iPhone駆け込み寺
「iPhone SE」(第2世代)は安くて機能十分、幅広い層におすすめな一台だ
2020年4月27日 06:00
iPhone SE(第2世代)が発売された。従来のiPhoneと比べ、かなり入手しやすい価格で、確かにハイスペックモデルと異なる点が多い。
たとえばカメラはシングル、ディスプレイのアスペクト比は16:9だ。だが、プロセッサは最新。FeliCaなどにも対応し、選んで困ることがない、堅実な製品というスペックだ。もし「iPhone 11シリーズはちょっと高い」あるいは「iPhone 11シリーズはちょっと大きすぎる」と感じているのであれば、特に刺さるモデルだろう。
iPhone SE(第2世代)の概要や過去モデルとのスペック比較は、別記事で解説している。キャリア版はこれから発売を迎えるということで、実機をもとにレビューしよう。
デザインはiPhone 8とほとんど同じ
iPhone SE(第2世代)のデザインは、iPhone 8とほとんど同じだ。サイズ感は4.7インチディスプレイ搭載のiPhone 6/6s/7/8と同じである。
細かいところで言うと、「背面のiPhoneロゴがなくなり、アップルロゴが中央に下りてきている」「白系のカラーバリエーションでも前面のベゼルが黒い」そして、 ボディカラーがブラック、ホワイト、(PRODUCT)REDの3種と言う違いがあるが、形状はほぼほぼ同じだ。
筆者個人の主観かもしれないが、より細かな点ではiPhone 8とiPhone SE(第2世代)では、フロントパネルと側面フレームの境目の手触りが若干違い、iPhone 8の方がギャップが大きいように感じる。ただ実際にノギスで厚みを測っても同じサイズで、ケースなどのアクセサリー類の互換性に影響が出るような違いはなさそうだが、フィルム類だけは対応状況を確認した方が良さそうだ。
iPhoneというとサードパーティによる豊富なアクセサリ製品群が大きな魅力のひとつだ。iPhone SE(第2世代)の場合、すでに存在するiPhone 8向けのアクセサリーを流用できそう。これもまた魅力と言えるだろう。
片手で使いやすい? ほどよいサイズ感
iPhone SE(第2世代)の大きさは、138.4×67.3×7.3mmで重さは148g。iPhone 8と同じだ。
世代 | 大きさ | 重さ |
iPhone SE(第1世代) | 123.8×58.6×7.6mm | 113g |
iPhone SE(第2世代) | 138.4×67.3×7.3mm | 148g |
iPhone 11 | 150.9×75.7×8.3mm | 194g |
iPhone 11 Pro | 144.0×71.4×8.1mm | 188g |
iPhone SE(第1世代)の123.8×58.6×7.6mm、113gよりは大きいが(重量比76%)、iPhone 11の150.9×75.7×8.3mm、194g(重量比131%)やiPhone 11 Proの144.0×71.4×8.1mm、188g(重量比127%)よりはかなり軽く感じられる。
iPhone 11シリーズなどは手が大きな方でも、片手で使うにあたってはたとえばスマホリングがないと危ういのではないだろうか。一方、iPhone SE(第2世代)の4.7インチディスプレイというサイズは、人によって感じ方が違うところだろうが、多くの方にとって扱いやすいサイズに思える。
4インチのiPhone SE(第1世代)は、いま触ると本当にコンパクトに感じられる。画面の隅まで指が届くので、片手で使うなら4インチの方が良い、とも思うのだが、その一方で最近のアプリやコンテンツは、メインストリームの大画面スマホを前提でデザインされるようになったようだ。大画面スマホの使い勝手に慣れていると、4インチは小さすぎるかな、と思う場面もある。そう言ったことを考えると、iPhone SE(第2世代)の4.7インチはコンパクトさと利便性のバランスが取れたサイズとも感じる。
ディスプレイサイズによる表示できる情報量の差については、以前の記事で細かく解説しているので、そちらも参照いただければと思う。
シングルカメラ、iPhone 8との差は小さく、iPhone 11との差も大きくない
カメラはスペック上ではiPhone 8とほぼ同等。背面側はシングル12メガピクセル、f/1.8で光学手ぶれ補正対応、前面側は7メガピクセルでf/2.2となっている。しかしプロセッサーが最新になったことで画像処理機能がアップし、「ポートレートモード」などに対応している。
iPhone SE(第2世代)の「ポートレートモード」は、iPhone XRのものと同じソフトウェア処理となり、人物として画像認識されるものに適用される。iPhone 11シリーズなどマルチカメラのiPhoneでは、食品や雑貨などでも背景をボカすことができ、そこが違いとなる。
