってみれば、端末の割引なんてしたくないというのが本音だ。これまでは「他社が割り引くなら対抗割引せざるを得ない」というのを繰り返してきており、経営的に体力を疲弊してきた。
2019年の電気通信事業法改正から6年が経過し、「不毛な端末割引競争」から解放されたのはキャリアにとってみれば本当に大きな成果だ。
総務省が見直したいからといって、安易に乗ってしまえば、また端末割引競争の時代に逆行してしまう。そこで、4キャリアとしては別の課題を議題に持ってくることで、端末割引規制緩和から目をそらそうという雰囲気を醸し出した。
その問題点として浮上したのが「短期解約者(ホッパー)」だ。SIM単体で新規契約することで2万円分のポイントなどを獲得。その後はすぐに別のキャリアに乗り換えて、また2万円分をゲットしていくような人が増えているというのだ。
総務省としては本来、乗り換えを促進することで、競争環境を作り、料金値下げにつなげるという狙いがあった。しかし、短期解約を繰り返すユーザーが増えたことで、解約をしないユーザーとの不公平感が出てきたこともある。
そのため、キャリアとしては「短期解約者をなんとかしたい」という4社一致団結した論調を出し、端末割引緩和を回避しようとしている雰囲気がある。
短期解約者の問題に関しては、2回目でKDDIが出した資料にすでに答えがある。仮に新規契約で1万2000円のキャッシュバックを与える施策を展開する際、契約時に1万2000円分を渡すのではなく、1年後まで契約をし続けたら渡す、あるいは途中で解約した場合には1万2000円の一部を返金してもらうような仕組みを導入すれば良いだけだ。
現状、法律的に「継続利用条件は一律禁止」となっているため、こうした仕組みでのキャッシュバックは提供できない。このあたりを改めることで、短期解約者は一気に減らすことができるはずだ。
今回、議論を進める上でのポイントとしては、この「継続利用条件」を可能とし、上手く機能させるかが重要となってきそうだ。たとえば、端末割引に関しても「契約を継続してくれれば、毎月、2000円分キャッシュバックする」という仕組みを導入できるようにすれば良いのではないか。
筆者がアメリカで契約してるGoogle FiではPixel 10 Proが999ドルで売られているが、まずは300ドルの割引が適用されて699ドル、さらに500ドル分が24カ月分、毎月20.84ドルを24カ月間、返金が受けられるという仕組みで売られている。
日本では「端末購入補助プログラム」が一般化し、24カ月後に返却する前提での分割払いになっている。しかも、各キャリアで下取り価格に工夫を凝らしたり、中古買い取り業界団体の数値を参考にしたりと、制度を維持するために、細かいルールが出てきたりと複雑怪奇になっている。
もっとシンプルに、わかりやすい端末購入、割引の仕組みを導入できるよう、総務省はキャリアに忖度することなく汗をかくべきだろう。
5Gが全国区になり、キャリアによって5G SAの導入も進みつつある。KDDIであれば、5G Fast Laneやau Starlink Direct、ソフトバンクならVoNRといったように、ネットワークの進化によって、使える新技術、新機能が増えている。
しかし、端末の買い換えが進まないことには、そうしたネットワークの進化は宝の持ち腐れになってしまう。キャリアにとってみても、ARPUを上げるには、ユーザーが所有する端末の性能を上げることが近道だったりする。
今年は特にメモリの高騰によって、ほとんどのメーカー関係者が「端末の値上げは避けられない」と嘆いている。
かつての「20万円を超えるキャッシュバック」時代に戻る必要はないが、もう少し端末割引に対する規制を緩めることで、ユーザーが気軽にスマホを買えるようにすべきではないだろうか。






