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「いつまでも3位に甘んじるつもりはない」――ソフトバンクの第38回株主総会
2024年6月20日 15:44
事業報告
2023年度の売上高は、前期比3%増の6兆840億円。営業利益は、2022年度に計上したPayPayの子会社化に伴う再測定益を除いた実力ベースでは、前期比14%増の8761億円となった。
純利益は、実力ベースで前期比45%増の4891億円を記録している。
通信料値下げの影響を受けてきたモバイル売上高は、2024年度からの増収を目標としていたが、1年前倒しの2023年度から増収を達成した。
スマートフォンの累計契約数は147万件純増し、3000万契約を突破している。
ファイナンス事業の売上高は2328億円。事業の中心であるPayPayは、2024年6月時点での登録ユーザー数が6400万人を突破した。
宮川氏は今後について、「2024年度には9300億円、2025年度には1兆円レベルの営業利益を出せる実力がついてきた」とアピール。AI関連への投資などにより、さらなる成長を目指す。
質疑応答
――株式分割や株主優待制度の決定に至った背景や経緯を教えてほしい。優待は株の保有数に応じて変更しないのか。
宮川氏
これから10年~20年先を一緒に経営について考えてくださる若い株主層が増えていくことが、当社の中長期の成長につながっていくという思いがあります。
そのために株式を10分割して買いやすい単価に設定し、加えて1000円分のPayPayポイントをお渡しするということで、当社の株を購入していただくきっかけになったらいいなと考えました。
優待ポイントの総額は全体で10億円ほどを予定しています。今回はこの10億円を戦略的な取り組みとして活用することで、PayPay経済圏の拡大を含めた、中長期での企業価値の向上につなげていきたいと考えています。
――株式分割について、4分割などは考えなかったのか。
宮川氏
ありとあらゆるパターンを計算して考えました。2分割、4分割、6分割、10分割……いろいろなパターンを考えました。
当社の役員も、「10分割はやりすぎだろう」と言う役員もいましたし、PayPayの1000円の優待を株数に合わせて出していくと恐ろしい金額になる、そういうこともやめたらどうかですとか、いろいろな話がありました。
でもやっぱり、これからソフトバンクは成長し続ける会社にしたいと考えています。
それには、私どもの株主さんで40歳未満の株主さんが他社に比べて異様に低いというデータがありましたので、ここを1回掘り起こそうじゃないかと。
若い株主さんが増えていただくことが、この先のソフトバンクを一緒に作っていただけるのではという思いで、その層が買いやすい金額をいろいろとリサーチさせていただいた結果です。
――ソフトバンクの株は配当が良く、大企業の株ということで、魅力があると思う。PayPayの優待で還元する分を、研究費に回しては。
宮川氏
私どもの会社、今は40歳以下の株主さんの数がちょっと他の会社と比べてもバランスが悪く、意外と少ないのです。
ソフトバンクの株は魅力があると言っていただいて本当に感謝していて、私もそう思っているのですが、株主さんの数も、上場以来、それほど増えている会社ではありません。
分割をされた他社さんのデータを見てみると、一気に株主さんが倍や2.5倍に膨らんだ大手企業さんがあります。
見てみると、その中でも若年層の方々が増えたという結果がありました。分割の話と混ざってしまって申し訳ないのですが、買いやすい価格で、加えてきっかけづくりとしてPayPayの1000円という優待を設けました。
(株を)買ってみたいなと思われる若者たちが増えること自体が、この先のソフトバンクを考えれば、結果的にはプラスになると信じています。
ですから、これはやらせていただきたい。結果が出ないようでしたら、来年や再来年でさっと打ち切るということをしますから、まずはチャレンジさせていただきたいと思います。
PayPayの優待がだいたい(総額)10億円なのですが、少なくとも生成AI用の計算基盤への投資は1000億円、2000億円の単位でさせていただいていますので、それはご安心くださればと思います。
――LINEヤフーの資本関係の見直しの状況や、今後の見通しについて教えてほしい。
