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新大学生・新社会人にお伝えしたい「パソコンを買う前に知っておきたい基礎知識」

 この春から、新大学生、新社会人となるみなさんの中には、新生活に備えてパソコン(PC)を購入しようと考えている人も多いのではないでしょうか。

 大学生活や社会人生活において、PCはスマホ同様に、様々な場面で活躍してくれる非常に重要なデバイスです。

家電量販店にずらりと並ぶ(写真はヨドバシカメラ新宿西口本店)

 ただ、これまでスマホには慣れ親しんでいても、PCに触れたことのない人にとっては、どういった基準でPCを選べばいいのか、よくわからないと思います。

 そこで本稿では、スマホネイティブな人に向けた、PCを買う前に知っておきたい基礎知識を紹介しようと思います。

WindowsとMac、どっちを選ぶべきか

 現在市販されているPCは、OSにWindows 11を採用する「Windows PC」と、OSにmacOSを採用する「Mac」で大多数が占められています。

 スマホの「Androidスマホ」と「iPhone」に近い構造と考えるとわかりやすいかもしれません。通常PCを購入する場合には、Windows PCまたはMacのどちらかを選択すると考えて差し支えありません。

 では、そのどちらを選べばいいのでしょうか。

 Windows PCは、日本はもちろん、全世界で圧倒的なシェアを誇っています。特にビジネスシーンで利用されるPCは、そのほとんどがWindows PCです。そのため、新社会人はもちろん、将来を見据えて新大学生もPCを買うならWindows PCを買っておいた方がいい、と言われることが多いのは事実です。

Windows PCは世界的に圧倒的なシェアを誇る。大学や企業が利用するPCもWindows PCが多い
Macは映像関係をはじめクリエイティブ用途での利用が多い

 とはいえ、Macが広く使われている大学や業種も存在します。もしそういった大学や業種に進む人がWindows PCを手に入れた場合、双方のPCを使い分けるのに苦労する可能性が高くなります。

 それは、WindowsとMacの間でUIや基本的な操作方法が大きく異なっているからです。

 普段iPhoneを使っている人が、Androidスマホを渡されても操作に戸惑う(逆も同じ)ことが多いと思いますが、それはPCにおいても同様です。ですので、これから進む大学や仕事で使われるPCと同じOSを選択するのが無難です。

Windowsの最新バージョン「Windows 11」
こちらは「macOS」。Windows 11とは見た目や操作性にかなり違いがある

 大学においては、推奨PCが示されている場合が多いと思いますので、そちらをチェックし、推奨PCから選択するのがいいでしょう。

 新社会人の場合は、仕事で使うPCがどういったものか聞いていると思いますので、それに合わせて選択すればいいでしょう。

 ちなみに、OSが違うといっても、できることにそれほど大きな違いはありません。専門性の強いアプリなどで動作するOSが限定されることもありますが、大学生活や社会人生活で利用する一般的なアプリや、プライベートで利用するゲームアプリなどのほとんどはWindows/macOSのどちらにも用意されます。

3月8日発売の「MacBook Air」

 そのため、それほど深刻に考えなくても大丈夫です。大学生活や仕事とプライベートは分けたい、またはどちらのOSも扱えるようになりたいと考えているなら、あえて推奨と異なるOSのPCを選択しても問題はないでしょう。

PCの性能は、搭載するプロセッサーの種類で決まる

 OSの次にチェックすべき部分は、性能面です。PCの性能は、搭載するプロセッサーの種類でほぼ決まります。

 現在市販されているPCに搭載されるプロセッサーは、Intel製とAMD製、Apple製でほとんどが占められます。Intel製とAMD製のプロセッサーは、主にWindows PCに搭載されます。それに対しApple製のプロセッサーはMacにのみ搭載されます。

 それらプロセッサーの性能を決めるのは、CPUコアの搭載数や動作周波数など、様々な要素がありますが、PC初心者にとっては非常にわかりづらいものです。

 ただ実際には、プロセッサーのブランド名や型番である程度判断が可能です。ここでは細かな説明は省きますが、基本的にIntel製とAMD製のプロセッサーは(例外もありますが)、”ブランド名に付けられている数字が大きいほど性能が優れる”と考えてほぼ差し支えありません。

