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外からの電波を室内の隅々まで、NTTが"窓で電波の行き先を可変制御”に成功
2026年3月27日 17:03
NTTは、透過する電波の方向を動的に制御する透過型液晶メタサーフェスを、従来の10分の1以下の薄さで実現し、サブテラヘルツ帯の伝搬方向などを任意に変化できることを実証した。
NTTが開発した透過型液晶メタサーフェスは、幅広い周波数帯で適用できるほか、液晶ディスプレイの液晶層と同等の厚みで製造でき、面積の拡大や高速な応答性の面で有利となる。
同技術を窓ガラスなどに適用することで、透過する電波を制御し、通常は電波が届きにくい場所の電波環境を、低コスト・低消費電力で改善できると期待される。
同技術が開発された背景には、超高速無線通信の実現に向け広帯域を利用できる周波数帯が必要となるが、周波数は高くなるほど直進性が高くなるため、回り込みしにくく遮蔽物の影響を受けやすくなる。
特に、屋外から屋内は伝搬経路が窓などに限られるため、電波が届かないエリアが形成されやすい課題がある。そこで、薄型かつ大面積の面状デバイスで電波を必要な場所に誘導するRIS技術に期待が高まっている。
メタサーフェスデバイスを窓ガラスなどに設置すると屋内の電波環境が改善されることが実証されているが、このメタサーフェスデバイスを透過する電波の方向などを可変制御できれば、移動する端末を追従するように電波を制御することも可能になる。
NTTは、基地局からの電波が直接届かない場所に対して、空間に設置した透過型メタサーフェスデバイスの研究開発に取り組み、FR3帯やサブテラヘルツ帯などの周波数帯においても、薄い液晶層を実現するNTT独自の液晶メタサーフェス構造を開発した。
技術面での特長
技術的な特徴として、液晶分子の配向変化による透過電波の制御を最大化するため、電気的な共振を用いて、液晶層に局所電界が集中する新たな共振器構造を見いだしたという。これにより、液晶厚みを周波数と独立して設計でき、FR3帯からサブテラヘルツ帯までの各周波数帯で世界最薄の液晶層を実現している。
制御配線を含めたメタサーフェス構造を、従来のように1種類の導電材料で構成すると、共振器構造と高周波との結合を二次元に張り巡らされた制御配線が邪魔する課題があった。
そこで、メタサーフェス構造と伝導率の異なる2種類の伝導材料で構成した。これにより、二次元の制御配線を用いた場合でも高周波信号が共振器構造のみと結合し、透過電波の二次元制御が可能になる。さらに、高周波数信号に対して配線を含めて回転対称構造にできるため、移動通信に用いられる直・水平の両直線偏波への対応を実現した。
研究の成果
NTTは、これらの技術を取り入れた世界最薄の液晶層(3.5µm)を有する透過型液晶メタサーフェスをサブテラヘルツ帯(115GHz)で試作した。
試作デバイスにサブテラヘルツ帯の電波を入射し、目的とする伝搬に応じた制御信号を入力して透過波の信号強度を評価したところ、透過波の方向および集光位置の可変制御を設計通りに実現できたという。また、試作した構造では素子空間を波長の8分の1以下にすることで、従来のアレーアンテナでは難しい複雑なビーム形状も形成可能になる。
将来的には、可視光に対して透明に作製することが可能な液晶メタサーフェスデバイスを、街中の景観に影響を与えずに窓ガラスなどに設置することで、電波を自在に制御できる可能性があるという。



