法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)

最新スマホ「Galaxy S25」シリーズ、「nubia Flip 2」は識者の目にどう映る?

 通信業界を中心に活躍するライター4人による「スマホ会議(仮)」。今回は日本で発売されたばかりのGalaxy S25シリーズ、nubia Flip 2について話し合っていきます。

Galaxy S25シリーズのAI機能は何がすごい?

佐藤
 Galaxy S25シリーズが発表されました。日本では、例年通りGalaxy S25とGalaxy S25 Ultraが発売されます。今年はソフトバンクでも取り扱われるのが、大きな話題ですね。

佐藤

石川氏
 サンノゼで行われた新製品発表イベントでは、今年もGalaxyはAI推し。Galaxy AIはPixelよりも先を行っているし、サムスンとグーグル、クアルコムが仲良くやっているというアピールがすごかったです。

 今回、Galaxy AIでアプリ間の連携ができるようになった。これで、スマホを触る機会が減るし、音声の活用が増える。今後出てくるであろう三つ折りスマホに加えて、XRデバイスとか、スマートグラスに繋がるという話をしている。これまで失敗してきた、スマートグラスなどを復活させようというメッセージでもあります。

石川氏

石野氏
 スマートグラスだと、ディスプレイを指で操作していくよりも、音声でコントロールできた方が、はるかに動かしやすい。その一部を先行搭載した形です。かこって検索と同じで、技術としてはグーグルだけど、サムスンとしては共同開発と言っています。

 Galaxyスマホで使うと、サムスンのアプリも、Geminiでグーグルのアプリと連動できますが、シナリオにないことを言うと、途端に何もできなくなる。対応していないアプリが絡んでしまうような指示をすると、全然違う結果が出てきたりして、エージェントと呼ぶにはまだ早い気もします。ただ、対応アプリが広がると便利になりそうだなというワクワク感があります。

石野氏

石川氏
 これが、かつての音声アシスタントの二の舞になるのか、ちゃんと対応してくれるのかは、これからという感じだけど、操作体験が変わるのには期待したい。

法林氏
 もともと、Androidの場合は、共有メニューからアプリを連動させる機能を持っていたので、それをAIで連携するのは、自然な流れ。問題は、メインで使っているアプリから、向こう側にちゃんと渡せるのかという点。

 あと、AIに指示をするシナリオを、どこまで人が思いつくか。プレゼンでは、レストランの検索をして、親にチャットで送信するといった形で紹介されていたけど、人間の思考は、レストランの検索、チャットの送信みたいに、ワンステップずつになっている。それを超えるだけのことができるのかがカギだと思う。

法林氏

石野氏
 一番使いたいのは、Gmailに届いたスケジュールを、カレンダーに登録してもらうといった使い方ですが、それはできませんでした。現状、Webから検索した内容をカレンダーに追加することはできています。

法林氏
 どれだけユーザーに使い方を認知してもらうかだよね。

石川氏
 それこそ、スマートスピーカーが出たときに、いざ目の前にすると、何を話しかければいいかわからないという問題が起きた。そこでAmazon Echoがやったのが、ユーザーに毎週メールを送るという取り組みだけど、結局あまり定着しなかった。話しかけることで、どれだけ便利になるのかを気づかせることが、大きな課題ですね。

法林氏
 Amazonのアレクサが便利なのは、「そろそろ○○を買う時期です」と提案してくれるところ。ユーザーが買っている周期を学習して、そのままカートに入れられる。すぐに決済をするわけではなくて、最終的にはサイトを見て買い物をするので、サムスンもそれくらいのことはできてほしい。

石野氏
 そうですね。生成AIになって、命令は自然言語でできるようになりましたが、Galaxyのアプリ連携を見ていると、まだ受けとる側が対応しきれていない。日常的に使うと粗が見えるというか、できないことが見えてきますよね。始まったばかりなので、これからですが。もっといっぱい対応アプリが増えて、たとえばPontaのアプリを開いて、画面分割して、d払いを立ち上げるといったところまでできてほしい。

 今後、Google HomeにもGeminiが入るらしく、「電気を消した後に、テレビをつけて、タイマーをセットして」といった指示で、すべてをまとめてやってくれる。ここまでくれば、操作感は変わると思います。

石川氏
 一方で、海外のレストランでご飯を食べたときに、英語のメニューを翻訳して、おすすめのメニューを教えてとお願いしたら、和訳して、おすすめ料理を教えてくれるし、追加でその料理に合うお酒を聞くと、しっかりと提案してくれた。今までの音声アシスタントとは違う可能性は感じますよね。ただ、日常的に使うかと言われると難しい。

