iPhone駆け込み寺
新しい「iPhone SE」、旧モデルのユーザーは買い替えをどうすべき?
2020年4月16日 13:38
アップルは新モデル「iPhone SE(第2世代)」を発表した。
2016年3月に発売されたiPhone SE(第1世代)の名前を受け継いでいるので、名前に聞き覚えがある人も多いことだろう。同じ“SE”ということで、「スタンダードモデルより若干小さくてお値段も安価」というコンセプトも受け継いでいるが、かつての「iPhone SE」のサイズやデザインはまったく別。スペック面で見ると、iPhone SE(第2世代)はiPhone 8のリファインモデルと言える。
iPhoneでモデル名の使い回しは珍しい。しかしアップルの他の製品ではよくあり、たとえばiPadは全ラインナップにおいて同じ名称を継承し、Macはもともと世代ごとでモデル名が変化しない。そのため、本誌を含むさまざまなメディアでは、(第X世代)(20XX年モデル)といった表記で世代を示していることが多い。
新しい「iPhone SE」のSIMフリーモデルの価格は、もっとも安い64GBモデルで4万4800円(税抜、以下同)、128GBモデルで4万9800円、256GBモデルで6万800円と、ほかのiPhoneに比べるとかなりお安い。2019年秋に登場した「iPhone 11」もコストパフォーマンスの高いモデルだが、iPhone SE(第2世代)の低価格にはかすんで見えてしまうくらいだ。
4インチの小型モデルを期待していた人にとっては肩透かしな「SE」と言えるかも知れないが、そうは言っても「iPhone 11はちょっと高くて買い換えたくないなぁ」と思っていた人にとっては、最良の選択肢となるモデルである。
まだ筆者も実機を入手していないが、この記事では発表スペックなどを元に、過去モデルと比較して買い換えをどう考えるべきか、解説していきたい。
デザインはiPhone 8をほぼ完全踏襲
iPhone SE(第2世代)のサイズやデザインは、iPhone 8をほぼ完全に踏襲している。細かく見るとカラーやロゴの位置が異なるが、スペック上のサイズや重量はまったく同じ、138.4×67.3×7.3mm、148gとなっている。
同じ4.7インチディスプレイ搭載のiPhone 6(129g)、iPhone 6s(143g)、iPhone 7(138g)と比べると、iPhone SE(第2世代)とiPhone 8はもっとも重たいモデルとなる。これは防水や非接触充電、3D Touchなどの仕様追加でだんだん重たくなってきた結果だろう。個人的にはもうちょっと軽量化して欲しかったところだ。
iPhone SE(第1世代)は123.8×58.6×7.6mm、113gで、比べるとかなり大型化している。しかしiPhone 11やiPhone 11 Proなどのモデルに比べるとかなりコンパクトで、筆者のようにiPhone 11のサイズに慣れていた人にとっては、手にした瞬間に「あれ、こんなに小さかったっけ?」と感じるだろう。
新「iPhone SE」では、カラーバリエーションがブラック、ホワイト、(PRODUCT)REDの3種類に刷新されている。iPhone 8はスペースグレイ、シルバー、ゴールドだった。
これまでホームボタンを搭載してきたiPhoneでは、背面が白系ならディスプレイ周りのベゼルも白パネルだったが(iPhone 3GSは白モデルも前面は黒)、今回のモデルは黒パネルに統一されている。「交換修理部品を1種類に統一して在庫管理を楽にする」という考え方があるかもしれないが、すでにiPhone 11シリーズなどFace ID搭載モデルのディスプレイ周りも黒であり、そこに統一したと見るべきかも知れない。個人的に画面は消灯時に真っ黒になるので、ベゼルが黒の方が良いとも思う。
背面デザインは一見するとiPhone 8と同じに見えるが、iPhoneロゴが廃止され、アップルロゴが本体中央にまで下がってきている。実はこれ、iPhone 11シリーズからの特徴でもあり、ここも新デザイン準拠というわけだ。
サイズなどはiPhone 8とiPhone SE(第2世代)で同じなので、ケースなどのアクセサリはほぼほぼ共有できると思われるが、ロゴの位置が違うというところだけは注意が必要だ。
ディスプレイはサイズ・解像度ともにiPhone 8と同じ
ディスプレイは4.7インチ、1334×750ピクセルとなっている。iPhoneのディスプレイの詳細な比較は、iPhone 11発表時の記事でもご紹介したので、ぜひそちらも参照いただきたい。iPhone SE(第2世代)のサイズ・解像度はiPhone 8とまったく同一なので、そこのあたりを読み替えていただければと思う。
ではその使い勝手を考えてみよう。
