ニュース

2020年は5Gを大幅に普及させる年へ――クアルコムが描く5Gの世界

 NTTドコモが20日に5Gプレサービスをスタートする。同社代表取締役社長の吉澤和弘氏は「プレサービスを5Gの本格スタートと位置づけたい」と意気込みを見せ、いよいよ日本での5G時代が始まることを期待させる。

 19日、米クアルコム 最高責任者のCristiano Amon(クリスティアーノ・アモン)氏が来日。世界の5Gの展開状況や、同社の製品について説明した。

5Gは電気のようなテクノロジーの基礎となる

 クリスティアーノ氏は、ドコモの5Gプレサービス発表について「とてもエキサイティングだ」とした上で、5Gはこれまでのモバイル通信史上、最大の変化を巻き起こすだろうと語る。

クリスティアーノ・アモン氏

 5Gがこれまでの通信テクノロジーと最も異なるポイントとしては、携帯電話の垣根を超えて幅広い産業に対して、根本的な影響をもたらすような基盤技術となりえることだ。特に、日本においては自動車やエンターテイメント、ゲーム業界など多くの産業が5Gによって得られる恩恵を享受でき、5Gによって日本の産業界の競争力を強化できるだろうとクリスティアーノ氏。

 5Gの重要性は、クラウドとの連携や接続性にある。携帯電話のみならずあらゆるものがクラウドにつながるというのは5G以前ではあまりないことだ。大量のデータを必要とするAIなども含めて、デジタルトランスフォーメーションにとっての重要な役割を果たす。クリスティアーノ氏は「(5Gは)電気のように基礎的なテクノロジーになる」と予測する。

 モバイルブロードバンドの拡張、高い信頼性による産業用途での利用、従来より大幅に強化された多接続性の3つがキーワードとクリスティアーノ氏。

 5Gがもたらすものの一例として、クリスティアーノ氏はストリーミングビデオを挙げた。モバイル通信環境下で最大設定の解像度、フレームレートでストリーミング映像を見れる環境は現在、4%とされているが、これを95%まで引き上げられる可能性があるという。

 産業界においては、ソニーやパナソニックなどが、プロ用映像機器で地位を確立しているが、プロ用のカメラが5G回線でつながり、直接制作スタジオなどに送信されるようになれば、映像業界を根本的に変えるものになる。そのほか、モバイル向けが重要になってくるゲーム業界などにも5Gは変革をもたらすものであり、こうした点から5Gは、日本の産業にとって重要だというのがクリスティアーノ氏の見解だ。

5Gの開始状況は?

 5Gは、現在世界中で20以上の事業者によって運用が始まっている。それに対して4Gの同時期の状況は、わずか4つの事業者によって提供されているにすぎなかった。4Gの潜在的顧客が1.2億人だったことに対して、5Gのそれは22億人ほどと考えられる。

 サービス展開の状況について、なぜこれほどまでに4Gと5Gに違いが見られるのか。クリスティアーノ氏は、5Gがコンシューマーのみならず、産業利用でも期待されていることが違いを生み出した理由だろうとしている。

幅広い端末へ5Gを

 5Gの加速はこれまでになかった状況も生み出した。クアルコムとそのパートナーは、5Gの展開状況は1年前倒しで進めている。3Gや4Gが展開したときには、ネットワークが確立されたにも関わらず、対応する端末がないという状況が引き起こされていた。

 その点、5Gは開始直後から端末ベンダー各社から対応端末が発売されている。5Gのグローバルでの迅速な展開はこのような部分の影響も大きい。

 クアルコムでは5Gの迅速な展開のための取り組みとして、ドコモやエリクソン、AT&T、SKTなどと取り組みを行い、2019年中の開始を実現した。次のミッションは、さらなる拡大を見込むことだという。

 そのために、クアルコムでは5Gをハイエンド端末のみならず、普及価格帯の端末用のチップセット7シリーズ、6シリーズに対しても統合された5Gチップセットを提供する。これは先般のIFAでも発表があった通りだ。クリスティアーノ氏は「2020年はより大規模に5Gを普及させる年になる」とした。

日本の5Gの状況についてクリスティアーノ氏は

 日本の5G展開は諸外国に比べて、しばしば遅れをとっていると指摘される。それに対してクリスティアーノ氏は「ヨーロッパやアメリカの一部では、未だに周波数割り当ての途中にあるという状況でもある。それに対して日本は割り当てが済んでいる。そういう意味ではとてもエキサイトしている」と自身の見方を語った。