特集:5Gでつながる未来
「バスケ×5G」、ソフトバンクが日本代表戦で新時代のスポーツ観戦体験
2019年8月23日 06:00
バスケットボール日本代表の強化試合「バスケットボール日本代表国際試合 International Basketball Games 2019」の会場であるさいたまスーパーアリーナ内で、ソフトバンクが5Gのプレサービスを提供している。
用意されたのは、5G時代のさまざまなサービスを模したブースや顔認証による入場、抽選で選ばれたユーザーが体験できる映像コンテンツの3種類だ。このうち5G時代のサービス体験ブースは、入場した人であれば、25日までの会期中、誰でも楽しめる。
5G時代のスポーツ観戦はAR、VRを駆使する形?
高速大容量・低遅延・多接続という特徴がある5Gでは、これまでより高精細な映像や、より多くのデバイスによる通信などの活用が見込まれている。そうした5Gの特徴をスポーツ観戦という形に仕立てることで、ソフトバンクはよりユーザーに近い体験で5Gを進めたい考え。
そうした中、今回、試合会場の観客席に用意されたのは、VRゴーグル、そしてARゴーグルとタブレットを使う多視点での観戦だ。
目前で試合を楽しめる環境だが、その座席に縛られない形で、スポーツを楽しめるようにする取り組み。
たとえばVRゴーグルのOculus Questを使った場合、ゴール裏や、コートサイドと3つの視点を随時切り替えながら試合を楽しめる。VRゴーグルということで、試合会場以外でも利用できるが、VRゴーグルユーザー同士のコミュニケーションも可能。試合会場であれば生で見るほうがより迫力はあるが、VRゴーグルの視点では一般的な観客席ではあり得ない近さ・角度となるだけに、観客席とはまた違った面白さがある。
ARゴーグル(nreal製)は、試合を肉眼で見ながら、別視点での映像が投影され、同時に観る形。ARゴーグルが繋がる手元のスマートフォンでカメラを切り替えるようになっており、VRゴーグルほどの迫力はないが、目の前の試合をより楽しみやすい多視点観戦のスタイルだ。
そしてタブレットでの多視点切り替えは、会場を180度囲むように配置されたカメラで捉えた映像を見つつ、一時停止すれば視点を変えられるという形。手元のデバイスということで、ARゴーグルと違って、コートから目を離すが、大人でも子供でも使いやすいサービス。
いずれのデバイスも今回はWi-Fi対応で、そのWi-Fiルーターが、シャープおよびソニー製の5Gスマートフォン(試作機)に繋がるという仕組み。5Gの高速大容量、低遅延を活かすサービスというイメージだが、VR/ARどちらも、映像処理のための時間が必要となり、数十秒は遅延することになる。ちなみにさいたまスーパーアリーナ内では、5G用に3.5GHz帯(40MHz幅)、組み合わせて使う4Gは1.7GHz帯を用いていた。
来場者が体験できる5Gデモ
5G時代のサービスを体験できるブースでは、先述したVRおよびARゴーグルのほか、ユニークなものとしては「リアルタイムスタッツ」と名付けられたものが目をひく。これは、その名の通り、選手の動きを、リアルタイムで何らかの実績として数値化するというもの。
競技スポーツでは、陸上における走行タイムや投擲距離、球技における得点、あるいは打率などが用いられる。そうしたデータに加えて、リアルタイムスタッツでは、センサーの活用でアスリートの動きを多角的に捉えて、選手の特徴を数字で表現しようとしている。
バスケットボールの場合、シュートの成功率、あるいはシュートまでの時間をプレイ直後に表示する。こうした数値は、今回の「リアルタイムスタッツ」で新たに採用したもので、選手それぞれのプレイスタイルを可視化することで、選手の特徴をよりわかりやすく示そうとしている。カメラで捉えた映像をスピーディに処理し、それをさらに遅延なく配信するという面で、5G時代に向けたアプリケーションのひとつという位置づけだ。
このほか入場ゲートでは、AIを用顔認証システムを設置。コンサートなどのイベントでは顔認証による入場システムは既に数年前から導入されつつあるが、今回は、ソフトバンクが7月に設立した子会社、日本コンピュータビジョン社のソリューションを活用。
こちらは香港のSenseTime社が協力するソリューションで、いわゆるAIを用いたもの。他社の顔認識ゲートと比べ、カメラから見て顔が横向きになっていたり、あるいは入場のために歩いて動いていたりする状態でも、高い精度で顔を認識できることが特徴という。
ソフトバンクの5G、他社との違いは
ソフトバンク モバイルネットワーク本部の野田真本部長は、人気イベントで引き続き、5Gのプレサービスを提供する方針を示す。
他社と比べて、一見すると獲得できた周波数帯が少ないように思えるソフトバンクだが、野田氏は、これまでソフトバンクがイー・モバイル、ウィルコムを吸収してきたことから、他社よりも多くの基地局を設置できる場所を確保できていることをアドバンテージに挙げる。
当初は従来よりも届きにくい周波数帯を使う5Gでは、より多くの基地局が必要と見られる。基地局の設置交渉の手間も少なくなる。その上で、人口カバー率では、他社に遜色ない形で基地局を展開する考えで、「意気込みとしては計画以上に加速して基地局を設置していく」(野田氏)。
もうひとつ、5Gの要素技術のひとつで、多くのアンテナを使うMassive MIMO方式を4Gから採用しており、ノウハウに長けていることも同社の強みと語る。
割り当てられた5G向け電波についても、競合他社に割り当てられた帯域は、近い帯域を使う他の用途への干渉を抑える必要があり、「(割当前から取り扱うのが)難しいなと思っていた面がある」(野田氏)。帯域幅が他社より少ないため、理論上の最大速度で差が出る可能性はあるもの、野田氏は「理論値で差があっても、実際は遜色ない」と解説。
さらにソフトバンクグループ全体で見れば、積極的に海外の企業へ投資していることから、先端的なサービスをスピーディに日本へ展開できることも強みと野田氏。総合力で他社と差別化できるとの見方を示した。