特集:5Gでつながる未来
「今日が6Gのキックオフ」、DOCOMO Open Houseで語られた次の未来
2020年1月27日 06:00
24日、NTTドコモのプライベートイベント「DOCOMO Open House 2020」最後の講演で、業界のキーパーソンによるパネルセッション「5GEvolution & 6Gパネルセッション:『5Gの発展とその先の未来』」が開催された。
6Gの議論はグローバルでもまだ始まって間もない。NTTドコモ執行役員の5Gイノベーション推進室長である中村武宏氏がモデレーターを務めた今回のセッションでも明快な答えに行き着いたわけではない。
それでも、無線ネットワークのスペシャリストや、今後の大きな飛躍が期待されるAIをリードする立場の人物が集い、未来を示唆する場となった。
今から準備すべき
いよいよ5Gが始まろうとする現在、2030年という10年先の6Gを語るのはまだ時期尚早のように思えるかもしれない。しかし、これまで10年ごとに通信規格は新たな世代が登場してきた。
10年後に商用化するためには、今から準備を進める必要がある、と語ったのは、登壇者の一人であるエリクソンのリサーチシニアエキスパートであるエリック・ダールマン(Erik Dahlman)博士だ。
ダールマン博士は「2030年代のユースケースは分からない。ただ、6Gのためだけではなく、その未来を含めた技術のために調査を進めている。重要なのは要求を満たすこと」と語る。
どんな用途になるかわからないからこそ、10年以上先の未来に実用化される際には、その時点で社会が求める機能・サービスを満たせるスペックを、今から議論しなければならないという指摘だ。
超高速通信は100GHz帯以上の高い周波数を使う
ダールマン博士は、6Gの鍵となる技術要素はまだわからない、としつつも、100GHz帯を超える高い周波数を用いるとの予測を示す。それでもエリアカバーのためには低い周波数も必要とした。
ノキアの無線インターフェイスグループフェロー兼ヘッドのアミタバ・ゴーシュ(Amitabha Ghosh)氏は、ARやVRのためには、5Gよりもさらに高速な通信速度が必要であり、そのためには広い帯域を確保するため、ダールマン博士と同じく高い周波数の利用が必要と解説する。
多くのアンテナを使い高速化を図る「Massive MIMO」といった既に実用化されている技術も、6Gに向けてさらに改善が必要になると述べ、通信容量の拡大が必要とした。
空気になるからこそ必要な「信頼」
今や、通信サービスはどこでも繋がることが当たり前となり、「空気のような存在」(ダールマン博士)となった。
いわば通信サービスに依存している状態であり、だからこそ通信規格が進化する際には信頼性をとことん高める必要があるとダールマン博士は指摘する。
ゴーシュ氏もまた6G時代には、5Gで採り入れられる高信頼の通信が、さらに完璧になると予測する。
空でも海中でも
さらに「どこでも繋がる」という点でも、たとえばNTTドコモは22日に発表した6Gのビジョンで、空の上や宇宙でも通信できる将来像を提示した。
ダールマン博士は「今はドコでも繋がるというが、これが海の中でも繋がるようになる」と説明。
実際にDOCOMO Open Houseでは、エアバスのHAPS(高高度基盤ステーション)向け機体「Zephyr S」の模型なども紹介されており、通信できる環境を従来よりも広げる方向性が示されていた。
AIはどんな役割を果たす?
近年注目される「AI」は、6Gに向けてどんな役割を果たすのか。
ダールマン博士は「(ネットワークの)マネジングリソースは、今良いモデルがない。試行錯誤している。AIが出てくれば手入力によるラーニングが取り除かれ、もっと効率的に学習できるのではないか」とコメント。
モデレーターであるドコモの中村氏が通信事業者として、運営コストを低減する“ゼロタッチオペレーション”への期待感を示すものの、ダールマン博士は「ゼロコストの定義によるが、さまざまなものを助けてくれるのではないか」とした。
NVIDIA(エヌビディア)日本代表兼米国本社副社長の大崎真孝氏は、「技術はある。しかし誰がAIソフトを構築するのか。ネットワークに深い知識を持つ人が必要だ」と課題を示した。
4人によるセッションを振り返った中村氏は「6Gについて、明確にはできなかったかもしれない。それでも今回のイベントは、いわば、日本における6Gのキックオフのようなもの」と述べ、次の10年に向け、産学官での連携を進めるだけではなく、「ぜひ6Gへの議論に参加して欲しい」と聴衆へ呼び掛けていた。