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バーゼルワールドを見て歩き~FossilがAndroid Wear第二世代モデル
2016年はグループの8ブランドからウェアラブル製品がデビュー
(2016/3/28 12:52)
AppleとGoogleが相次いで参入したことで注目が高まっているスマートウォッチ。時計業界サイドでも、スマートデバイスとの連携は無視できない状況になっており、2015年からは高級腕時計の展示会においても「Connected」がひとつのキーワードになりつつある。時計業界にとっての黒船であるスマートウォッチの登場を時計業界がどう捉えているのかを確かめるため、宝飾品と時計の見本市「Basel World」が開催されるバーゼルへと足を運んだ(第1回レポートはコチラ)。
Fossil
アメリカンブランドの「Fossil(フォッシル)」は、Basel Worldそのものには出展しなかったものの、会場のMesse Baselに隣接する自社の欧州本社でプライベートイベントを開催した。プライベートイベントに出展されたのは、Fossilをはじめとして、同社がライセンス契約に基づいて手がけるDieselやEmporio Armani、Michael Korsなどの著名ブランド。同社が手がける全17ブランドのなかから、2016年中には8ブランドの100モデル以上で、何らかのウェアラブル製品の発表や出荷を予定している。
Fossilブランドからは2015年秋から順次出荷が始まっているFossil Qシリーズの展示があった。Qは同社がウェアラブル製品に付けているシリーズ名称。新製品となるのは、Android Wearを搭載する同社の第二世代モデルで「Fossil Q Wander」と「Fossil Q Marshal」。アナログ時計にスマートウォッチの機能を加えた製品も同様に第二世代となり、「Fassil Q Tailor」と「Fossil Q Nate」を出荷予定。いずれも2016年8月以降の出荷を目指している。スペックの詳細は現時点では非公開で、Android Wearの製品は本体サイズがそれぞれ44mm径と46mm径になること、従来モデルと同様にワイヤレス充電に対応することなどが明らかにされている。
ブースに展示されていたのは現行ラインナップが中心で、Android Wearを搭載する「Fossil Q Founder」、クオーツ式ムーヴメントにアクティビティトラッカーを搭載する「Q Grant」、そしてアクティビティトラッカーのみのリストバンドモデル「Q Reveler」と「Q Dreamer」が展示された。
発売中の「Fossil Q Founder」は同社として初めてAndroid Wearを採用したスマートウォッチで、2015年末から出荷が開始されている。プロセッサはIntel製を採用しており、ワイヤレス充電に対応、本体背面にはIntelロゴも記載されている。防水防塵はIP67に対応、無線機能はBluetooth 4.1 LEとIEEE802.11b/g/nをサポートする。価格は275ドル(レザーバンド)か295ドル(ステンレスバンド)だが、日本国内向けの正規販売は行われていない。恐らく、無線の認証関連がネックになっていると想像できる。
言うまでもなく電波を送受信する機器は国内向けの認証が必要だ。日本法人や正規代理店などの企業の立場にたてば、国内の認証もないままに製品を販売するわけにはいかないのは道理である。認証を通すにもそれなりのコストがかかる。コストは結果として販売価格に転嫁されるか、あるいは企業側が被るしかない。例えばApple Watchのように十分なボリュームが見込めるのであれば、当然のように一台あたりの追加コストは下がる。
しかし腕時計の世界では、全世界数千本の「限定モデル」も少なくない。例えば昨年販売されたMONDAINE(モンディーン)のスマートウォッチ「Helvetica No.1 Smart」は1957本限定だ。日本であればそれなりの割り当て数も確保は可能だろうが、認証のコストとまだ市場が十分に立ち上がっていないスマートウォッチのサポートコストを考えると、MONDINEに限らず海外ブランドの日本法人や正規販売代理店が二の足を踏む事情も理解できる。言い換えれば、市場が成長すれば、現時点では指をくわえてみているしかない海外ブランドの製品も、国内で入手可能になる可能性が高い。そのためにも積極的に紹介を続けていきたい。
