iPhone駆け込み寺
「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」濃いめのファーストインプレッション
2020年10月24日 00:00
10月23日、「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」の2モデルが発売された。さっそくその使用感を含めたファーストインプレッションをお届けする。先行して実機のフォトレビュー記事も掲載しているので、外観写真についてはそちらもご参照いただきたい。
Proとスタンダードの価格差・スペック差は従来シリーズより減少
2019年のiPhone 11シリーズ発売時の価格を見ると、iPhone 11(64GB)は7万4800円、iPhone 11 Pro(64GB)は10万6800円だった。その価格差は3.2万円。Apple Watch SEが買える金額だ。
モデル | 容量 | 価格(税抜) |
iPhone 11 | 64GB | 74,800円 |
iPhone 11 Pro | 64GB | 106,800円 |
iPhone 12 | 64GB | 85,800円 |
iPhone 12 | 128GB | 90,800円 |
iPhone 12 Pro | 128GB | 106,800円 |
一方、iPhone 12(128GB)は9万800円、iPhone 12 Pro(128GB)は10万6800円となっている。スタンダードモデルであるiPhone 12の価格がちょっと上がり、iPhone 12 Proとの価格差は1.6万円になった。
ちなみにスタンダードモデルの価格がだいぶ上がったようにも感じるが、ストレージ容量による違いもある。256GBモデル同士で比較するとiPhone 11は9万800円、iPhone 12は10万1800円と価格差は若干縮まる。
ディスプレイで見る「無印とPro」の違い
価格だけでなく、スペックの差も縮んでいる。こちらもスタンダードモデルであるiPhone 12のスペックが向上したためだ。
iPhone 11とiPhone 11 Proのスペック面で大きな違いとなっていたのは、ディスプレイだ。
iPhone 11は6.1インチ液晶、iPhone 11 Proは5.8インチ有機ELで、方式が異なっていた。ちなみにアップルによる画面修理費用も、iPhone 11は2万1800円、iPhone 11 Proは3万400円だ。
一方のiPhone 12とiPhone 12 Proは、どちらのモデルも同じ6.1インチ2530×1170の有機ELを搭載している。修理費用は両機種ともに3万400円。ディスプレイは同じものが使われているようだ。
「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」の差としては、カメラの仕様とボディの素材だ。
またベンチマークアプリによると、システムメモリーの容量も異なる。しかしそれ以外のスペックは、プロセッサーの性能や5G対応など含めて共通する部分が多い。
「iPhone 12 Pro」の方がスペック的に優れているが、そのスペック差は決して大きくはない。単純に「どちらが良い」「どちらが安い」とかではなく、「どちらが好きか」で選ぶべき差かも知れない。
形状刷新で側面フレームが平面的に。なんだか懐かしい感じ
iPhone 12とiPhone 12 Proはまったく同じ形状で、ジャケットケースなどは同じ製品を利用できる。
従来モデルに比べると、とくに側面形状が変わっている。2014年のiPhone 6時代から続いた曲面的なデザインではなく、懐かしのiPhone 5sやiPhone SE(第1世代)のような平面的なデザインとなった(iPad Proにも似ている)。手に持ったときは、曲面のほうが手に馴染みそうなイメージもあるが、7.4mmと薄いおかげか、実機を持った限りでは持ちにくいとか角が手のひらに当たるとかそういったことは感じない。
「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」の大きさは146.7×71.5×7.4mm。ちなみに厚みの7.4mmは「iPhone 12 mini」「iPhone 12 Pro Max」も同じだ。
数値上の大きさは「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」とiPhone 11 Pro(5.8インチ/144.0×71.4×8.1mm)の幅はほぼ同じだが(縦に長くなった)、ベゼルが細くなり、ディスプレイサイズは6.1インチと大きくなっている。
同じサイズのディスプレイを搭載しつつもベゼルがやや太かったiPhone 11/XR(150.9×75.7×8.3mm)に比べると、縦の長さは似ているが、幅は細くなっている。というかiPhone 11/XRは安価な代わりにややデカい(そして重たい)。
素材の違いは意外な違いに……か、軽い……だとっ!?
