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タッチ決済シェア拡大はスマホが牽引!? Visa、2026年に向けた日本での今後の戦略を説明
2025年12月12日 11:35
ビザ・ワールドワイド・ジャパンは、12月10日に「日本のキャッシュレス推進と次世代決済への展望 ~2026年度に向けたVisaの戦略~」と題したメディアブリーフィングを行った。本稿では、そちらで説明された内容から、特にタッチ決済に関する内容を中心に紹介する。
日本でのタッチ決済は、全クレカ決済の60%を占める
ビザ・ワールドワイド・ジャパン代表取締役社長のシータン・キトニー氏によると、過去1年の間に、日本でタッチ決済の利用が急速に加速しているそうだ。
今から2年前の2023年、Visaの対面決済におけるタッチ決済取引の割合は25%だったが、今年はその2倍以上となる59%へと急成長したという。
このようにタッチ決済の利用が急速に増えた要因のひとつが、タッチ決済対応カードの普及だ。
国内でのタッチ決済に対応するVisaカードの発行枚数は、2025年9月末で約1億6,000万枚に達しているという。タッチ決済に対応するカードを持っている人が多くなっていることで、必然的にタッチ決済を利用する人も増えているわけだ。
そしてもうひとつの要因が、2023年以降、日本ではコンビニエンスストアや飲食店、ドラッグストア、スーパーマーケットなどの日常利用の店舗でタッチ決済への対応が進んだことだ。
Visaの調べによると、2025年9月のクレジットカード決済のうちのタッチ決済の割合は、コンビニエンスストアで90%、飲食店で80%、ドラッグストアで70%、スーパーマーケットで60%と、いずれもかなり高い割合となっている。しかも、その割合は2023年時点と比較して2.2~5.5倍にも達しているそうだ。
実際に店舗でクレジットカード決済を行う場合、従来の物理カードを利用する方法では、カードリーダーにカードを差し込んでPINを入力するといった手間がかかるのに対し、タッチ決済であればカードリーダーにタッチするだけでよく、一定金額まではPIN入力も不要。利用者がこれを1度体験したら、高い利便性と決済時間の短さから、それ以降も継続して利用する率が高く、ひいてはタッチ決済の利用割合を大きく引き上げる要因になっている。
公共交通機関でのタッチ決済対応も普及を加速するきっかけに
キトニー氏は、日本で公共交通機関でのタッチ決済対応が進んでいることも、タッチ決済の割合を高めるきっかけになっていると指摘する。
日本の公共交通機関でのタッチ決済対応は、2025年12月現在で190以上の公共交通事業者、44都道府県ですでに導入あるいは導入開始を発表しているという。キトニー氏によると、単一市場におけるタッチ決済での公共交通機関乗車の導入数としては世界最大規模であるとのことで、こちらも急速な普及が進んでいる。
そして、より早く公共交通機関でタッチ決済が普及している福岡と大阪での、過去12ヶ月間の決済データから、公共交通機関をタッチ決済で利用している人は、利用していない人と比較して一貫して決済回数、決済額ともに多くなっているとのこと。
下に示す表がその結果だが、公共交通機関をタッチ決済で初めて乗車した人は、利用していない人と比べて取引件数で8~16%、消費額で4~12%も多くなっている。公共交通機関でのタッチ決済利用後3カ月までは、より割合が高くなっているが、4~6カ月後でも継続して高い割合を維持している。このことから、1度タッチ決済の利便性を体験したら、その後も継続して利用する人が多いだけでなく、公共交通機関でのタッチ決済の利用がそのきっかけになっていることがわかる。そしてキドニー氏は、タッチ決済が公共交通機関乗車の利便性を高めるとともに、地域の加盟店および地域社会の活性化や成長を促進する役割も担うと説明した。
そして、特にタッチ決済の利用が大きく伸びているのが大阪地域だ。これは2025年4月から9月にかけてVisaが実施した「大阪エリア振興プロジェクト」によるところも大きいが、その期間中のタッチ決済の割合は、全国平均の66%に対し大阪地域では74%にも達したという。
それを受けVisaでは、2026年6月より「タッチ決済全国キャッシュレス推進プロジェクト」を全国で展開すると発表。これにより、今後さらにタッチ決済の定着と普及を推進するとともに、消費者の決済習慣を変えることを目標として取り組みたいとのことだ。
今後はモバイルタッチ決済の普及にも努める
ところで、タッチ決済全国キャッシュレス推進プロジェクトにおいては、タッチ決済のさらなる普及はもちろんのこと、特にモバイルタッチ決済の普及にも努めていきたいという。
モバイルタッチ決済とは、スマートフォンやスマートウォッチなどのモバイル端末を利用したタッチ決済のこと。本誌読者の中には、すでに日常的に利用している人も少なくないはずだ。
この点についてより詳しく聞いてみたところ、現在行われているタッチ決済のうち、モバイルタッチ決済がどの程度の割合を示すかの数字は存在しないものの、モバイルタッチ決済は急速に成長しているという。おそらく、すでにタッチ決済の中でもかなりの割合を占めていると考えられる。
モバイルタッチ決済は、わざわざ物理カードを財布から取り出す必要がなく、身近に携帯しているスマートフォンやスマートウォッチをタッチするだけで決済できることから、1度でも体験したら、モバイルタッチ決済を行う人が多くなるのも当然だ。そういう意味では、スマートフォンやスマートウォッチがタッチ決済の普及拡大を下支えしていると言っても過言ではないだろう。
そして、モバイルタッチ決済は、Visaにとっても優先度の高い分野になっているとともに、今後は対面決済でのモバイルタッチ決済がさらに増加すると考えている、とキドニー氏は指摘した。同時に、Visaとしてパートナーとも協力しつつ、モバイルタッチ決済を、高い優先事項として成長を加速したいと語った。





