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NTTドコモが総合防災訓練を開催、小型の移動基地局車やStarlinkなど能登地震の教訓を生かした取り組みを公開

 NTTドコモは22日、都内でNTTドコモグループ総合防災訓練を実施した。首都直下地震を想定した訓練で、会場には移動基地局車やドコモと連携する企業の車両、施設などが展示された。

軽自動車の移動基地局

 2024年に発生した能登半島地震では、道路を土砂や倒木などが覆ってしまい、被災した基地局まで大型車両の進入が困難となる場面があった。

 ドコモでは、細い場所でも入り込めるよう、これまでの移動基地局車よりも一回り小さい軽自動車をベースにした移動基地局車を導入した。搭載する機器を一部省略しつつも、発電機や無線機など基地局運営に必要な機器を搭載しており、上部にはバックボーンとなる衛星通信「Starlink」のアンテナを載せている。運用時は、携帯電話に向けて電波を発射するアンテナを展開し、従来の移動基地局車と同じ通信サービスを提供する。

手前が小型の移動基地局車、隣の中型、大型のものと比べて一回り小さい
小回りが利くため、山間部や道路に障害物があっても進入しやすい

 また、移動電源車と可搬型のStarlinkアンテナを使い、基地局を復旧する訓練も行われた。基地局自体の設備は利用できても、停電していたり光ファイバーケーブルが断線していたりする時、基地局のアンテナなどを活用し、外部から電源とバックボーンを用意して復旧を図るもの。訓練では、移動基地局車と可搬型のStarlinkアンテナが用意され、復旧する流れを確認した。

移動電源車
停電時を想定し、移動電源車から基地局設備に電力を供給する
可搬型のStarlinkアンテナを設置
移動基地局車や大型電源車(右)も登場した

協力会社との連携

 ドコモは、運送業者や石油運搬業者などと連携し、災害復旧を迅速化する取り組みを進めている。

 たとえば、佐川急便とは、同社のトラックで移動基地局などドコモの復旧物資を運搬する取り組みを進めている。

佐川急便のトラックで移動基地局を運搬
移動基地局

 石油運搬を担う日本BCPとは、災害時に発電機で使う燃料の供給体制を整えている。給油施設では、ドコモだけでなく、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルの計4社と共同で利用できる体制を整え、 復旧の効率化を図っている。日本BCPでは、バギータイプの車両も用意している。山間部など、道路が寸断されている基地局に向けて燃料を供給できる体制を整えている。

4社で給油施設を融通する取り組み
燃料を運搬する車両。急傾斜地などにも燃料を運べるバギータイプの車両も用意

 復旧物資の運搬では、ほかにもエアロトヨタや自衛隊のヘリコプターを活用する取り組みも実施している。2025年の台風22号で被災した八丈島における復旧活動では、エアロトヨタのヘリコプターで物資を運搬し、基地局の迅速な復旧に役立てられたという。

避難所支援

 ドコモは、通信サービスの復旧だけでなく、被災者が身を寄せる避難所への支援も進めている。

 たとえば、コンセントが限られる避難所の充電環境を改善すべく、一度に20台を充電できる充電スポットを用意したり、同社の回線やStarlinkを使った無料Wi-Fiサービスを提供したりする。これらの支援は、ドコモだけでなく、4キャリアが足並みを揃えて実施している。迅速かつ広い範囲で支援するため、4キャリアは連携プロジェクト「つなぐ×かえるプロジェクト」を実施している。直近では、このプロジェクトにモバイルバッテリーの事業者も参画し、各キャリアの支援ネットワークを生かした取り組みが進められている。

避難所での生活を支える提携企業の車両も駆けつけた

大規模訓練を公開する意義

ドコモネットワーク本部サービスオペレーション部災害対策室長の尾崎康征氏

 今回の要素として、ドコモネットワーク本部サービスオペレーション部災害対策室長の尾崎康征氏は「JAPANローミングやStarlink Directなどの新技術」と「協力企業との連携」をテーマに挙げる。協力企業の数も「かなり増えてきている」とコメント。キャリア同士の連携についても「我々も助けてほしいというのもあるが、他社も自社の通信を早期復旧しようとしているところで、うまく協力関係を築きたい。競争関係ではあるが、災害対応では協力していこう、というところが大きな力につながる」と取り組みの意義を説明した。

 今回の訓練では、2024年の能登半島地震における反省点を踏まえた体制が披露された。先述の小型移動基地局車では、木々が道路に倒れてしまい進めなかった経験を踏まえて導入されたもので、車両数も増やしてきていると説明。能登半島地震と同様の災害が発生しても、「もっとうまく復旧できる体制」だとコメント。ドローンも含め、陸海空さまざまな場所から復旧を目指すとした。

災害発生時は、東京と大阪のオペレーションセンターで対応
会場では、空からの通信プラットフォームとして「Amazon Leo」や「HAPS」など将来提供予定のものも紹介された

 4社連携で変わってきた点について、尾崎氏は「『いかに自分たちのユーザーを助けるか』という視点から、『日本全体で通信を復旧させるか』という視点へと各社が変わってきた。他社の“のぼり”を立てるということも、以前は難しかったかもしれない」とコメント。今回の訓練では、ほかのキャリアの担当者も来賓として足を運んでいるといい、今後も協力関係を強化していくとした。

NTTグループのNTT e-Drone Technologyも参加。光ファイバーケーブルなど伝送路の断線時にドローンを使って設置をサポートする

 大規模に訓練を行う意義について、尾崎氏は「個別の訓練は実施しているが、全体を総合的に確認できる訓練は重要だ。全体を通して見えてくる課題もあり、さまざまな企業が参加することで、より広い協力関係を築く機会にもなる」と指摘した。

JAPANローミングの手応え

 通信障害が発生した際にユーザーが契約するキャリア以外の回線が利用できる「JAPANローミング」が、4月からスタートした。4月22日には早速、岩手での山林火災によりドコモ回線が利用しづらい状態となり、JAPANローミングが発動した。当該地域のドコモユーザーは、通信速度やサービスの制限はあるもののKDDIやソフトバンク、楽天モバイルの回線をローミングの形で利用できた。

 尾崎氏は、岩手での発動について「思ったよりスムーズに発動できた」としつつも「キャリアとの連絡を取り合う会議がうまくできたか、ユーザーに利用方法が周知できていたか、といった課題が出た」と振り返る。

 JAPANローミングを利用するには、スマートフォンのローミング設定やネットワーク設定の変更など、ユーザー自身が操作しなければならない場合もある。今回の防災訓練の公開などが、災害時にどのようなサービスが提供されているか、どうすれば使えるかなどを知る機会にもつながると尾崎氏は話した。