「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」は形状自体が同じ。
見た目の違いは、カラーと側面フレーム素材、背面ガラスパネルの仕上げ、あとはカメラ部だ。
具体的に言うと、iPhone 12は側面フレームが無光沢アルミニウム、背面が光沢ガラスで、iPhone 12 Proは側面フレームが光沢ステンレススチール、背面が無光沢ガラスとなる。光沢・無光沢が互い違いになっているのが面白い。
ただこれだけの違いなのだが、見た目の印象はガラッと変わる。「iPhone 12 Pro」の側面フレームは形状が平面になったこともあり、光沢が非常に映える。
もっとも色の暗い「グラファイト」ですら、鮮やかに反射し、リッチな腕時計のような高級感を醸し出している。
背面パネルは、光沢ガラスのiPhone 12(そして先代のiPhone 11)はその素材に応じた質感だ。一方、無光沢ガラスのiPhone 12 Pro/11 Proはガラスにも金属にも見える、不思議な仕上がりで、雰囲気がかなり良い。
こうした素材の違い(と後述するカメラの違い)からか、iPhone 12の重量は162g、iPhone 12 Proは187gと、25gほどの重量差がある。
これは多くの人が手に持った瞬間にわかるであろう違いだ。
とくにiPhone X以降のiPhoneなど、180gクラスのスマホを使ってきた人は、iPhone 12を手に取れば「軽い!」と感じると思う。
この軽さ目当てでiPhone 12を選ぶのもオススメだ。逆にiPhone 12 Proを使う人は、iPhone 11 Proなどと同じということで、あまり気にならないかもしれないが、もし店頭で「iPhone 12」と比べてみると、そのあたりは割り切ることになりそうだ。
ベンチマークスコアは良好。Proのメモリは6GB!
今回のiPhone 12シリーズでは全モデル、最新のA14 Bionicチップセットを搭載している。
歴代のiPhoneが発表される際、新しいチップセットが採用されると「A13比で○○%高速」といった表現で、進化の度合いが紹介されていた。
そして、その数値はベンチマークアプリによる実測スコアに近く、非常に参考になっていた。しかし今回はアップルシリコン同士の比較ではなく、ほかのスマートフォンより50%速い」とうたっている。
新しい「A14 Bionic」がどのくらいのパワーを持つプロセッサなのか、定番ベンチマークアプリ「Geekbench」を使って測定してみた。
測定環境はiOS 14.1とGeekbench 5.2.5。5回試行し、バックグラウンド動作などの影響が少なかったと推測される「いちばん高い数値」を採用している。
A13とA14のベンチマークスコアを比較すると、シングルコアが約20%、マルチコアが25〜35%、グラフィックが約25%ほど高速化している。過去を振り返ると、「A10」→「A11」、「A11」→「A12」、「A12」→「A13」でもだいたい15〜30%程度、高速になっていた。おおむね、これまで通りのスペックアップと言えそうだ。
「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」にプロセッサーの差はない。しかしシステムメモリーはiPhone 12が4GBなのに対し、iPhone 12 Proは6GBとなっている。
iOSはもともとマルチタスクもあまりしないし、少ないメモリー量を前提に作られているアプリがほとんどだが、将来的にメモリーを多く使うアプリが登場しても対応できる、というのが「iPhone 12 Pro」のメリットとなりそうだ。
Geekbenchで測定できない部分では、機械学習アクセラレータは70%、Neural Engineは80%高速化したとされている。
また、チップの製造プロセスは業界初の5nm(ナノメートル)を採用しているとのこと。消費電力や発熱の低減も期待できそうだ。
同じ6.1インチでもiPhone 11/XRより高精細なディスプレイ
「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」とiPhone 11のディスプレイは、サイズこそ同じ6.1インチだが、解像度は1792×828から2530×1170へと高精細化し、液晶から有機ELになった。コントラストや最大輝度が強化され、HDR表示にも対応している。
iPhoneはディスプレイサイズや解像度が変わっても、文字やUIの表示サイズが同じになっている。細かく言うと、液晶系列と有機EL系列(とPlus系列)の2種類の表示サイズがあり、それぞれの系列で表示サイズが統一されている。本誌で1年前、より詳しくご紹介しており、興味がある方はご参照いただきたい。
「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」では、有機EL系列になるため、液晶系列のiPhone 11/XRに比べると文字などのサイズが約7%大きく表示され、表示される文字などの量は約7%少なくなる。一方のiPhone 11 Proと比べると、文字などの表示サイズは同じで、表示される文字などの量は増えている(画面が大きいため)。
ちなみに「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」の拡大表示は、iPhone 11 Proの拡大表示と表示内容が同じになる(画面が大きい分、iPhone 12 Proの方が表示が大きい)。
拡大率は約122%程度で、iPhone 11の約110%やiPhone 11 Proの約117%よりも大きくなる。
最近、近くの文字が読みにくい、なんていう人は、「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」は使いやすいモデルかも知れない。
望遠カメラが「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」の差異。本命はiPhone 12 Pro Maxか?