関口
 おすすめまで教えてくれるのはいいですね。

石川氏
 そうですね。単に和訳をするだけでなく、提案をしてくれるのがいい。予算を伝えたら、その予算内での提案もしてくれます。

関口
 テレビやYouTubeで、外国人が日本に来て、観光をする映像をよく見ますけど、日本語のメニューが分からなくて、コンビニとかを使っているケースがあります。翻訳機能って、あまり浸透していないんですかね。

石野氏
 料理のメニューって、固有名詞になっていたりするので、翻訳が意外と難しいんですよね。

法林氏
 NHKのドキュメント番組で観たのは、日本人とタイ人のカップルで、お互いの言語はわからないけど、スマートフォンの翻訳機能でやり取りをしていて、一緒に住んでいるという人たち。それくらい、翻訳は普通のものになってきていますよ。

石川氏
 僕が髪を切っているお店では、店主さんがGalaxyの翻訳機能を使っていますね。最近は長期滞在する外国人が多くて、髪を切りに来るらしい。店主さんは、それに合わせてGalaxyを買ったみたいです。

関口
 今年のAIといえば、Apple Intelligenceの日本語対応が控えていますが、Galaxyとの距離感というか、これまで出てきた機能が、Apple Intelligenceの対応で、一気にユーザーに広まっていくといった可能性はありますか?

石川氏
 それで言うと、アップルはAIでかなり置いていかれている気もする。ボイスレコーダーで録音して、テキスト化するといった機能は、やっぱりPixelがすごい。

石野氏
 ちなみにiPhoneの文字起こしは、Apple Intelligenceではなく、ただの機械学習で、Apple Intelligenceをオフにしていても使えます。

法林氏
 複合的に判断をしないといけないから難しいけど、例えば、外国のオンラインショップで注文した製品が届いていないから、催促のメールを送るといったシーン。これまではGoogle翻訳で英文を作っていたけど、Copilotに日本語で下書きメールを書いてもらって、それをそのまま翻訳してくれる。

 AIって、なんとなく英語ベースだと思っているけど、日本語ベースで作るって、こういうことなのかなと。日本語の解釈がちゃんとできていないと、そもそも日本語で返事のメールは書けない。Apple Intelligenceにそこができるのかが問題で、英語ベースの文章を日本語に訳しているのか、そもそも日本語ベースで考えてくれるのかで、結構変わってくる。

 グーグルは、最初の頃は英語から和訳しているなという部分も見受けられたけど、最近はあまり感じなくなってきています。

石野氏
 最近、Google WorkspaceがAI機能を抱き合わせにして値上げしたので、仕方なく使い始めたんですけど、意外とメールの返事をちゃんと書いてくれるんですよね。

法林氏
 そうだね。どう使うのかは人それぞれだけど、組み込まれているというのはそういう意味合い。日本語ベースっていうのは、翻訳するということではない。

 石川君が指摘した通り、アップルは翻訳でも後れをとっているし、AIの作り込みも出遅れた感じがする。アップルなので、ネジを巻いてくるとは思うけど、これまでの製品やサービスを見ていると、「アップルはアメリカの製品だよね」という感じが随所に残っているので、日本語にしっかりと取り組めるのかは心配。

石野氏
 日本語で言うと、Galaxyの文字起こしもまだまだで、言語として難しいんだなという印象はあります。ただ、シャオミの文字起こしは超優秀で、びっくりしました。どうやらクラウドにあげて処理しているみたいです。

法林氏
 AIの話をしていると、オンデバイスかクラウドかという話が必ず出てくる。セキュリティやプライバシーを考えるうえで重要なことだけど、ユーザーからすると、ちゃんと翻訳とか文字起こしさえできていれば、どこで処理していようと、あまり関係ない。

関口
 Galaxy AIに話を戻すと、グーグルとの共同開発という形なんですよね。

石野氏
 そうですね。共同開発、先行搭載をして、半年くらいリードするというのが、サムスンの戦略になっています。

関口
 かこって検索と比べると、少しリードタイムが長くなりましたかね。

石野氏
 そのあたりはまだ明言されていませんが、かこって検索も、広まるのにある程度時間がかかったのと、一緒にやっている分、内蔵アプリとも連携できるという強みはありますね。

法林氏
 ひと口にグーグルと言ってもどのチームと組んでいるかという話もある。Pixelチームではなく、Geminiのチームと組んでいるので、Geminiチームからすると、Androidで一番シェアを持っているサムスンと手を組むのは、自然な流れだよね。

