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産総研と大阪大学、140GHz帯ミリ波を特定方向へ向けられる反射板の開発に成功

 産業技術総合研究所(産総研)と大阪大学は、ポスト5G/6Gでの利用が想定される140GHz帯のミリ波を、特定方向に高効率で反射する反射板の開発に成功した。

 なお、140GHz帯における高効率なメタサーフェス反射板の開発・実証は今回が世界初となる。

開発されたメタサーフェス反射板と実証実験の様子

 次世代のポスト5G/6Gでは、5Gを大幅に上回る高速大容量通信を実現するため、100GHz超のミリ波の利用が検討されている。

 しかし、ミリ波は木々や建物などの障害物で遮断されやすく、基地局から見通せないエリアでは通信圏外となりやすい。

 こうした「見通し外」のエリアにも効率的に通信経路を確保する技術が求められてきた。

 今回開発されたメタサーフェス反射板は、特定方向への反射ができるため、「見通し外」のエリアに対して効率よく通信経路を確保できるという。

メタサーフェス反射板を用いた通信エリア構築のイメージ

 実証実験では、送信アンテナから反射板に垂直に電磁波を照射し、受信アンテナの角度θを変えながら反射率を計測した。

 また、不要反射として、送信アンテナ方向と、受信アンテナとは対称の方向への反射率もあわせて計測された。

メタサーフェス反射板の性能評価に用いた実験系

 結果は、受信アンテナの角度を45度、60度、75度のいずれにおいても、受信アンテナへの反射が大きくなり、不要反射は抑制され、特定の方向への高効率な反射が実現された。

140GHz帯メタサーフェス反射板の反射特性計測結果。赤線が受信アンテナへの反射、緑と青線が不要反射となる

 さらに実験では、各反射板に対する動作周波数における反射率の角度依存性を計測した。

 こちらにおいても、45度・60度・75度に反射するよう設計された反射板に対して、それぞれ88%・84%・82%の高い反射効率が確認されたという。

60度で反射するよう設計されたメタサーフェス反射板の反射率の角度依存性計測結果。60度のところで80%以上の反射率が計測されていることがわかる

 今回開発された反射板は、ポスト5G/6Gにおけるエリア拡大への貢献が期待されている。

 両者は今後、メタサーフェス反射板の動作周波数の300GHzまでの高周波化や反射方向の動的制御、マルチバンド動作などの高機能化の研究開発を進めるとしている。