iPhone SE(初代)などの4インチディスプレイは、主観的な表現になるが、「適当に握っても画面最上段まで親指が届くサイズ感」と言えばよいだろうか。そしてiPhone SE(第2世代)など4.7インチのディスプレイであれば「親指を少し伸ばせば画面最上段まで届く。でも、左手で握っていると右上隅はタップしにくいサイズ感」といった差になるだろう。
ちなみに5.5インチ以上となると、「片手で画面最上部タップは怖く感じるサイズ感」だ。画面上部をタップする瞬間だけ本体を握らず、手のひらに載せる形で支える感じで、振動や姿勢によって落としてしまいそうになる。
落としてしまうと画面を割って修理費3万400円コース(iPhone 11 Pro/XS/Xの場合)になりがちなので、5.5インチ以上ではスマホリングなど落下の抑止を期待できるアクセサリーの使用をおすすめしたい。
ちなみにiPhone 8は感圧タッチの「3D Touch」に対応していたが、iPhone SE(第2世代)では「3D Touch」は省かれている。これもiPhone 11シリーズに合わせた形だ。
顔認証のFace IDではなく指紋認証のTouch ID
iPhone SE(第2世代)は指紋認証センサのTouch IDを内蔵したホームボタンを搭載する。iPhone伝統と格式のホームボタンだ。
個人的にはiPhone X以降、Face IDを利用しており、慣れた今となっては、Face IDの方が速く便利だと感じる。ただ、Face IDへの変更にあわせ操作もいろいろ変更されているので、どうしても馴染めないという人にはホームボタンの方が嬉しいだろう。
さらにマスクが必須となる現在、ホームボタンとTouch IDの方が楽、と評価する向きもあるはずだ。「アタシはアイドルだからCOVID-19が終息してもマスク着用しないと外出できない」とか「業務の都合でマスクをしないとダメ」とか「拙者、忍者ですので」とかであれば、なおさらiPhone SE(第2世代)はオススメだ。
ちなみにFace IDのiPhoneのインカメラは、立体形状を認識できるという仕様から、Vtuberアバターの表情キャプチャーに使えるという特徴もある。そういったアプリを使いたいのであれば、iPhone X以降を選んだほうがよいだろう。
プロセッサはiPhone 11と同じA13 Bionic
iPhone SE(第2世代)はCPU(プロセッサー)にiPhone 11シリーズと同等の「A13 Bionic」を搭載している。半年前の「iPhone 11」と同じということだが、価格的に2倍のハイスペックモデルの「iPhone 11 Pro」とも同じなわけで、なかなか贅沢な仕様となっている。
プロセッサーの性能比較については、これもiPhone 11発表時の記事を参照いただきたい。
記事執筆時、iPhone 11シリーズは未入手で、ベンチマークスコアは未記入だが、その際スペックから予測した「1330」というスコアは、実測スコアとほぼ同じだった。そのため、そちらの記事中の「スコア比」はほぼ正確な数字となっている。
シングルスコアを過去モデルと比較すると、iPhone 8からは約1.5倍に高速化している。iPhone 7と比較しても約1.8倍と、2倍に届いていない。しかしiPhone SE(第1世代)やiPhone 6sなどのA9チップから比較すると、スコアは2.5倍以上となっている。iPhone SE(第1世代)やiPhone 6sは「iOS 13」の最下限モデルでもあり、今後のiOSのバージョンアップでフォローされるかどうか、すでにギリギリ感があるモデルでもある。
カメラはA13 Bionicによる新機能に対応、他のスペックはiPhone 8と差分小さく
そのほかのスペックは、iPhone 8とほぼ同等となる。細かいところはアップル公式サイト上の比較ページなどを参照していただきたいが、プロセッサー以外のスペックの違いはかなり少ない。
とはいえカメラの解像度などはiPhone 8などと同じで、シングルカメラ構成ながら、ポートレートモードの背景ボケ効果や照明効果、シャッターボタン長押しでの動画撮影(QuickTake)など、A13 Bionic由来の新機能に対応している。
通信機能面も最新の仕様へ刷新されている。とくに面白いのはeSIMを内蔵したことだろう。従来のSIMに加え、eSIMの契約を追加できるようになった。国内では、IIJmioなどのeSIMで安価なギガ(通信量)を買ってメイン回線のギガを節約したりできる。海外に行くときも便利なので、eSIM搭載はけっこう大きい変化だ。
あとはWi-Fi 6対応になったほか、4Gも「ギガビット級LTE」となっている。対応バンドもiPhone 11シリーズと同等のようだ。しかしiPhone 11シリーズが搭載している「空間認識のための超広帯域チップ」は搭載しない。
