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京セラ、電波の進行方向を変える透過型メタサーフェス屈折板
2022年3月28日 15:12
従来のメタサーフェス反射板の課題とは
5Gのミリ波や、6Gに向けて検討されている高周波数帯の電波は、直進性が強いという特徴を持つ。そのため、基地局からの電波の進路が障害物に遮られている場所では、通信品質を確保できないという課題があった。
こうした課題への対策のひとつとして、電波を特定の方向に反射させられるメタサーフェス反射板が挙げられるが、反射板を用いて変えられる電波の方向には限界があった。
京セラが開発した透過型メタサーフェス屈折板の特徴
今回京セラが開発した透過型のメタサーフェス屈折板は、進行方向に対して小さい角度で電波を曲げられるものとなっている。
また、同社の独自技術により、任意のサイズの屈折板を開発できるようになった。これにより、住宅のベランダなどさまざまな場所への設置も可能になる。
実験で効果を確認
京セラは、同社の鹿児島国分工場における28GHz帯ローカル5Gの環境を用いて、実験を実施。透過型メタサーフェス屈折板の効果を確認した。
建物の壁が障害となり、受信電力が低いA地点(受信電力:-97dBm)と、受信電力が高いB地点(受信電力:-67dBm)の2カ所に端末を設置。A地点に電波を届けられるようにメタサーフェス屈折板を設置すると、A地点での受信電力はB地点と同程度の-68dBmになり、屈折板の有効性が確認できたという。
京セラでは現在、景観に配慮した透明タイプの屈折板の開発や、特定の場所に電波を集束させ受信電力を向上させる技術などの開発を進めている。また、今後は端末の状況に応じて電波の向きを変えられる技術「RIS(Reconfigurable Intelligent Surface)」の実現も目指す。