宮川氏
これはもう何度も同じことばかりで本当に申し訳ないのですが、LINEヤフーから要請を受けて、セキュリティガバナンスや事業戦略の観点で、NAVERと継続して協議しています。
現時点では合意に至っていませんが、LINEヤフーの将来を考えて、できる限りのことをしたいと考えています。
相手のあることですので、合意のできる時期は明確にお答えできませんが、引き続き協議を重ねてまいりたいと思います。
――取締役が慣れ親しんだメンバー構成になっているのではないか。生え抜き社員の登用や育成にも力を入れてほしい。
宮川氏
今の経営陣の顔ぶれが、この20年ぐらい、大きく変化していないというのは事実だと思います。
携帯電話料金の値下げがあり、社長に就任したときに本当に色々と考えてみたいと思ったのですが、この経験豊富なメンバーでまずは乗り越えようと取り組んでまいりました。
苦しい状況を抜け出すことができましたので、今年から社内体制の変更を行いました。
順次継承を進めながら、次世代へバトンタッチしてまいります。
次の取締役候補として、常務や本部長からも頭角を現してきている人物が次々と出てきていますので、大変期待しているところです。
――取締役特別顧問の宮内謙氏は貢献が大きいと思うが、功労金などを渡すのか。
宮川氏
私も、宮内さんの功績は非常に素晴らしいと考えています。この功績は国にも認められ、昨年度には旭日重光章を受勲されました。
本当はソフトバンクと言えば孫さん(孫正義氏)なのですが、実は孫さんと宮内さんのこの絶妙なコンビで作り上げた会社でもあります。
孫さんのスケールの大きいアイデアを、宮内さんが現場を指揮して確実に実行してくださったおかげで、本日のソフトバンクの姿があると考えています。
しかしながら功労金はお渡しいたしません。すみません、宮内さんごめんなさい。
これまでの貢献につきましては、株式報酬として過去にお支払いをしています。これからほかの株主さまと同様に、配当や株価の上昇で報いていきたいと考えています。精一杯努力しますので、許していただければと思います。
――AIデータセンターをシャープの境工場の敷地に作るとのことだが、投資額は。収益化できるのか。
宮川氏
交渉中のため、具体的な金額は現時点では決まっていません。確定したら、お知らせしたいと思っています。
堺工場は、我々が進めている次世代社会インフラの中核の拠点として最適だと考えています。
今回、堺工場の土地や建物だけではなく、電源や冷却設備といった、データセンターの稼働に必要な設備もあわせて譲り受ける方向で交渉しています。
データセンターの新設を新しくやろうとすると、土地の購入から建物の建設、電源設備の構築まで考えると、早くも3~4年、最近では5~6年は確実にかかるという状況です。
堺(のデータセンター)は早期に稼働させることが可能であり、急増しているAIデータセンターのニーズに応えることができると考えています。
収益化については、次期の中期経営計画の中でお話ししたいと思っていますので、期待していただければと思います。
――次に通信各社との競争において、ソフトバンクの強みを教えてほしい。
宮川氏
当社のグループの中には、LINEで9700万人、ヤフーで8500万人、PayPayで6400万人といった、国民の大半が使っている国内最大規模のサービス群があります。それらとの連携がまずは大きな差別化になると考えています。
また、以前はとにかく一番の弱点とも言われたネットワークも、品質向上に向けて地道な地道な努力を続けてまいりました。その結果、第三者機関から一貫した品質ナンバーワンと言われるようになってきました。
本当にありがたい話でして、結果で言いますと、ナンバーポータビリティでずっと純増を続けており、高い競争力を維持していると思っています。
――ソフトバンクが開発する大規模言語モデルについて聞きたい。OpenAIのような海外の大規模言語モデルと比較して、ソフトバンクのモデルはどのように優れているのか。
宮川氏
当社が開発している大規模言語モデルは、日本語をベースとして開発しています。ですので、日本の商習慣や文化、歴史などをきちんと理解して、ビジネスや日常生活の中で自然なやり取りができるモデルとなる見込みです。
日本語ネイティブから見て自然なかたちでやり取りできるということは、海外のモデルに対する差別化のポイントでもあり、強みになると考えています。