石川氏
 今は、PixelチームとAndroidチームは、組織的には同じだけど、グーグルが本気でやろうとしていることは、サムスンと組まないとできないんじゃないですかね。クアルコムの最先端チップと、サムスンのハードウェアテクノロジーと、Androidを組み合わせて、いいものができる。グーグルはまだハードウェアが追い付いていない。

石野氏
 サムスンはハードウェアに強い会社ですからね。もちろん、サムスンにはサムスンのアイデンティティがあるので、Androidはカスタマイズするし、Galaxy AIも、Geminiだけでなく、サムスンのAIセレクトといった機能を入れています。文字起こしもそうですね。グーグルとしてコントロールが効かない部分もあるので、グーグルとしては、自分たちのAIを形にするためにも、Pixelが必要です。

石川氏
 それで言うと、サムスンはOne UIの中に、うまくGeminiを取り込んでいるけど、一方で、AndroidとPixel、Geminiは、まだ分立しているというか、別部署でやっている感がある。One UIほどの統一性はまだない。

 Pixelは、Geminiを意識して使わないといけないけど、Galaxyなら、自然とAIを使っている状態になる。

石野氏
 いたるところにAIのボタンがありますからね。

石川氏
 そう。なので、UI面で言うと、One UIか、Apple Intelligenceかの勝負になるかな。

石野氏
 やっぱり、見せ方はサムスンとアップルが上手いですよね。サムスンは、設定の中に、AIを使っている機能の一覧が出たりとかして、アピールがうまいなと思います。

法林氏
 Galaxyは、Galaxy AIが設定アプリの中にあるけど、シャオミを見るとAIの項目には、何があるのかが羅列されているだけで、タップしてもそのページに飛んだりはしない。

 最近、シャオミの弱点はUIじゃないかと思ってる。コントロールセンター(クイック設定パネル)のキャプションがない所とかもそうだけど、いろんな部分が繋がっていない。いい端末が多いんだけど、メニュー周りがまだまだ。

石野氏
 ちょっとiPhoneをマネしすぎて、失敗している感じがしますよね。

法林氏
 オッポのColorOSはiOSっぽいUIから離れてきているけど、シャオミはまだだね。Androidのメニュー周りで言うと、やっぱりよくできているのはGalaxy。あと、一応アプリ一覧の中でフォルダが作れるシャープは、まじめにやっているかなと。

石野氏
 Pixelも使いにくいんですよ。デュアルSIMの切り替えが、いまだに設定アプリに入っていかないとできない。その辺は、長くやっているサムスンが、よくできています。

ついにGalaxy RingとGalaxy Fit3も日本上陸

佐藤
 Galaxyで言うと、Galaxy Ringも日本上陸しましたね。

石川氏
 キャリアでも取り扱われるけど、キャリア版のサイズは9と10だけ。これは誰向けなのか。

法林氏
 しかも、どうかと思うのは、ゴールドは13までしかない。

石野氏
 そもそも、センシングとタップ操作ができるだけで、6万3690円っていうのはどうなのか。

法林氏
 それなら、Galaxy Watch7を買った方が、僕は幸せだと思う。

石野氏
 せめて指輪として高級感があるならまだわかるけど、そういうわけでもない。もう少し金属感が欲しい。

法林氏
 スマートリングは、決済なら使いたいという人もいるけど、Galaxy Ringにはそれもない。

石野氏
 スマートリングなら、ウォッチと違って、指ごとに複数付けられますよ(笑)

石川氏
 あと、スマートリングって、見た目だとあまりわからないので、話のネタにもなりにくいんですよね。

法林氏
 スマートリングは人を選ぶというか、難しいよね。昨年、グローバルで発表されたのに日本で発売されなかったときは、ちょっとがっかりしたけど、いざ6万円台で出ると、ちょっと手が出せない。

石川氏
 せめて2万円台かなあ。

法林氏
 以前、アップルのウェアラブル製品について話していた時に、アップルのラインアップにスマートバンドがなくて残念という話をしていた。そういう意味で、今回GalaxyがGalaxy Fit3を取り扱うのは、正しい方向だと思う。値段は高いけどね。そうなると、逆にGalaxy Ringが半端な感じがして、それが残念。

石川氏
 バッテリーは1週間持つけど、外して、充電して、もう1回付けるっていう動作に抵抗がある。それなら、2個用意して、付け替えるほうがいい。

法林氏
 じゃあ12万円だね。

石川氏
 そうなると厳しいですよね。

石野氏
 アクセサリーだし、色違いで買いますか(笑)

