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「arrows」の堅牢性を支える、FCNTの“地下室”

 堅牢性が特徴のFCNTのスマートフォン「arrows」。それを下支えする実験室が神奈川県某所の地下にある。新型スマートフォン「arrows Alpha」の発売を控えた26日、FCNTがスマートフォンなどの耐久性をテストする施設をメディアに初めて公開した。

電話としての基本性能を試験

 SNSやメッセージアプリなどの利用も多いスマートフォンだが、通話機能は重要な基本性能。FCNTの地下実験室では、ダミーヘッドに開発中のスマートフォンを持たせて、マイクやスピーカーのボリュームなどが適正か測るを設備を整える。

 周囲が騒がしい環境でも、しっかり通話ができるかということもテストしたうえで商品として世に送り出される。公開された実験室では、スピーカーで鉄道や施設の中など、騒音・雑音を流しながら通話の品質を確認できる設備が整えられている。

 通話と同様に通信の品質も、スマートフォンにとって欠かせない要素のひとつ。今回、公開された地下にある施設は、ほかの電波の影響を受けないため無線通信の評価に適しており、同社では無線の開発をすべて地下で行っている。

 あまり遠くまで到達してはいけない「近距離無線通信」の設備もここで開発される。「FeliCa」もそのひとつで、実験室には、バスや改札などで使用されるFeliCaリーダーやさらに新幹線のグリーン車のチケットをかざすリーダーが並ぶ。FeliCaの速度性能を実現するには細かな調節が必要で、ミリ単位での作業の賜物だという。

 そのすぐ近くには、電波暗室も備えており端末のアンテナの強弱を評価する。人が端末を手に持ったときや通話時に耳に端末を近づけたときにどのような特性になるかを見ることができる。

左側に端末がある。右側はアンテナ

arrowsの「堅牢性」を生み出す

 arrowsの特徴である耐久性もこの施設で培われている。代表的な耐久性の試験は「1.5mコンクリート面落下試験」「円錐落下試験」「3点曲げ試験」「アスファルト面落下試験」「Vビット落下試験」「角曲げ試験」「繰り返し落下試験」「ねじり試験」「点圧迫試験」がある。

 3点曲げ試験は、スマートフォン本体の両端を金属の部品で保持。上から先端の丸い金属の部品で圧力をかけて耐久性を試験する。ズボンの後ろのポケットにスマートフォンを入れて座ったときの圧力などを想定している。

 1.5mコンクリート面落下試験は、専用の装置にスマートフォンをセットした後、装置下のコンクリートに向けてスマートフォンを落下させる。円錐落下試験は、40cmの高さからスマートフォンのディスプレイに向かい、落下させてディスプレイが割れないかどうかを調べる。

円錐落下試験。端末に金属を打ち付けてもディスプレイは無事だった
Vビット落下試験。端末のボディに傷は入ったが、ディスプレイは無傷

 Vビット落下試験はスマートフォンのディスプレイと本体の境界付近に先端が鋭利な金属を落下させるもの。ディスプレイが弱いのは隅のため、角度をつけて地面に落下したときに、ディスプレイが割れないかを試験する。金属が打ち付けられた本体は、凹みがあったもののディスプレイは無傷だった。

 arrowsといえば、ハンドソープで洗えるというのも特徴のひとつ。その試験はFCNTの開発メンバーが自らの手でスマートフォンを洗って性能を試験している。自動化が難しいことが理由という。壁には洗った回数が書き込まれた紙が貼り付けてある。

手洗いの回数が記録された紙

 1000回ほども手で端末を洗って確かめる必要があり、途中で内部に水が侵入すると原因を突き止め、また洗い直す。場合によっては3000~4000回も洗うことになるという過酷な工程となる。

安全性を重視

 前述のテスト以外にも、ボタンの耐久性テストなどほかにも多くの試験を経てFCNTの製品は完成する。昨今、モバイルバッテリーを中心に焼損事故が相次いでいるが、FCNTでは落下した端末の外装だけではなく、内部にもダメージがないかを確認したうえで試験を進めるなど、安全性には配慮を重ねている。

 富士通の携帯電話部門から始まったFCNT。端末の堅牢性にはフィーチャーフォン時代から取り組んできた。携帯電話とスマートフォンで、端末の形状が大きく変化した。耐久性を保つ面でも重視する面は変わっており、スマートフォン時代では、ディスプレイの保護が最も重視されており、試験の内容も時代にあわせて変わる。

 8月28日には、おなじみの耐久性と最新のAI機能を備えたスマートフォン「arrows Alpha」が発売される予定となっている。