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LINEヤフーのNAVER出資比率など、ソフトバンク宮川社長が語ったLINEヤフーのセキュリティ強化の取り組みは

 ソフトバンクは9日、2024年3月期連結決算説明会を開催した。

 会見では、同社代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏が、同社グループのLINEヤフーのセキュリティガバナンスの強化について説明があったほか、質疑においても記者からLINEヤフーの資本関係などについて質問が飛んだ。

 本稿では、説明会の中でもLINEヤフー関連の質疑を中心に取り上げる。

NAVERとの資本関係の見直しを協議

 宮川氏は、説明の中でLINEヤフーのセキュリティガバナンス強化に関する取り組みを説明。

 LINEヤフーは、同社のセキュリティ問題の発端となったNAVERとの業務委託関係を順次終了していくが、ソフトバンクとしてもNAVERとの資本関係の見直しを協議しているという。

 宮川氏は「LINEヤフーからの強い要請を受け、セキュリティガバナンスの強化や事業戦略の観点で、NAVERとの資本の見直しについて協議している」とコメント。説明会時点で同意には至っていないとし、報告すべき事があれば速やかに開示していくとした。

資本の見直しの必要性や時期について

代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏

 説明後の質疑では、LINEヤフーとNAVERの関係などに関する質問が相次いだ。回答者は宮川社長。

――LINEヤフーについて、NAVERから株式を取得する方向で動いているようだが、仮に取得でき保有比率を上げられた場合、同社としてどのように変革に関わっていくのか

宮川氏
 仮の話はあまりしたくないが、私の思うところで言うと、(ソフトバンクとNAVERが50%ずつ株式を保有し、LINEヤフーを連結子会社にしている)Aホールディングスは、ソフトバンクが連結で取っている関係で、取締役もソフトバンクが1人多いので、株数が変わるとこの数も変わるだろう。

 一方で、Aホールディングスはソフトバンクがコントロールしているので、大きく変わることはない。特別株数が増えたからと言って大きくアクションが起こることはないと考えている。

――取締役の構成に変更があったが、同社はどのように意見したか?

宮川氏
 LINEヤフーの中にある指名報酬委員会で取締役を選任しており、ソフトバンクとNAVERも確認するかたちで、支配率が変わってくると、ソフトバンクの一考が入ったかたちでイエス/ノーの返事をしていくことになると想像している。

 ただ、個人的には今回の取締役選任は、もう少し踏み込んでも良かったんじゃないかと考えている。今回セキュリティガバナンスについて行政指導が入ったのだから、それに詳しい知識の高い方、専門家を1~2名追加する(ほうが望ましい)と思ったが、LINEヤフーがこの布陣で行くと言うことなので、ソフトバンクもサポートしていこうということにしている。

――出資比率見直しの交渉について、障害となっているものはあるか?

宮川氏
 障害があるわけではない。まず、LINEヤフーからの強い要請を受け、親会社としてセキュリティガバナンスの強化や事業戦略の観点で真剣に議論をしているところ。

 その中でNAVERとの資本構成の見直しという協議を進めたいとしており、(NAVERも)テーブルについてもらっている。障害というものを今感じているものはない。

――出資比率の希望はあるか?

宮川氏
 これまで50%対50%ということで互いに持ち合っている関係なので、1株でも動けばどちらかがマジョリティになる。1株~全株までの議論になると思うが、ソフトバンクも事業会社なので投資に見合うかどうかを冷静に判断し、ソフトバンクの事業展開に無理のない範囲で交渉させていただく。

――すでに連結子会社になっているが、比率を変えるメリットは?

宮川氏
 たとえば100%保有してしまうと、ソフトバンクにいろいろと自由な選択ができるし、今後の戦略の中でもいろいろ考えられると思う。

 51%対49%ということであれば、ほぼ変わらないと思う。

 ただ、総務省から言われているのが、もう少し親会社としてキャリアとして、セキュリティと向き合っている会社として、LINEヤフーのセキュリティガバナンスにもう一歩踏み込んでくれという話だったので、資本は別にして完全に踏み込むつもりでやってきている。

――今後LINEヤフーの開発や成長戦略そのものにソフトバンクが関わるのか?

宮川氏
 お役に立つのであれば全面的に協力したい。

 ソフトバンクのセキュリティオフィサーを、LINEヤフーの委員会に投入することも話しており、ソフトバンクが通信キャリアとしてセキュリティを守っている知見をすべて投入したいと考えている。

――LINEヤフーの問題、いつまでに結論の方向性を出していく考えがあるか?

宮川氏
 いつまでにということを明確に申し上げるタイミングではない。

 膝をつき合わせてじっくり議論をしていきたい。

――総務省から2回行政指導があったが、2回目の指導の再発防止策提出が7月1日となっていたが、この日についてどのように考えているか?

宮川氏
 できれば、本日(9日)の決算発表まで間に合わせたいと思っていたが、未だ詰めるところが残りすぎており、これからも継続して議論している。

 相手の企業の考え方もあり、ソフトバンクとして踏み込めるところをよく話し合うしか無いと思っている。

 7月1日が次のターゲットになるが、私の直感ではそこまでにまとまるのは、「非常に難易度が高い」のではないかと感じている。

――NAVERとの委託関係をゼロにするという話があったが、資本関係の見直しまで踏み込む必要がどこまであるのか?

宮川氏
 3月5日に(2回目の)行政指導が出た際に、共通システムの分離と委託業務委託の見直しを求められた。業務委託先への強い依存関係があるなかで、管理監督が適切に行われていないという話が総務大臣からも出た。

 我々の理解だと、強い資本的影響力があるなかで委託管理が適正に行われるとは言いがたい関係になると思っている。「委託関係がゼロになれば資本は触らなくてもいい」という考え方もあると思う。

 ソフトバンクとしてはLINEヤフーからの強い要請を受けた段階なので、それについてもどの条件が適切なのか、ソフトバンクもわかっていない。親会社としても真剣に向き合う必要があり、NAVERもテーブルを降りたいといっているわけでもないので、継続して議論していく。

――PayPayとLINEのID連携が時期未定になったが、グループシナジーによる成長見込みに影響はあるか?

宮川氏
 ID統合をした中でソフトバンクのモバイルと連携していきたいと考えているので、連携が延期することは、我々としても「ちょっと痛いな」という感じ。

 一方で、PayPayとソフトバンクのモバイル事業は、連携をどんどん進めている。LINEヤフーもセキュリティをもう一回強化してもらって、ID連携をしても問題ない状態、ほかのIDの足を引っ張らない状態になってくれるところまでセキュリティを強化すれば、LINEと一緒になればいいに決まっているので、我々も「辛抱するしかない」と思っている。

――Zホールディングスでの経営統合から3年経つがLINEヤフーへの期待感はどうか?

宮川氏
 現況「ちょっとスタート、ずいぶんけつまずいているな」と感じている。

 もう少し、経営統合をうまくやってくれないかな?と常々思っている。ソフトバンクの歴史から言うと、いろんなキャリアをM&Aしながら一緒になって、組織統合して、戦力として、また次の一手を打っていくのがソフトバンクのスタイルだったので、まさかこんなに手こずるのかなというのは思っていたが、いろんな事情があると思う。

 事情を理解せずにあまり口を出すわけではないが、今置かれている環境をまずは打破してもらい、更なる成長に向けて堂々と歩いて行けるように進んでもらえたら良いんじゃ無いかと思う。