Intel製プロセッサー

 Intel製プロセッサーには、「Core Ultra」、「Core」、「Core i」などのブランド名があります。

 また、ブランド名に加えて、数字とアルファベットを組み合わせた「プロセッサーナンバー」が付けられています。そして、このブランド名とプロセッサーナンバーである程度性能が把握できます。

 まずブランド名ですが、現行製品としては「Core Ultra」、「Core」および「Core i」、「Intel Processor」があります。

 旧世代の製品では低価格なPCに搭載されることの多い「Pentium」や「Celeron」というブランドもありましたが、現行製品では廃止され存在しません。位置付け的にはCore Ultraが最上位で、次いでCore/Core i、最下位がIntel Processorとなり、位置付けの高いブランドほど性能が優れます。

 また、ブランドに続いて3/5/7/9などの1桁の数字が付く場合があります。たとえばCore Ultra は5/7/9、Core/Core iには3/5/7/9のいずれかの数字が付けられますが、こちらは数字が大きいほど性能が優れます。たとえばCore Ultra 5とCore Ultra 7ではCore Ultra 7のほうが性能が優れます。

現行のIntel製プロセッサーでは、Core Ultra>Core/Core i>Intel Processorの順に高性能、またブランド名に続く数字が大きいほど高性能、と考えてほぼ問題ない

 そして、ブランド名に続いて3~4桁の数字とアルファベットを組み合わせた数字が続きます。そちらも細かな法則はありますが、基本的には数字が大きいほど、またアルファベットはUよりHのほうが高性能となります。

 たとえば、「Core Ultra 5 155H」と「Core Ultra 7 165H」を比べた場合には、最後のアルファベットがどちらもHですので、数字の大きいCore Ultra 7 165Hのほうが性能が優れると判断できます。

 それに対し「Core Ultra 5 135H」と「Core Ultra 135U」では、数字は同じですがアルファベットのHとUの違いから、Core Ultra 5 135Hのほうが性能が優れると判断できます。

Intelの最上位ブランド「Core Ultra」の製品名命名基準。基本的には上の図にある”Brand Label”と”SKU #”の数字が大きいほど高性能、また”Suffix”はUよりHが高性能、と考えればいい

AMD製プロセッサー

 AMD製プロセッサーの場合は、基本的に「Ryzen」というブランド名を押さえておけば大丈夫です。

 そして、ブランド名のRyzenに続いて、3/5/7/9と数字1桁の型番に加え、数字4桁にU/HSといったアルファベットを組み合わせた「モデルナンバー」が付けられています。そして、基本的にモデルナンバーの数字が大きいほど性能が優れます。

 たとえば、Ryzenシリーズには「Ryzen 3」「Ryzen 5」「Ryzen 7」「Ryzen 9」の4種類の型番が存在しますが、数字が大きいほど上位モデルとなり、性能も優れます。

AMD製プロセッサーとして中心的な存在の「Ryzen」は、Ryzen 3<Ryzen 5<Ryzen 7<Ryzen 9と型番の数字が大きくなるほど高性能となる

 また、それに続く4桁の数字とアルファベットで構成されるモデルナンバーには明確な意味が設定されています。

 細かな説明は省きますが、4桁目が投入された年を示します(7が2023年、8が2024年と、数字が大きいほど新しい年を意味します)が、新しいものほど性能が優れますので、4桁目の数字が大きいほど性能が優れることになります。

 同様に、3~1桁目についても数字が大きいほど優れたモデルであることを示します。アルファベットも性能を示す指標で、基本的にe<C<U<HS<HXの順に性能が優れます。

 たとえば「Ryzen 5 8640HS」と「Ryzen 7 8840HS」を比べた場合には、最後のアルファベットがどちらもHSですので、数字の大きいRyzen 7 8840HSのほうが性能が優れると判断できます。

 また、「Ryzen 5 8640U」と「Ryzen 5 8640HS」では、数字は同じですが、最後のアルファベットの違いからRyzen 5 8640HSのほうが性能が優れると判断できるわけです。

Ryzenのモデルナンバーにはこのような意味があるが、基本的には数字が大いほど、アルファベットはe<C<U<HS<HXの順に性能が優れる

Apple製プロセッサー

 Apple製プロセッサーは比較的単純です。Apple製プロセッサーには、「M1」「M2」「M3」といったブランド名が付けられています。

 そのブランド名の数字が大きいほど世代の新しいプロセッサーであることを示すとともに、性能も世代が新しいほど優れます。

 また、そのブランド名に続いて「Pro」「Max」「Ultra」といったサブブランドが加えられたものが存在します。同じブランドのプロセッサーの場合、「無印<Pro<Max<Ultra」の順に性能が優れます。