カメラはiPhone 12シリーズ内の差別化ポイントとなっている。iPhone 12は超広角と広角のデュアルカメラ、iPhone 12 Proはそれに望遠カメラとLiDARスキャナが加わっている。
カメラの細かいスペックは、超広角カメラが12mm相当でf/2.4、広角カメラが26mm相当でf/1.6、望遠カメラが52mm相当でf/2.0となる。望遠カメラはProモデルだけが搭載するが、それ以外のスペックに差はない。
解像度はインカメラ(TrueDepthカメラ)含めてみんな12メガピクセルで、この解像度自体は2015年のiPhone 6から変わっていない。
画質については本誌の過去記事でも比較しているが、iPhone 7くらい古い世代と比べると明らかに改善しているが、iPhone 11世代あたりからだと、明確な差は実感できない。
iPhone 11世代に比べると、メインとなる広角カメラのF値がf/1.8からf/1.6に改善されているので(「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」共通スペック)、ハードウェア的にも進化しているハズだが、正直、筆者のカメラの腕前だと、ハードウェア差が明らかになるような撮影はできなかった。
このあたりについては今後、もうちょっと時間をかけつつ撮影を試していきたいと思っているが、今日のところはファーストインプレッションと言うことでご勘弁いただきたい。
iPhone 12 Proは52mm相当の望遠カメラを搭載する。その倍率は広角カメラの2倍だが、そもそも52mm相当というのは「標準レンズ」と言われることもある画角で、ホントに遠くのものを撮るにはちょっと物足りない。どちらかというと、人物や卓上の小物を撮るとき、遠近感の少ない絵を撮るのに使うような画角だ。
もちろんデジタルズームを使うならば、望遠カメラ搭載のiPhone 12 Proの方が画質劣化を抑えられる。しかし「運動会を撮る」「スタジアムで選手を撮る」といった用途であれば、高倍率ズームを搭載するデジカメやビデオカメラを用意するべきだろう。
LiDARスキャナー
LiDARスキャナーもProモデルのみの搭載で、iPhone 12/12 miniは搭載しない。
カメラ機能としては、LiDARスキャナーを暗所でのポートレートモードやオートフォーカスに活用している。さらに言えば、LiDARスキャナーはARアプリでさらに面白くなる機能だろう。
Apple ProRAW
あとはiPhone 12 Pro/Pro Maxは今後のアップデートで、「Apple ProRAW」というRAWフォーマットでの撮影が可能になる。
Deep Fusionによる自動補正が行なわれた上でRAW記録されるようだ。iPhoneの映像表現を最大限に活かした本格的な写真作りができそうなので、楽しみな機能でもある。
iPhone 12 Pro Maxはメインカメラのセンサーが大型に
また、11月発売のiPhone 12 Pro Maxは、メインとなる広角カメラのセンサーサイズが大型化し、望遠カメラも65mm相当でf/2.2となる。
とくにメインカメラの画質向上が期待できるので、カメラ機能を最大限に重視する人は、少なくともiPhone 12 Pro Maxのレビュー記事などが登場するのを待つのをオススメしたい。
磁力こそパワー! MagSafeにビッグビジネスの予感を禁じ得ない!
