【MWC Barcelona 2026】

【MWC26】エリクソンが示す5G SA収益化の構想、iPhoneによる6Gデモも

 通信機器ベンダー大手のエリクソンは、MWC26 Barcelonaのブースで、5G SAのマネタイズ事例やそれを可能にするネットワークAPIのデモ、さらに6Gの導入に向けた技術展示を行った。また、通信事業者向けに、5G SAのネットワークスライシングを活用したビジネスモデルの成功事例も披露していた。

マネタイズのユースケースや事例を多数展示したエリクソン
キャリア向けのネットワーク自動化や6Gの研究開発成果を披露するコーナーも

 ネットワークAPIとは、GSMAが標準化した仕様でネットワーク側からキャリアの持つ位置情報、通信品質保証、認証などの情報を、外部の開発者が呼び出せるようにするというもの。

 エリクソンとグローバルキャリアが参画する合弁会社Aduna(アドゥナ)が、その共通化や販売を行っている。

 Adunaには、日本のキャリアとしてKDDIが出資したほか、ドコモやソフトバンクもこの取り組みに参画している。エリクソンのブースでは、ソニー、KDDIとトヨタ、ソフトバンクといった企業がネットワークAPIを活用したユースケースを紹介しており、その一部がさながら“ジャパンパビリオン”のような状態になっていた。

 ソニーのユースケースは、ネットワークにつながったデジタル一眼カメラに、優先制御をかけた高品質なスライスを適用するというものだ。ネットワークAPIを通じて、時間や場所を予約してそれを行えるようにしているのが特徴だ。

ソニーは、一眼カメラ「α」をネットワークに接続し、撮影直後に写真を送信する仕組みを報道カメラマン向けに提供している

 例えば、スポーツの試合を撮影するカメラマンが、あらかじめスタジアムの中で優先制御を適用しておき、撮った写真を即座にアップロードするという使い方が想定されている。デモでは、通常だと4Mbps前後しか出ていなかった環境で、ネットワークAPI適用後には20Mbpsを超え、写真をスムーズにアップロードできるようになる様子を確認できた。

時間や場所を指定し、通信速度が高速になるスライスの適用をネットワークAPI経由で予約できる
スライスを適用すると、4Mbps程度だった速度が20Mbpsを超えた

 KDDIとトヨタのユースケースは、自動車に搭載したeSIMをネットワークAPIで切り替え、工場内などではローカル5Gにするというものだ。昨年は車内で行うビデオ通話を高品質に切り替えるデモを行っていたが、それに続く形になる。「GSMA SGP.32」というeSIMをネットワーク経由で自動的に書き換える仕組みを使う。

ネットワークAPIの1つに、SIM交換がある(右上)
ネットワークAPIを介してパブリック5Gとローカル5Gをリモートで切り替える

 ソフトバンクは、ロボットのユースケースを紹介。こちらは、ネットワークAPIではなく、基地局側に設置されたvRAN用のGPUリソースをAIに活用する技術で、低遅延が実現するためロボットが自動で人間に追従して荷物を運べるというもの。同社が導入を目指す「AI-RAN」のユースケースになる。

ソフトバンクはAI-RANの「AI on RAN」を解説した

 エリクソンが5Gのマネタイズをテーマに掲げ、ブース内でも大きなスペースを割いていたのは、裏を返せば、各国のキャリアがそこに課題を感じているということを意味する。ブースでは、シンガポールのSingtelや米T-Mobileの成功事例も紹介していた。

 Singtelは、コンシューマー向けサービスに5G SAを導入しており、料金プラン別にネットワークスライスを提供。もっともプレミアムなプランは、通信速度が安定して速いことに加え、よりセキュアな環境で通信を行えるよう、差別化が図れている。結果として、こうしたサービスに魅力を感じ、5G SAに加入するユーザーの割合も増加したという。

Singtelは5G SAのネットワークスライシングを使い、料金プランごとに通信品質を変える施策で成功しているという。結果として、5G加入者の割合も増加した

 また、T-Mobileでは救急などの公共安全機関やパブリックセクター向けに優先接続のスライシングを提供。さらに、家庭用では、FWA(家庭に設置する5G対応のホームルーター)にも高速なスライシングを提供している。先に挙げたソニーの事例のようなカメラマン向けのスライシングサービスも提供する予定だという。

T-Mobileも、早くから5G SAを展開し、収益化の事例を積み重ねている

 ユースケースや成功事例の紹介は現時点もしくは直近での投入が想定されるものだが、エリクソンのブースでは30年ごろの導入が見込まれる6Gのデモも行われていた。

 センチメートル波(ミリ波よりも低い7GHz帯などの周波数帯)を使ったデモでは、試験用の端末がエリクソンの開発した大型のものではなく、MediaTekなどの実際のチップセットベンダーが開発した小型のプロトタイプデバイスが使われており、標準化を控えて徐々にテストが進んでいることがうかがえた。

センチメートル波のデモ。端末にはMediaTekのものが使われている

 また、6Gの早期導入に向け、5Gと周波数共用する技術のデモも実施されていた。4Gと5Gの周波数共用では制御信号のオーバーヘッドが多く、パフォーマンスが低下することが課題だった。その反省を踏まえ、5Gと6Gではオーバーヘッドを減らし、動的に帯域の割り当てを変えられるようになっているという。

5Gと6Gの周波数共用技術。これを活用することで、双方の規格の品質を落とさず、早期にエリアの拡大が可能になるという

 これによって、導入初日からあらかじめ5G用に構築した基地局を使い、6GのSAモードを広いエリアで展開できるようになるという。エリアの拡大が遅れた5Gの反省を踏まえた技術と言えるかもしれない。このデモに端末側で協力したのが、アップルだ。

iPhoneと思われる謎の端末。左が5G、右が6Gをオンにした状態で、同じ周波数を共用する
iPhone(と思われる端末の画面)に6Gのアイコンが表示された

 アップルは、iPhone(と思われる端末)を6Gに接続させ、周波数共用をしている様子を披露。5Gと6G、それぞれの端末で動画を再生した。これは、周波数の共用によって、既存の5Gが影響を受けず、かつ6Gでも安定して通信できることを示すためのもの。6Gの導入に向け、アップルも着々と研究開発を進めていることがうかがえた。

どちらの端末でも動画が安定して表示された。共用で双方の品質を落とさないことが証明された格好だ