シングルカメラのiPhone SE(第2世代)は、iPhone 11シリーズのような超広角撮影や光学望遠撮影ができない。望遠は、ある程度、デジタルズームでなんとかなる場面があるかもしれないが、超広角は大きな違いとい言えるだろう。
このほか、iPhone 11シリーズでサポートする暗所での撮影機能「ナイトモード」も、iPhone SE(第2世代)は非対応だ。iPhone 11シリーズの「ナイトモード」は、肉眼よりも明るく写るくらいとかなり高性能なので、それに対応していないのは少し残念なポイントだ。
ちなみにiPhone SE(第2世代)のカメラアプリは、iPhone 11シリーズなどと同じく、上方向へスワイプするとフィルターや撮影アスペクト比などの設定アイコンが表示されるものとなっている。iPhoneは原則的にiOSバージョンが同じなら、同じUI(ユーザーインターフェイス)となるが、iPhone 11シリーズとiPhone SE(第2世代)のカメラアプリは数少ない例外と言えるだろうか。と言っても大きな違いはない。
外出自粛の中だが、筆者がご近所での買い物ついでに撮影した作例を掲載する。比較対象はiPhone SE(第1世代)とiPhone 8、iPhone 11 Proだ。ちなみにこれらのモデルの画像解像度は全て同じ(4032×3024ピクセル)だ。
まず最初は明るい屋外。このくらいのシーンでも、iPhone SE(第1世代)だと暗い場所の描写力がちょっと悪く感じられる。
続いて渋谷川が暗渠から出てくる場所。こちらも暗い場所はiPhone SE(第1世代)だと弱く感じられる。一方でiPhone 11 Proだけ空が白飛びしておらず、一段階きれいに撮れている印象だ。
最後に照明を消した撮影ボックス内。こちらはナイトモード対応のiPhone 11 Proだけ飛び抜けて明るく写っているが、iPhone 8とiPhone SE(第2世代)も暗いながらもかなり頑張っている。
iPhone SE(第2世代)の写真画質を見ると、iPhone SE(第1世代)からは大きく進化しているが、ナイトモードなどを使わない限り、iPhone 11 Proとの差は小さいかな、という印象だ。しかしiPhone 8との差は小さく、むしろiPhone 8は3年前のモデルなのによくそこまできれいに撮れるな、と感心してしまう。
プロセッサパワーはiPhone 11シリーズと同等!
プロセッサーにはA13 Bionicを使っている。価格的に倍以上のiPhone 11 Proモデルとも同じというのは、けっこう凄いポイントだ。ベンチマークアプリ「Geekbench 5」によると、iPhone 11シリーズは4GB、iPhone SE(第2世代)は3GBとシステムメモリーに差があり、マルチコアのスコアには差が出ているが、シングルコアのスコアはほぼ同等となっている。
標準的なアプリを使うだけならば、iPhone SEでも重たさを感じる場面は少ない。差があるとすれば、一部のゲームなど“重ため”のアプリを使うときくらいだろう。しかしゲームはなるべく多くのプレーヤーにプレイしてもらうために、限られたスペックなスマートフォンでも動くようにデザインされることが多く、現時点でA13 Bionicの性能を100%求められる場面は少ないと思う。
将来に目を向けると、最新プロセッサーというのは大きなポイントとなる。これまでの歴史を踏まえると、iPhoneの場合、CPUの世代は「いつまでiOSのアップデートが提供されるか」という問題に直結する。過去の例では、iPhoneは発売から5〜6年目でiOSアップデートが終了するパターンが多い。実際にどうなるかはわからないが、iPhone SE(第2世代)の場合、プロセッサーは“2019年秋世代”。仮にそこから5年とすれば、2024年秋まで使い続けられる、と期待できる。
iPhoneはもともと長く使いやすいスマートフォンだが、比較的安価なiPhone SE(第2世代)でもその特長が失われていないというのは、かなり嬉しいポイントだ。この辺りのポイントについても、別の記事で解説しているので、細かくはそちらもご参照いただければと思う。
そのほかのスペックも最新仕様。「××ができない」で困ることはナシ
そのほかの細かいスペックもiPhone 11シリーズに近い最新スペックで、通信機能面では「ギガビット級LTE」や「Wi-Fi 6」、「eSIM」に対応している点は大きな特徴。LTEの対応バンドもiPhone 11シリーズと同等だ。たとえばeSIM対応は、海外で利用するとき、SIMカードを差し替えずに比較的安価なデータローミング回線を使えたりするのが便利。国内の通信サービスではまだまだiPhoneで使えるeSIMは限られるところだが、iPhone SE(第2世代)は今後の広がりにも対応できる一台と言えそうだ。