 IntelやAMDのプロセッサーに比べてモデル数が少ないこともあって、性能の違いも比較的わかりやすいと言っていいでしょう。

Apple製プロセッサーは、M1<M2<M3と世代が新しいほど高性能で、同世代では無印<Pro<Max<Ultraの順に高性能となる

予算が許す範囲内で最新かつ上位のプロセッサーほどおすすめ

 Macを選ぶ場合には、搭載プロセッサーは基本的にApple製のみですので、選び方はそれほど難しくはないでしょう。

 それに対しWindows PCでは、Intel製とAMD製のプロセッサーを搭載するPCが存在しますので、そのどちらを選ぶべきか迷うかもしれません。

 ただ、どちらのプロセッサーを選んでも、基本的にアプリは問題なく動作しますし、加えられている数字が似ていれば、性能もほぼ同等と考えて問題ありません。

 ちなみに、(例外もありますが)Intel製プロセッサーよりAMDプロセッサーを搭載するPCの方が、性能がほぼ同じでも比較的安価な場合が多くなっています。そういう意味では、AMD製プロセッサー搭載PCの方がコストパフォーマンスに優れる場合が多いと考えていいでしょう。

 そして、全てのプロセッサーに当てはまることですが、基本的に世代が新しいほど性能や機能が向上します。つまり、これからPCを購入するのであれば、最新世代のプロセッサー、そしてより上位のプロセッサーを搭載するPCを選択するのがベストです。

 その方が、より快適に作業をこなせるのはもちろん、より長くPCを使えることに繋がります。

 同時に、今話題の「AI」への対応も見逃せない部分です。AMD、Appleのプロセッサーは1~2世代前から、Intelは最新世代のCore UltraにAI処理に特化した演算機能を搭載しています。

 現時点ではまだ対応アプリは少ないですし、AI処理機能を搭載していないとAI処理が行えないわけではありません。

 ただ、今後様々なアプリにAI機能が搭載されていく予定で、プロセッサーがAI処理機能を搭載していれば、より高速にAI処理をこなせます。将来性という意味でも、最新のAI対応PCを選択することは大きなポイントとなります。

 とはいえ、最新世代のプロセッサーは搭載製品が高価となります。もしコストを抑えたいのであれば、1~2世代前のプロセッサーを搭載する製品を選択するのもいいでしょう。その場合には、可能な限り上位プロセッサーの選択をおすすめします。

大作ゲームを本気で楽しみたいならグラフィックス機能もチェック

 現在のプロセッサーは、その多くにグラフィックス機能を内蔵しています。そのため、「GPU」と呼ばれるグラフィックス処理用プロセッサーを搭載せずとも、画面描画が行えるようになっています。

 このプロセッサー内蔵グラフィックス機能も年々進化しています。最新プロセッサーに内蔵されるグラフィックス機能では、3Dゲームもまずまず快適にプレイできるほどの3D描画能力が備わっていますので、仕事や課題の合間にちょっとゲームを楽しみたい、という場合でも十分に対応可能です。

 とはいえ、いわゆる「eスポーツ」で採用されるような「AAAタイトル」と呼ばれる大作ゲームを本気でプレイしたいというのであれば、高性能プロセッサーだけでなく高性能なGPUやビデオカードを搭載するPCが必須です。

 ただし、GPUやビデオカードを搭載するPCは、ゲーミングPCやクリエイター向けPCが中心となりますので、価格が一気に跳ね上がります。もちろん、本気でeスポーツに向き合いたいというのであれば、そのコストをケチることなく、プロセッサー、GPU/ビデオカードともに上位モデルを搭載するPCを選ぶようにしましょう。

大作ゲームを本気でプレイするなら高性能GPUやビデオカードを搭載するPCが必須だ

メモリは8GB、内蔵ストレージは256GB SSDが必要最低限と考えよう

 プロセッサーに次いで重要なポイントが、搭載するメモリ容量です。PCでは、いくら高性能なプロセッサーを搭載していても、メモリ容量が少ないとOSやアプリの動作が遅くなってしまい、せっかくのプロセッサーの性能を最大限活用できないうえに、快適な作業も望めなくなってしまいます。

