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ドコモ、起業支援の取り組みを本格展開へ
ドコモ、起業支援の取り組みを本格展開へ
(2013/2/7 16:40)
NTTドコモは、ベンチャー企業などを支援する取り組みを本格的に展開する。ドコモがNTTグループを代表する形で起業支援に取り組んでいく体制を整えるほか、米国・西海岸の有力なファンドと提携し、シリコンバレーの投資家による講演や指導を受ける体制も用意する。第1回目の取り組みについては、募集を2月7日より開始している。
NTTグループとしてはこれまで、NTTの100%子会社であるNTTインベストメント・パートナーズ(NTT-IP)が、総額150億円の投資ファンドとして運用してきた。詳細は公開されていないが、運用開始5年間目でNTTグループを含めて数十社に対して投資実績があり、イグジット(株式公開やM&Aなどによる利益の確定)しているものもあるとしている。今回の施策では、2月下旬を目処にNTT-IPの株式がすべてドコモに譲渡され、NTT-IPの社名も「ドコモ・イノベーションベンチャーズ」(DIV)に変更される。
ファンド運営会社であるDIVでは、NTT-IPとしてこれまで運用してきた総額150億円を継承しつつ、NTTドコモが新たに設立するドコモ・イノベーションファンド投資事業組合(DIファンド)による総額100億円の運用も行い、新規の投資を行う予定。同時に、北米の投資会社と提携し継続的にベンチャー企業を支援していく起業支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」もDIVの傘下で開始する。
ベンチャー投資のタイミングは、スタート直後や、より一層の成長段階などいったように、成長段階に応じてさまざまに分けられるが、ドコモでは発掘や育成から支援まで、取り組みを長期的に行う方針を掲げているのも特徴となっている。支援の過程では、既存の投資ファンドなどと連携した支援も行う。
起業支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」
ベンチャー企業や起業を志す人にとっては、起業支援プログラムの「ドコモ・イノベーションビレッジ」が最初の窓口になる。これは、「革新的なサービス・技術等を有するベンチャー企業・団体等を対象」としており、スマートフォン向けサービスのさらなる充実を図る目的もある。
第1回プログラムは2月7日より募集を開始しており、年間数回の募集を行う見込み。書類審査やプレゼンテーションを経て複数のチームを選出した後、200万円(コンバーチブル・ノート)を開発助成金として提供し、オフィススペースや開発環境の提供、経営やサービス開発に関するアドバイスなど、さまざまな支援を行う。選出されたチームは5カ月間の間にベータ版のような形で成果の発表が求められ、さらなる支援が検討される。ドコモのスマートフォンで利用できる内容が基本になるが、iOSへの対応はケースに応じて柔軟に対応していく方針。
さらに、ドコモの子会社が米国・西海岸のシリコンバレーの起業支援事業者「500 Startups」のファンドに出資し両社が連携。シリコンバレーにおけるベンチャー投資や育成に精通した「500 Startups」のパートナーが、講演やメンタリング(学校や徒弟制度のような人材育成の手法)などを実施し、グローバル展開を目指すチームに対しても北米や世界をターゲットに事業を展開できる道筋を用意する。
比較的長期の投資を検討「エンジェル的な役割を」
7日には記者向けに説明会が開催され、NTTドコモ 執行役員 フロンティアサービス部長の中山俊樹氏が登壇し、解説を行った。
中山氏は、ドコモとして初めての取り組みになるベンチャー支援について、事業環境の変化の速度がさらに加速していることを指摘し、「投資の仕組みが変わってきているという時代認識が我々にも強くある」と背景を語る。
「ドコモが出資するファンドも含めて一体的に運用できる会社を作った。レイターステージ(株式公開前で、ベンチャー投資の時期としては最終段階)も含めて、積極的な投資を考えている」と、中山氏は今回の取り組みが柔軟で長期に渡る支援体制になっているとする。これは、スマートフォン向けのアプリやWebアプリにとどまらず、サービス、プラットフォームの開発支援が視野に入っていることも影響しており、実際に第1回のプログラムはサービスやプラットフォームといったより複雑で規模の大きなものにも対応できるよう、5カ月間という期間が設定されている。
中山氏は、シリコンバレーではベンチャー投資として初期段階の投資以外にも、イグジットまで段階的に投資が受けられる環境が整っていると指摘。「シリコンバレーではスタートアップの後も、次の投資の段階がある。日本ではそこまでの環境や層の厚さはない。企業がエンジェル(ベンチャー投資家)、スーパーエンジェル的な役割をしていかないと」と語り、ベンチャー投資の環境を発展させる意味でも積極的に投資していく方針を示した。
またドコモとして、2013年春モデルとして発表した「MEDIAS W N-05E」のような、ハードウェアとしてユニークな端末を活かすようなテーマも今後設定していく方針。ドコモのサービスを利用するためのAPIの公開についても順次拡大していく方針で、すでに第1回の募集時点で電話帳や文字認識、環境センサーネットワークなど10種類のスマートフォン向けAPIが公開されている。
質疑応答の中で中山氏は、日本で先進的に活動しているベンチャーファンドやそのコミュニティに対しても、ドコモの取り組みやスタンスをアナウンスしていく方針を明らかにしたほか、「ドコモ・イノベーションビレッジ」のビレッジに人材の交流の意味を込めたとし、「ドコモは大企業なので、内部志向だったり、外を向きながら作ることが少なくなっているかもしれない。ビレッジでは、そうした外の人が、ドコモに気づきを与えてくれる、いい影響を与えてくれると期待している」と語った。
同様のベンチャー支援の取り組みはKDDIが「KDDI∞Labo」として積極的に活動・情報発信をしているが、中山氏によれば、「競争というより、同じ道。いいところはどんどん取り入れていきたい。差別化はそう意識はしていない」とのこと。「風呂敷は大きいが、世界で通用するビジネス、サービス、そうした大きな仕掛けに対して、支援していきたい」と語り、大規模な展開も可能な取り組みとして実施していく方針を示している。