法林氏
 以前はスマートバンドやスマートウォッチを敬遠していた人たちも、手軽に始められるスマートバンドを試してみて、実際にデータをとってみたうえで、次のステップとして、スマートウォッチに行く流れも見えてきた。Galaxy Ringは、入り口のデバイスではないよね。

石川氏
 これこそ、おまけで付けてほしい。もっと安くするべきだし、おまけからスタートして、次にもっといい物を買おうかなという流れがほしい。

石野氏
 あと、スマートリングなら、寝ながらでも付けやすいという話をしているけど、本当にそうなのかという疑問もあります。

法林氏
 何気にごついよね。

石野氏
 そうなんですよ。あと、指輪とかって、寝るとき外しませんか。寝苦しさというか、腕の開放感が欲しい。寝苦しさと、センシングができるメリット、デメリットを比較すると、つけなくてもいいかなと思ってしまいます。試してみたいとは思いますけどね。

 ただ、エコシステム製品が充実してきたことで、XRグラスとかが出たときにも、日本で販売してくれるのかなという期待感は高まりました。

関口
 サムスンのラインナップを見ると、ほかのAndroidメーカーからは、1つ2つ先を行っている感じがします。

石川氏
 原宿にあれだけ大きなビルがあるくらいですから。

法林氏
 あれはほかメーカーにはできないよね。

石野氏
 その場で修理もしてくれるし。あれを超えられるのは、Sony Parkくらいですよ。Xperiaの修理はしてませんが……。

法林氏
 サムスンは、商品のラインナップはいいけど、それぞれのデバイスに、少しずつ抱えている課題はある。

石野氏
 ただ、最近は販路も広がっているのはいいですよね。ソフトバンクもかなり力を入れていて、ホームページを見ると、「iPhone」「Pixel」「Galaxy」ってカテゴライズされています。

石川氏
 いきなりCMをやるくらいだしね。

nubia Flip 2を発売したZTEの課題は?

佐藤
 新端末でいえば、nubia Flip 2もワイモバイルから発売されました。

法林氏
 リーズナブルな価格の折りたたみ端末が出たのはいい。もう1つは、Liberoじゃなくて、nubiaという名前で展開できたのは、ZTEとしてはよかったね。

石野氏
 Liberoっていうブランドの認知度は低かったみたいですね。

石川氏
 昨年は、Liberoのほうが知られているって言っていたけどね。

法林氏
 せっかくグローバルで出しているブランドだし、nubiaで出したほうがいいよね。

石野氏
 ただ、ZTEは、代理店経由でもnubiaの端末を出していて、わかりにくい。nubiaはもともと、ZTEの子会社で、一度切り離して、また復活させたという経緯があります。ここ最近、ZTEでもnubiaブランドを使っていて、ハイエンドはnubiaに統一するという流れになっているんですけど、nubiaのnubiaと、ZTEのnubiaが混在している。一方で、nubiaのゲーミングスマホ、REDMAGICがおサイフケータイに対応したりとか、やっていることがちぐはぐです。

法林氏
 nubiaブランドのバラバラ感は、ちょっとまずいよね。

石野氏
 ですよね。以前、ファーウェイが日本で出始めたころに、日本通信が勝手に本国から端末を輸入して、ファーウェイジャパンの端末と入り混じっていた時のごたごた感を思い出しました。

 同じブランドを複数の会社で展開すると、コントロールが効きにくくなる。どっちに注目してもらいたいのかとか、わかりにくくなります。プロモーションの戦略も一貫していない。

法林氏
 頑張ってほしいけど、もう少し体制は整えたほうがいい。

石野氏
 いい端末なんですけど。

法林氏
 端末自体は悪くなくて、アウトディスプレイもメインディスプレイと同じアスペクト比にしたりと、工夫は感じられるけど、プロモートできているかというと、タイミングが悪い。今出しても、Galaxyに埋もれるし。

石野氏
 アウトディスプレイは、言われてみればそうだなと思わされましたね。若い子がTikTokとかの動画を撮る時に、iPhoneを立てかけたりしているけど、それならnubia Flip 2はありだなと。Galaxyやrazrだと、比率が違いますから。

石川氏
 結局、見やすいディスプレイの形って決まっていて、四角形なんだなと思います。Apple Watchが最初から四角なのは、文字が並んだ時の見やすさが違うから。

石野氏
 効率的ですよね。

石川氏
 そう。サムスンとかグーグルは、時計らしさを追求して、円形ディスプレイにしているけど、効率は悪いっていう話ですね。