石川温の「スマホ業界 Watch」

「Apple Fitness+」の実力、月1780円で映像・音楽・AI・オフィスが揃う新サブスクも

 アップルは「Apple Fitness+」を日本でも提供するようになった。Apple Fitness+は28名のトレーナーが指導する映像を見ながら、ピラティス、ヨガ、ダンス、筋力トレーニング、コアトレーニングなど2種類のワークアウトを行えるというものだ。

 当然、トレーナーは英語で指導するが、日本上陸に合わせて、日本語字幕に加えて、日本語のデジタル翻訳音声にも対応したワークアウトとメディテーションを提供するという。

 また、トレーニングには音楽がかかるが、世界中の最新ヒット曲に加え、日本開始に合わせてK-PopやJ-Popが多く追加された。Apple Fitness+は月額980円もしくは年間7800円で利用可能だ。

 ここ最近のアップルを見ていると本当に「ハードとサービス、両輪で儲けるのが上手くなった」と感じる。今回のApple Fitness+もiPhone単体でも楽しめるが、Apple Watchがあれば、心拍数、消費カロリー、ムーブリングの進捗状況などをApple Watchで確認できるようになる。

 AirPods Pro 3では音楽やトレーナーの指導をダイレクトに聞けるだけでなく、Apple Watchがなくても心拍数が測れてしまう。

 iPhoneの画面が小さいと思えば、iPadやApple TVで見れば良い。「今年は健康になるぞ」とApple Fitness+に興味を示して、iPhoneからはじめ、Apple Watch、AirPods Pro 3、iPad、Apple TVと次々に周辺機器が欲しくなる仕掛けがそろっている。

 またアップルは「初心者を取り込む」という点において、日本上陸の際に提携パートナーをきちんと用意した。世界最大のフィットネスクラブブランドであるエニタイム・フィットネスの会員は、メンバーシップの一部としてFitness+を利用できるという。

 また、auやUQモバイルの加入者は最大3カ月、Fitness+をお試し的に使えるという。やはり、アップルとしては「キャリアとタッグを組む」というのは重要で、全国のキャリアショップを通じて、ショップ店員からアップルのサービスを売れるというリアルの接点を抑えるのは重要であることは間違いない。

 特にKDDIは2024年から「Apple One」も取り扱っている。Apple OneはApple Music、Apple TV、Apple Arcade、iCloud(+50GB)をセットにして、通常月額3030円なのが月額1200円で使えるというものだ。

 アメリカではApple Oneに「プレミアム」が存在し、上記のサービスに加えて、Apple Fitness+、Apple News+、iCloud(2TB)という内容になっている。今回、日本でもApple Fitness+が提供されたのだから、こちらのプランも日本に上陸してほしいものだ。

動画編集ソフト「Final Cut Pro」などが月480円~

 アップルのサービス関連でもうひとつ「上手いな」と感じたのが、1月29日開始の「Apple Creators Studio」だ。動画編集ソフト「Final Cut Pro」、音楽編集ソフト「Logic Pro」、画像編集ソフト「Pixelmator Pro」などがセットになって月額1780円で使えるというものだ。

 しかも、学生や教職員は月額480円という破格値になっている。特に驚きを持って受け止めたのが、アドビユーザーのようで、「なんて安いのか。もうアドビ税なんて払わない」という声が上がっているようだ。

 ただ、当然、これまでアドビ製品にユーザーがFinal Cut ProやPixelmator Proに飛びつくのは無理がある気もするので、すぐにユーザーが大挙してApple Creators Studioに移行するなんてことはないだろう。

 ただ、これから「動画や画像編集を本格的にしたい」、「もっとカジュアルに編集したい」というユーザーにはうってつけのサービスになる可能性は高いだろう。

 今回のApple Creators StudioにはPagesやKeynote、Numbersといったオフィス系ソフトも入っているのが注目だ。

 確かにクリエイターであっても、プレゼン資料を作るし、台本を書くなんてこともある。経費精算のために表計算ソフトが必要なのは間違いない。確かにクリエイターでも使うソフトではあるが、なぜサブスクの中に入っているのか。

 リリースをよく見て納得したが、今回からPagesやKeynote、NumbersにはAIを使った「プレミアム機能」が備わったのだ。

 PagesやKeynoteでは、資料で必要そうな画像ライブラリーが新たに提供されているだけでなく、その中に自分が欲しいと思える画像がなければ、OpenAIによって、自由に生成できる機能が備わっているのだ。

 これまでPagesやKeynote、Numbersはアップル製品を購入すると無料で使えるソフトであった。Macユーザーからすれば、これらはまさに「オマケ」感覚であるものの、「使い勝手はいいので、タダで使えてラッキー」的な存在であった。もちろん、これからもソフト自体は無料で提供され続けていく。

 しかし、もっと便利に快適に使いたいと思えば「Apple Creators Studioを契約してね」ということになるのだ。

 Apple Creators Studioを一つ契約すれば「Adobe Creative Cloud」っぽいソフトも使えるし、「Microsoft 365」っぽいソフトもAI機能が強化された状態で使える。

 今年、メモリが高騰し、iPhoneやiPad、Macの価格が上がり売れにくくなる中、アップルは着実に「サービスで稼ぐ体質」にシフトしつつあるようだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。