そしてFeliCa対応のApple Pay、防水、非接触充電にも対応する。ちなみにiPhone 11シリーズではIP68の水深2m(Proモデルは4m)と耐水性能が強化されているが、iPhone SE(第2世代)の耐水性能はiPhone 8などと同じIP67の水深1mまでとなっている。
充電・データ端子はこちらも伝統のLightning。イヤホン端子は搭載しない。このあたりのiPhone 8と変わりはない。
iPhone 6sやiPhone SE(第1世代)からの買い換えに最適
「オレは買い換えるべきなのか?」を気にされている読者も多いことと思う。
iPhone SE(第2世代)は安価ながらプロセッサーは最新で、コストを気にしている人には自信を持ってオススメできるモデルだ。iPhoneの今後のロードマップがどうなるかはわからないが、例年通りの進化であれば、今秋には7.5万円以上のスタンダード~ハイスペックのモデルがラインナップされると予想される。安くてそこそこ小さなiPhoneを求めるなら、少なくともこの1年間は、iPhone SE(第2世代)が唯一の選択肢になると思う。
どのモデルからの買い換えがオススメかというと、まずiPhone 6sや、iPhone SE(第1世代)はiOS 13のサポート下限でもあるので、買い換えタイミングである。秋まで待っても良いが、ハイスペックモデルでなくともよい人にとっては、すぐに手を出してもいいだろう。iPhone 6sより古いモデルは当然、買い換え推奨だ。
iPhone 7の人は?
「iPhone 7」のユーザーにとってはどうだろうか。iPhone 7は防水とFeliCaを搭載し、かつ軽量薄型なので、個人的にはかなり良いモデルだと思っている。
今秋登場するであろう次期iOS次第でもあるが、もう少し長く使える人もいるのではないだろうか。ただ、プロセッサーのスペックで見ると、1.8倍というのは、体感できるレベルで高速化しているはず。普段使っているアプリでストレスを覚えているのであれば、買い換えを検討するべきだろう。
iPhone 8はまだまだ使える?
「iPhone 8」は、いわば現役の機種のひとつで、今回発表された「iPhone SE」(第2世代)への買い替えは、あまり急がずとも良さそうだ。
もしeSIMなど使ってみたい新機能があったり、ゲームなど高負荷なアプリを多用したりするといったこだわりの理由があれば、もちろん新しい「iPhone SE」は有力な選択肢だ。ただ、現在、大きな不満がないなら、そこまで慌てる必要はない。
とはいえ、今使っている「iPhone 8」がほぼ傷なしといった状態であれば、中古買取店に持ち込むと、2万円くらいで買い取ってもらえることもある。そうした“軍資金”があれば、買い換えも十分視野に入りそうだ。
iPhone Xユーザーなら
「iPhone X」は、プロセッサーがiPhone 8と同じA11チップセット。先述したプロセッサーのスペック比較記事でもご紹介したとおり、iPhone Xと新しい「iPhone SE」の差は、約1.45倍。恩恵はあるだろうが、焦らずともよさそうだ。さらにiPhone XS/XR/11シリーズからとなるとなおさらである。
しかし「1年以上使ってもFace IDにはまったく馴染めなかった!」というのであれば、買い換えもアリだと思う。iPhoneの場合、いわゆるリセールバリューが一定程度あり、傷が少なければ中古でイイ価格で売れる。買い換えの原資どころかモデルや状態によってはプラスになることすらあり得そうだ。
あとは「バッテリの持ちが悪くなったから買い換えたい」や「画面が割れたから買い換えたい」という人もよく見かけるが、そうした人はまず修理を検討するべきだ。iPhone 6s/SE以前のモデルなら、修理せずに買い換えても良いが、iPhone 7以降で故障劣化以外に不満がないなら、修理して使った方が安上がりになりやすい。このあたりについては別記事でも解説しているので、ゼヒそちらも参照いただきたい。
端末代金だけではなく、補償面のコストも、チェックしておきたいポイントだ。
新しい「iPhone SE」の修理代金は、まだ正式には発表されていない。ただ、通例からすると、iPhone 11シリーズやXシリーズに比べ、画面修理代金も安くなると予想される。たとえば正規の画面修理料金、iPhone 11 Proは3万400円だが、iPhone 6s/7/8と同等なら1万6400円だ。同サイズで3D TouchのないiPhone 6と同じ14500円となる可能性もある。Apple Care+の価格もiPhone 11 Proの半額くらいになっている。壊さないよう使いたいのはもちろんだが、万が一の備えも心に留めておくとよいかもしれない。