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ドコモの起業支援プログラム開始、参加6チームがズラリ
(2013/4/24 19:12)
NTTドコモは、ベンチャー企業を対象とした起業支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」の第1回プログラムの参加チームを発表した。24日、ドコモ本社でキックオフイベントが開催され、代表取締役社長の加藤薫氏らが登壇した。
ドコモ・イノベーションビレッジは、ベンチャー企業などを対象としたドコモの企業支援プログラム。いわゆるインキュベーション・プログラムと呼ばれるものだ。今年2月にその概要が発表され、今回第1回の参加チームとして、124件の応募の中から6チームが決定した。参加チームと提供サービスは以下の通り以下の通り。
- チームおよび会社名/サービス名
- ウィルモア/Easeeat(イーシー)
- GADGET/nanovel(ナノベル)
- coromo/coromo
- SODA/Funpicty(仮称)
- TIMERS/Pairy(ペアリー)
- プライムアゲイン/DecoAlbum
6チームは約5カ月間、200万円の助成金(転換社債、Convertible Notes)を受けて、サービス開発およびビジネスモデルの組み立てにあたる。ドコモではオフィススペースとして500平米のフロアを提供する。チームはフロアを自由に使えるほか、フロアの半分ほどのスペースをイベントスペースとして勉強会なども実施する計画という。
また、ドコモと関係する海外のベンチャー企業などもこのフロアに招き入れ、日本参入を支援していくという。ドコモ・イノベーションビレッジの第1回の取り組みは、9月下旬に開催するリリースイベントで成果が発表される予定。優秀なサービスについては、ドコモのサービスとの連携やプロモーション支援、ドコモのファンド(ドコモ・イノベーションファンド)を通じた出資の検討も行われる。
ドコモでは、参加チームに対してドコモのサービスのAPIを公開していく。一部は広く開発者に公開されているものだが、今回のプログラムで新たに開示されるものも含まれる。
- フォトコレクションAPI
- 電話帳API
- 文字認識API
- 音声認識API
- 知識Q&A API
- アプリ検索API
- 翻訳API
- 環境センサーネットワーク環境データ取得API
- サイクルシェアリング自転車空塞情報API/利用予約API
- ドコモゼミ 学習ナビアプリとの連携IF仕様
- おサイフケータイNFC連携API
さらに、参加チームの相談役(メンター)として、ドコモ社外のキーパーソンを招聘する。ビービット、ソニックガーデン、D2C、本荘事務所、gumi、B Dash Ventres、アクセルマーク、リブセンス、アイレップ、アトランティス、森・濱田松本法律事務小、デジタルハリウッド大学大学院から12名の社外メンターが隔週で相談を受ける。このほか、参加チームに必要なメンターを社内からも集めてサービス開発にあたるという。
ドコモ加藤氏が語る、“NTT”の重み
ドコモの代表取締役社長である加藤氏は、今回のインキュベーション・プログラムについて、加藤氏自身が挨拶する意味を、ドコモ全社をあげた取り組みであり、その決意を含めたものとした。
同氏は、「モバイルの世界は非常に競争が激しい。特にOTTと呼ばれる人たちは、スマートフォンの基盤の上でアプリで利益を生む。全く新しい環境の中で我々も一生懸命生追いかけ、手を結ぶところは結んだ。ただ、質と量は十分ではなく、智恵や力をお借りしたい。一緒にサービスを考えて、小さめでもいいから刺激的なことを探していきたい。ドコモは頭に“NTT”がつき、動きが遅く新しいチャレンジへの姿勢がいまいちと言われる。若い方の智恵を借りてスピードを速めてサービス化していきたい」と語った。
なおOTTとは、Over The Topを省略した言葉。フィーチャーフォン時代の携帯電話事業者を中心とした垂直統合型のビジネスモデルに対して、携帯事業者の頭を飛び越えて、スマートフォンのプラットフォーム上で事業展開することを意味する。
ベンチャーも社員も若手に期待
加藤氏は、新規性のあるサービスについては、ドコモ社内で7割の完成度で良しとしているという。同氏は「とことん時間をかけてもよくわからない面もある。お客さんに早く問いかけ、意見を取り入れて改良していきたい。ドコモが力を貸し、お金も含めて提供する場を作る。ドコモ・イノベーションビレッジを意見交換の場にしたい。(完成したサービスが)世界のスタンダードになればいいという野望もあるが、全部がそうなるのは難しい。日本発を意識したい。環境やミッションに全面的にコミットする」と話した。
さらに、「もうひとつ欲張る」と述べ、加藤氏は外部の刺激を取り入れることで、ドコモの若手社員に良い刺激になることを期待した。キックオフイベント後の囲み取材では、ドコモの執行役員 フロンティアサービス部長で、ドコモ・イノベーションベンチャーズの取締役でもある中山俊樹氏がこの件に言及した。中山氏は、今回のインキュベーション・プログラムの目的の1つとして、ドコモ社内の開発陣の奮起を期待しており、「ドコモの中がどうやって変わっていけるのか、そこに半分ぐらいの意味がある」とした。
「KDDI ∞ Labo」とも協調
このほか、ドコモ・イノベーションベンチャーズの取締役副社長の秋元信行氏は、携帯電話事業者が仕切るインキュベーション・プログラムとして実績のある「KDDI ∞ Labo」(ムゲンラボ)について、競争相手ではないとの見方を示した。共にベンチャーを応援、支援していく立場という。
ドコモは新事業領域に以下の8分野を据えている。
- メディア・コンテンツ事業
- 金融・決済事業
- コマース事業
- メディアカル・ヘルスケア事業
- M2M事業
- アグリゲーション・プラットフォーム事業
- 環境・エコロジー事業
- 安心・安全事業
インキュベーション・プログラムによって、ドコモはこれらの新事業分野の領域を拡大することを第1の目的にしているという。ベンチャー企業に出資し、大きく育てて資金回収を目指すモデルではないとした。秋元氏は、「KDDIと張り合うつもりはさらさらない。日本にあるパイを奪い合うのは消耗戦にしかならない」と話していた。