ニュース

NTTドコモビジネスフォーラム'25、自動運転通信安定化ソリューションとIOWN活用遠隔ヘルスケアを発表

 NTTドコモビジネスは、法人向けイベント「NTT docomo Business Forum'25」を10月9日と10日に開催する。今回のフォーラムは「産業・地域DXで共創する未来」をコンセプトに掲げ、今年で4回目を迎える。

 前日の8日には報道陣向けに内容が公開され、冒頭では、同社代表取締役社長の小島克重氏のAIアバター「AIコジマ」が動画で挨拶した。7月1日に社名をNTTドコモビジネスへ変更したこと、そしてNTTグループのアセットをワンストップで提供する「産業・地域DXのプラットフォーム」を目指す姿勢を強調した。

NTTドコモビジネス 代表取締役社長 小島克重氏のAIアバター「AIコジマ」

自動運転向け通信安定化ソリューション

 同社はIOWN技術を活用したソリューションとして、地域公共交通の課題解決を目指す「自動運転向け通信安定化ソリューション」を発表。現在、路線バス事業者の約8割が運転士不足を背景に減便や廃止を検討・実施しており、特定条件下での完全自動運転(レベル4)の導入が急がれている。ただし、レベル4運行には遠隔監視が欠かせず、通信の途切れや遅延のない環境を確保することが極めて重要となる。

 しかしモビリティ環境では、基地局の頻繁な切り替えや電波が不安定なエリアの存在、大容量通信の必要性などから、映像の瞬断や遅延、映像乱れによる誤認識といった課題が生じていた。

 こうした課題を解決するため、同社は3つの技術を組み合わせたソリューションをパッケージ化した。移動する車両に対して無線品質を先回りして予測する「Cradio」、予測に基づき複数の回線を束ねて冗長化しデータを振り分ける「協調型インフラ基盤」、そしてカメラ映像に加え各種センサー情報を統合的に遠隔監視システムへ伝送する「データ伝送機能」だ。これにより、車両が移動しても通信状況を予測してデータ転送の割合を制御でき、高頻度かつ高信頼な遠隔監視が可能になる。

 このパッケージ化により、従来は約3カ月かかっていた導入期間をおよそ1カ月に短縮できる見込み。コストについては今後、社会実験を通じて決定していく予定だとしている。

会場のデモ
上部はソリューションの有無を比較した映像。3キャリアのうち、青と赤の2回線を使って映像を受信しており(左下グラフ)、青い通信を遮断すると自動的に赤い回線へ切り替わり、途切れることなく映像の受信が続く

IOWNと触覚伝送を活用した未来の遠隔ヘルスケア

 もうひとつは高齢化社会における健康課題の解決を目指す「IOWN×触覚伝送を適用した未来の遠隔ヘルスケア」。健康寿命の延伸が求められる一方で、人手不足や地域間格差が課題となる中、同社は通信会社として、映像や音声に加え「人の動きをサポートする仕組み」に取り組んでいる。

 特に触覚情報は遅延に極めて敏感で、100ミリ秒程度の遅延でも違和感が生じる。このため、遅延の揺らぎがない通信基盤が欠かせず、その要件を満たす技術として「IOWN APN」が活用される。

 このソリューションは「FURELIA」というコンセプト名のもと、IOWN APN通信基盤上に、高品質な映像・音声を伝える「OPEN HUB Window」、振動を伝える「バイブロスケープ」、そしてミライセンス(村田製作所の子会社)が開発する3DHapticsデバイス「echorb」(力やねじり感を錯覚させる技術)を組み合わせて構成される。

 これにより、映像・音声に加えて振動触覚と力触覚の2種類を同時に伝送でき、離れた場所にいるインストラクターと参加者が同じ動きを体験しながら体操などを行うことが可能となる。

 触覚・音声・映像を組み合わせたこの技術は、遠隔トレーナーと体験者が同期してレクチャーを受ける実証も行われており、今後はヘルスケア分野にとどまらず、小売、物流、製造など幅広い分野への展開を視野に、業界横断での協業を通じて社会実装を進めていくという。

会場のデモ
実際に遠隔でトレーナーとストレッチを体験することができる