「Q Grant」はクオーツ式のアナログなウォッチフェイスだが、Q Founderと同様にIntel製のプロセッサを搭載している。液晶ディスプレイではないので、通知機能はLEDの点滅やバイブレーションによる最小限に抑えられているが、アクティビティトラッキングの部分は同等で、Google FitやJawbone UPといった他のヘルスケアプラットホームとも連携が可能だ。Q Grantもワイヤレス充電に対応している。価格はレザーバンドの175ドルからステンレスバンドの195ドルまで。
リストバンドの「Q Reveler」と「Q Dreamer」は、ウォッチフェイスのないリストバンドスタイル。スマートフォンとはBluetoothで接続する。これらリストバンドを含めたFossilのQシリーズはいずれも同社製の「Q APP」と連携して設定を行う。Fossil Qのラインナップに対応するスマートフォンはAndroidあるいはiPhoneで、前者はAndroid 4.4以降を、後者はiPhone 5以降でiOS 8.2以降が動作条件となっている。
冒頭に紹介したように、Fossilはグループ全体として2016年には8ブランドからウェアラブル製品を出荷することを明らかにしている。背景となっているのは、2015年11月に発表された「Misfit」の買収だ。買収額は2億6000万ドル(約320億円)と報じられている。日本国内でもアクティビティトラッカーを販売しているMisfitも、Fossilのグループブランドとして、このプライベートイベントにブースを構えていた。年頭のCESにおいて発表した「Ray」などが展示されていたが、このタイミングでの製品発表はなかった。一方で明らかにRayのOEMであろうリストバンド「Q Motion」はFossilブランドで発表されている。
スマートウォッチ部門の責任者によれば、Misfitの買収は主にテクノロジーを目的とすることがコメントされている。買収からまだ間もないため、現時点で手に入る製品にMisfitの技術が反映されている可能性は低いものの、2016年中に登場するとされるグループのブランドの製品には、技術が投入されていくことは想像に難くない。ただ、その時にMisfitのブランドがどのような形で継続していくのかは不明瞭だ。一方で、2016年5月頃をメドにブランドの責任者が来日して、日本におけるMisfitの戦略を明らかにするとしている。
NIXON
本誌でも紹介されている(ニュース記事)とおり、同じくアメリカンブランドのNIXON(ニクソン)も、Android Wearを搭載するスマートウォッチ「The Mission」をBasel Worldにあわせて発表している。
既存のAndroid Wear搭載モデルにない特徴は、スキーやスノボ、サーフィンといったアクションスポーツをターゲットにした製品になっていること。これはハード面とソフト面の双方で実現されている。ケースはポリカーボネート製で、ベゼルはステンレススチール、風防はコーニングのGorilla Glassを採用する。10気圧防水機能を備え、高い耐久性を持つタフネスウォッチとなっている。
ソフトウェア面ではAndroid Wearの標準アプリケーションに加えて、自社製の「The Mission App」をインストール。サーフィンおよびゲレンデスポーツ向けのそれぞれの情報サイト「Surfline」と「SnoCountry」を参照して、波風の状態や積雪情報などをウォッチフェイスへと表示する。さらにアクションスポーツ向けのトラッキングサイト「Trace」と提携して、本体の温度計/気圧計/高度計を組み合わせた、スポーツ時の活動量をより正確に記録できるスポーツに特化したモデルであるのが特徴だ。
発売は2016年秋を予定。そして、「The Mission」はクアルコムが初めてウェアラブル専用に用意するプラットフォーム「Snapdragon Wear 2100」を採用するというのも注目点のひとつ。これまでのクアルコム製SoCでウェアラブルにも採用されてきたSnapdragon 400に対して、同社の公称値ながら消費電力を25%減らし、パッケージも30%小型化したという。
GUESS
カジュアルブランドのGUESS(ゲス)も、スマートウォッチの展示を行っている。こちらは既存の製品で、日本市場でも販売されている。特徴は通知を表示するために、一行分の有機EL表示がついているところ。SMSやメールの件名などを電光掲示板のように表示できる。バッテリーは二系統で、アナログの時計表示部分はボタン型電池を使用して約二年間駆動する。スマートウォッチの機能はmicro USB経由での充電が必要で、使用状態にもよるがフル充電から3~5日程度の動作が行えるとしている。
これらのアメリカンブランドの魅力は価格面にもある。Android Wear採用モデルで300ドル~400ドル程度。アナログの時間表示にスマートウォッチ機能を組み合わせたモデルでは200ドル前後から手に入る。カジュアルに使いこなすには無難な値段だ。