iPhone 12シリーズではMagSafeという新しい非接触充電方式に対応した。給電方式自体はQiを使っている。
iPhone背面パネル内のQi受電コイル周囲に磁石を内蔵していて、同じく磁石を内蔵するMagSafe充電器が磁力で貼り付くようになっている。これにより、ほぼ自動的に受電コイルと給電コイルのセンターが合わせられ、充電失敗や効率低下を防ぐことができる。
純正のMagSafe充電器の磁力はそこそこ強力で、本来の使用方法ではないが、iPhoneを磁力だけでぶら下げることもできるくらいだ。一般的なジャケットケースを装着していても、ほとんど変わらないパワーで貼り付いてくれる。
このMagSafe、充電器以外のアクセサリーにも利用される。純正アクセサリーではiPhoneの背面に貼り付けられるカードケース「MagSafe対応iPhoneレザーウォレット」(6800円)が発売される。
また、MagSafe対応のシリコンケースやクリアケース(いずれも5500円)もあり、それらのケースは単体でもMagSafe充電器に貼り付くように磁石が内蔵されている。純正ケースを装着すると、そのケースの色が、一瞬画面上に表示される。これはMagSafeとして、Apple Payとは別にNFCが組み込まれ、情報をやり取りしているのだ。
一部サードパーティも対応製品を準備していて、たとえばベルキンは充電器だけでなく、車載用のMagSafeスタンドも発表している。
このMagSafe、筆者は個人的に果てしない可能性を感じている。単なる充電器以外にも、いろいろなアクセサリー製品展開が考えられるからだ。モバイルバッテリー、スマホリング、充電機能付きのスリーブポーチやベルトホルダー、三脚やカメラリグ、ジンバルなどの撮影器具、冷却機能付きのゲーミンググリップなどなど、パッと思いつく限りだけでも、幅広い可能性がありそう。というか、すでにそうした製品も海外のクラウドファンディングでは登場しているようだ。
「スマホの裏に貼り付けるアクセサリー製品」は過去にもあった。しかし、MagSafeはiPhoneアクセサリーのエコシステムの中央に投下されたいうインパクトがある。家電量販店のスマホアクセサリー売り場に行けば、機種別の棚の半分程度がiPhone関連で占められる。ややニッチな商品でもビジネスにはなるくらい、巨大な市場で、これからのバリエーションの広がりに期待が高まる。
MagSafeはiPhone 12シリーズ以降のiPhoneにも搭載されることが期待される。それだけでもさまざまなMagSafeアクセサリーが登場しそうだが、場合によってはほかの機種にも広がり、さらなる広がりを見せてくれるかも知れない。今後の展開が楽しみである。
3サイズ2スペックで4モデル、選びやすいラインナップだけど発売日に注意
iPhone 12シリーズは4モデルと、昨年までに比べるとラインナップ数が増えている。大雑把に言えば、「コンパクトで標準スペックのiPhone 12 mini」「標準サイズで標準スペックのiPhone 12」「標準サイズでハイスペックのiPhone 12 Pro」「大型サイズでハイスペックのiPhone 12 Pro Max」となる。
4モデルあるが、サイズは大中小の3種類、スペックはハイ・標準の2種類だ。「小サイズ・ハイスペック」と「大サイズ・標準スペック」は選べないが、ハイスペックと標準スペックの差が大きくないので、そこに不足はあまり感じない。
むしろ「なんで『iPhone 12』『iPhone 12 Pro』を別々のモデルにしたのだろう」とも思ったが、この2モデルはカラーバリエーションくらいと捉えても良い知れない。価格差1.6万円もスペック差とバランスが取れていて、どちらかが圧倒的に安い・高いとも感じられない。価格やスペックを気にせず、カラーで選んだって良さそうだ。
今シーズンのiPhoneの最大の問題は、iPhone 12 miniとiPhone 12 Pro Maxの発売が11月13日と、3週間ほど遅いと言うことだ。
「コンパクトなiPhone」や「カメラ最強iPhone」に少しでも興味があるならば、急いで「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」を買わず、3週間ほど我慢し、実機展示なりモックアップなりレビュー記事なりの登場を待つべきだろう。2年や3年は使うかも知れないiPhoneだ、ベストなモデルを選ぶために、3週間くらいの我慢を惜しむべきじゃない。
iPhone 12 Pro Maxのカメラ性能はまだ未知数だが、メインカメラの強化は魅力的だ。また、iPhone 12 miniのコンパクトさは、4.7インチiPhoneあたりに慣れてるユーザーにとっては大きな魅力になり得る。もちろん、より大きなiPhoneが使いたい人には、iPhone 12 Pro Maxは最高の選択肢だ。
個人的にも、コンパクトなiPhone 12 miniとカメラ画質が向上しそうなiPhone 12 Pro Maxには注目しているので、実機を入手するのが楽しみだし、実機を入手したらすぐにでもレビューをお届けしたいと思っている。しかしそれまで3週間ほどお待ちいただきたい。
なお、iPhone 12シリーズのサイズ感については別記事でダミーを用いて解説しているので、サイズで悩んでいる人はそちらも参照して欲しい。