 現在のPCでは、8GBのメモリ搭載がほぼ標準となっています。ただし、Windows PCでは、8GBのメモリは事実上、必要最低限です。複数のアプリを同時に利用すると、メモリ不足で動作が遅くなる可能性が高くなりますので、可能な限りメモリは16GB以上搭載すべきでしょう。

 また、動画や写真の編集作業を行いたいというのであれば、16GBは最小限で、32GBのメモリ搭載も視野に入れましょう。

 それに対しMacでは、8GBでも十分快適に利用できるとされています。Windowsに比べてmacOSはメモリの扱い方が優れていて、実際に8GBでも十分快適に利用できます。

 とはいえ、Macでもメモリを多く搭載するほど動作は快適になりますので、予算に余裕があるなら16GB、動画や写真の編集作業を行うなら32GBのメモリ搭載を視野に入れるべきでしょう。

 Windows PC、Macともに、メモリを多く搭載するほど動作が快適になり、より長くPCを活用できることになりますので、メモリは可能な限り多く搭載するのがおすすめです。

メモリ容量は、Windows PC、Macともに8GBが必要最低限。できれば16GB以上の搭載がおすすめ

 次に内蔵ストレージですが、現在のPCではSSDを搭載するのが標準です。このSSDにはいくつか仕様の違いがありますが、「NVMe」や「PCIe」という表記が付いていれば問題ありません。

 「SATA」という表記のSSDは速度がやや遅いですが、体感的には大幅に遅いと感じることはありません。そして、HDDしか搭載しないPCは、わかっていて購入するのであればいいですが、通常は絶対にやめておきましょう。

 SSDの容量は、256GB(250GB)を必要最低限と考えて、予算と相談しながら容量を決めればいいでしょう。コストと容量のバランスとしておすすめは512GBですが、通常256GBあれば必要十分のアプリやデータを保存できるはずです。

 PCを使う期間が長くなれば、蓄積されるデータが増えて空き容量が足りなくなることもありますが、その場合には外付けのHDDやSSDを用意してそちらにデータを移せば、容量不足を解消できます。

 内蔵ストレージは容量が多いほど安心ですが、無理に大容量SSDの搭載にコストをかけるぐらいなら、そのコストをメモリ増量に割り振るべきでしょう。

内蔵ストレージはSSDが基本で、「NVMe」や「PCIe」という表記を確認。容量は256GBが最低限、512GB以上の搭載がおすすめだ

保証、サポートも重要な要素

 PCを選ぶ上で、スペックと同じように重要な要素が保証やサポートです。PC初心者にとって、PCの不具合に対処するのは非常に難しいですし、手厚い保証やサポートが整っていれば、安心してPCを使えると言えます。

 まずチェックしたいのは、保証の範囲です。通常のPCの保証としては、1年間の保証の付帯が基本です。ただその保証は、初期不良であったり、自然故障にしか対応しないことがほとんどです。

 デスクトップPCでは、外因による故障は比較的少ないですが、持ち運んで利用するノートPCでは、不注意で落下させて故障するといったことが多くあります。そういった故障には標準付帯の保証では対応しないことがほとんどです。

 ただ、有償保証を追加すれば、不注意の落下などにによる故障にも無償(または少ない費用)で修理してもらえる場合があります。

 追加のコストがかかるため、多くの人はそういった有償保証を追加しないことが多いですが、PCは高価な商品ということもありますので、有償保証の追加もできればおすすめしたいです。

落下や水をこぼしたりして故障した場合でも安価に修理してもらえる有償の追加保証は、落下の危険性が高いノートPCで特におすすめ

 また、PCやアプリの操作をサポートするサービスは、以前は電話サポートが多かったのに対して、最近はPCを遠隔で操作しながらサポートしてもらえる「遠隔サポート」の提供が増えています。

 遠隔から担当者がPCを操作してトラブル解決や操作のサポートを行ってもらえますので、なにかと安心できます。

 ただし、そういった遠隔サポートも基本的には有償での提供となります。それも月額での料金が必要となる場合が多くなっています。

 ですので、使い始めの頃だけ利用して、ある程度操作に慣れたら遠隔サポートは解約する、といった使い方がおすすめです。

 これら保証やサポートについては、追加の費用がかかるということもありますし、絶対に必要とは言いません。ただ、トラブル時の不安を解消するという意味では、非常に有用です。予算にある程度余裕があるなら、積極的に活用することをおすすめします。