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日本はAPAC第3位の「デジタル国家」、課題はイノベーションの商用化

 GSMAは、日本のデジタル戦略やDX実現に向けた準備状況を評価するレポート「Japan's Digital nation:Pathways for Transformation」を発表した。

GSMA ジュリアン・ゴーマン氏

データガバナンスやインフラ確立に高評価

 レポートによると、アジア太平洋地域における日本のデジタル国家指数は76ポイント。同地域では3位につけており「先進デジタル国家」と評価されている。

 インフラや人材の両面でデジタルトランスフォーメーションを見据えた基盤ができていることが評価された。NTTグループが進める「IOWN」を「超大容量・低遅延・低消費電力を実現する6G時代の中核インフラ開発で世界をリードしている」と、先進的な取り組みの事例が挙げられた。オープンRANを推進している点も評価された。

 あわせて「データガバナンス」を「日本の主要な強みのひとつ」と位置づける。データ保護や説明責任、透明性を確保する法制度の整備や制度的枠組みを有している点が評価された。

課題はイノベーションの商用化

 一方で報告書は、今後の課題を「イノベーション」面にあると指摘する。先進的な取り組みに着手はしているものの、研究開発の成果を商用化につなげることが難しくなっていると評価された。3G時代には、日本のモバイル通信技術は世界から注目を集めていたが、4Gに時代が移り変わり、規格の標準化などが整った結果、競合する国(企業)が増加した。

デジタル国家に必要な5つの柱

 GSMA アジア太平洋地域責任者のジュリアン・ゴーマン氏は、インドやベトナムなど5Gで躍進した国を例に挙げ「この数年で多くの国が大胆な規制改革を行った」と認識を示した。一方で「日本はそれでも、リーダー的な存在。高い品質に支えられたテクノロジー産業が日本の強み。地政学的にも利点があり(APACの)国をまとめられる」と話した。

 このほか、サイバーセキュリティについても課題のひとつに挙げられているが、徐々に改善の傾向が見られるとも説明された。ほかに、デジタル需要に対する高度人材の不足や少子高齢化によるデジタル格差の是正なども、今後解決の必要がある課題だとしている。

 報告書は、IOWNやオープンRANなど、先進技術の商用化を後押しする仕組みの強化やサイバーセキュリティの強化、通信事業者による世代を問わない包括的なデジタル化の取り組み、AI・クラウド分野の専門人材育成への投資の必要性を訴えている。