「FeliCa」や「防水」、「非接触充電」などにも対応する。Apple Payも使えるお店がすっかり増えてきているので、機能が省略されていない点は非常にありがたい。「防水」は慣れた人にとっても買い替えやすいポイントだろう。いま非防水端末を使うと雨や台所で故障させてしまいそうで怖い。
バッテリーの持ちに関しては、iPhone 8とほぼ同等で、iPhone 11など大型端末よりはやや弱い。スペック表の「ビデオ再生」の項目で比較すると、iPhone 8/SE(第2世代)は最大13時間に対し、iPhone 11は最大17時間、iPhone 11 Proは最大18時間だ。ここは本体サイズ=内蔵バッテリーの差が大きいのだろう。
iPhone 11シリーズと比較すると、顔認証のFace IDは搭載されず、代わりに指紋認証のTouch ID内蔵のホームボタンを搭載している。Touch IDは第2世代なので、iPhone SE(第1世代)やiPhone 6より前のモデルに比べると、より高速に認証される。
あとはiPhone 8などと異なり、感圧タッチの3D Touchには対応しないが、ほかの非対応端末同様、ほとんどの場合、長押し操作で代用できるので、あまり困ることはないと思う。
広い層におすすめできる、お買い得感の高いiPhone SE(第2世代)
iPhone SE(第2世代)のSIMフリー版の価格は、64GBモデルで4万4800円(税込で4万9280円)、128GBモデルで4万9800円(同5万4780円)、256GBで6万800円(同6万6880円)となっている。
iPhone SE(第2世代)のSIMフリー版は、すでに一部の家電量販店でも売られていて、在庫があれば、非常に購入しやすい環境だ。NTTドコモ、au、ソフトバンクのユーザーにとっては、機種購入にあたって、将来の返却(下取り)を含む“下取り割引”があり、そちらもメリットがあるだろうが、この価格ならばSIMフリー版を買うのも有力な選択肢だろう。すでにMVNOに移行済みのiPhoneユーザーにとっても、これを期にMVNOに移行するという人にとっても、SIMフリー版が購入しやすいというのはありがたいポイントだ。販売方法については別記事でも扱っているので、そちらも参照いただきたい。
これだけ安いのに、A13 Bionicなど最新スペックを搭載しているのは、やはり特筆すべきポイントだ。たとえば2019年春発売の「iPad(第7世代)」は、2016年秋登場のA10 Fusionを搭載していた。安価な分、CPUの世代から予測できる“使い続けられる期間”がおそらく短いだろうという気になる点があったが、iPhone SE(第2世代)はそう言った心配がない。
ほかの現行モデルと比較してみると、iPhone 11は64GBで7万4800円~、iPhone 11 Proは64GBで10万6800円~なので、それに比べると、iPhone SE(第2世代)はやはり安い。
iPhone 11とiPhone SE(第2世代)の主な違いは、「Face ID」「画面とサイズの大型化」と「デュアルカメラで超広角対応」あたり。カメラやディスプレイと言ったスマホの基本部分がiPhone 11では上位機種としての特徴だ。iPhone SE(第2世代)を選ぶか、iPhone 11を選ぶかは、この機能差に3万円を払えるか、という言い方もできる。
個人的には、毎日iPhoneを数時間も使うようなヘビーユーザーであれば、この3万円を払ってiPhone 11を選ぶべきだと思う。既存のiPhoneユーザーであれば、設定アプリ内の「スクリーンタイム」を確認してみよう。もし1日1時間以上といった人であれば、3万円の価格差くらいは元が取れるだろうから、iPhone 11を検討するべきだ。
しかしヘビーユーザーでも、超広角カメラやディスプレイに魅力を感じないのであれば、iPhone SE(第2世代)を選ぶ価値はあると思う。浮いた3万円でApple Watchなどアクセサリーを買った方が幸せになるかもしれない。
そこまでiPhoneを使っていない、あるいは初めてiPhoneを買うというのであれば、iPhone SE(第2世代)は最適なiPhoneだ。購入しやすい価格ながら、プロセッサーは最新世代でFeliCaなどにも対応し、「〇〇ができない」とか「2年後にはOSアプデがなくなって使えない」などと困ることがない。「とりあえず生ビール」の感覚で選んで良いと思う。とくに初心者で、家族や友人にiPhoneユーザーが多い場合は、使い方やおすすめアプリの情報交換がしやすいので、iPhone SE(第2世代)はかなりおすすめだ。