これからいろいろと肉付けをしていきたいと考えています。
――10年後、20年後のスマートフォン契約者数はどのくらいになると想定しているか。人口減少があるが、対応策があれば。
宮川氏
(スマートフォン契約者数について)今、ようやく3000万を超えたところで、もちろん4000万、5000万と狙っていきたいと思っています。
スマートフォンの(契約者)数や、携帯電話の事業としては国内3位ですが、いつまでも3位に甘んじるつもりはありません。2番目、1番目と上を目指してまいりたいと思っています。
これからも、人口が減るからとかそういう話ではなくて、AIに使う道具としてスマートフォンは非常に有利なポジションにあると思っていますから、純増に向けて精一杯やっていきたいと思います。
――LINEヤフーについて、ソフトバンクとはどのようなシナジーを目指して、今後運営していくのか。
宮川氏
私どものような通信基盤と、LINEヤフーのようなインターネットサービスをやっている会社は、両社で強みが違います。
この強みを一緒に合わせて、いろいろなサービスを仕掛けていきたいと考えています。競合他社もなかなか強いですから。
もうひとつは、PayPayという共同でやっているプロジェクトもうまくいっているものがあります。第2のPayPayや第3のPayPayのようなものを、知恵を出し合って作っていきたいと思います。
――首都圏震災時のBCP対策について聞きたい。
宮川氏
これは非常に僕の得意分野ですから、細かくご説明させていただきます。
今、関東圏内と関西圏内と、大きく2つの監視センターがあります。ネットワークの運用部隊が2分割してあります。
その中で、システム的にはまた1カ所の場所に3分割しているような状況で、BCP対策はいろいろなことが我が社もある中で、強固なネットワークを作ろうということで投資を惜しまずやった時期がありました。
そういう意味では、6カ所のリダンダンシー(冗長性)が構成されているという状況です。
首都圏、本当に大きな地震が来ても、まずは関西に切り替わるとか、関西の中でも3分割してある中で、首都圏のデータを取り扱うことはできるキャパシティを持っているということです。私どもの対策は割としっかりやっているつもりです。
――アライアンスについて聞きたい。海外と積極的にやるということで、国内はどうなのか。AIにとって一番大事なデータが米国に持っていかれるのは心配。
宮川氏
アライアンスと言われた部分では、生成AI系の話がメインかなと思いました。
それについてまずお答えしたいと思っていて、当社ももちろん、今は生成AIを作っています。
それからNTTさんや、学術系のところでも、国内では(生成AIが)できつつあります。
そうは言っても、世界のOpenAIやGemini(グーグルの生成AI)と比べると、日本の生成AIは何か誇れるところがあるかというと、まだまだです。
ただ、やらない選択肢はないということで、私どもはやるという結論を出させていただきました。
それはなぜかというと、やれるスタッフがいて、やれる体力があるからです。長い目で見れば、日本独自の生成AIに関わっていくということについては、ソフトバンクとしてチャンスがあるならやるべきだということで始めました。
今、他社さんよりはかなり大きなモデルができあがっていますが、世界と比べればまだまだ小さな小さな位置づけです。
ですから、国内のどこかの生成AIと手を組むとか、そういう段階にはないということです。
もう5年も10年も経てば、組めるところがあれば組んでいきたいと思います。けれども、今の段階では、どうせ組むならOpenAIかGeminiか、というような感じです。
データの連携など(のアライアンス)については、私どもも、LINEやヤフーなど、いろいろなデータを保持しているグループ会社がたくさんあります。
それから通信会社の我々もそれなりのデータというのは持っていますし、通信会社同士で言えば、たとえば5G JAPANを、宿敵のKDDIさんと一緒にジョイントベンチャーを作っているような時代です。
これから先は何が起こるかわかりませんし、日本国という単位を考えて、新しい試みをやっていきたいです。
今までの敵は今日の友のような感じで組んでやっていくということもありえると思いますから、貪欲にアンテナを広げながらやっていきます。