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ソフトバンクのESG、「AIとの共存」を目指した環境施策や「AIガバナンス委員会」の設立など

 ソフトバンクは26日、ESG説明会を開催した。

 ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス、企業統治)を指す言葉で、その企業が長期的な成長のなかでの姿勢や社会などにどのようなものをもたらすかなどが示される。

 ソフトバンクでは、「情報革命で人々を幸せに」という企業理念を持っており、今後AI技術を活用し成長していくなか、ESGの分野ではどのように行動していくのか?

ソフトバンクが目指す「AIとの共存社会」

 代表取締役社長兼CEOの宮川 潤一氏は、長期ビジョンの背景として「AIとの共存社会の準備」としたうえで、AIは秒単位で進化しており、人類の生活は「おそらく今まで経験したことのない社会に大きく変わる」と指摘する。

 データ処理に必要な計算能力も、2030年には1960エクサFLOPSと現在の約300倍となり、データ処理に必要な電気量も、大型発電所6基相当になると説明。地球温暖化の抑制とデータ処理能力の増加を両立できるようなインフラの構造設備が必要だと宮川氏は説明する。

 一方、中国では西部にグリーンデータセンターを建設し、東部でのデータ処理需要をまかなう「東数西算」が進められており、政府がデータ処理のための構造作りに向けて取り組みが進められている。宮川氏は「本当に非常に考えられているプロジェクト」とし、同社もこれを参考に日本での取り組みを進めているという。

 日本では、再生可能エネルギーのポテンシャルが、北海道や東北、九州などの地方に分散している一方、データ処理は東京と大阪に集中している。「地方で発電し都市に送れば良いのか」について、宮川氏は「送電網の容量で、大量の送電は困難」とし、現在のインフラとしては大きな課題を抱えていると指摘。

 そこで、同社が目指している次世代インフラとして「北海道や九州など再生可能エネルギーの豊富な地域にデータセンターを分散して配置していくこと」とした。

 すでに同社では、2023年に北海道に次世代社会インフラの要となるデータセンターの構築を発表しており、全国各地に分散したデータセンターをあたかも1つのデータセンターとしてみなす基盤の開発も進めている。

AIの登場で新たに発生するリスク

 一方で、AIと共存する社会が始まると、新たに発生するリスクについても先回りして備える必要があると宮川氏は説明する。

 現時点でも、ディープフェイクや自動運転車の事故、個人情報の流出など、さまざまなリスクが予想されているとし、予想が困難な時代だからこそ、進化し続けるAIガバナンスが必要不可欠と考えていると指摘。

 社内では、外部有識者の支援も生かしてAI倫理ポリシーの作成や、規程、ガイドライン、教育コンテンツの作成などを行い、AIコンテストの実施や国産生成AIの開発などをすすめている。

 AIガバナンスの推進強化を目的に、4月からは外部有識者も入る「AIガバナンス委員会」を設立し、ガバナンスの運用状況を確認し、見直しを進めるなど、変化の激しいAI領域でさまざまな意見を取り入れ、迅速に知見が取り入れられるAIガバナンスを目指すとしている。

ESG戦略

CSR本部 本部長兼ESG推進室 室長の池田 昌人氏

 CSR本部 本部長兼ESG推進室 室長の池田 昌人氏は、同社のマテリアリティ(重要課題)を6つに分けて用意している。具現化することで、長期ビジョンの成長戦略の具体化とともに「社員がどこへ目指すべきか」を具体化したものであるとしている。これがESGの中核になっていると池田氏は説明する。

 また、すべてのアクションにはKPIを設定し、すべての社員がわかりやすく推進できる体制を整えているという。役員報酬との連動も実施し、一丸となって進められているとしている。

環境問題

 気候変動問題について、同社の基本的なスタンスとして「エネルギーを通じて事業を展開しており、しっかりとそれに向き合う責務を感じている」と池田氏は説明。気候変動に関する財務情報開示を積極的に進めていく枠組み「TCFD」にも賛同し、事業の継続展開を意識しながら進めているという。

 2030年までには、自社の温室効果ガス排出をゼロに、2050年までにネットゼロ(排出量から吸収/除去量を差し引いた合計をゼロにする)を目指すとしている。再生可能エネルギーの推進や省電力化、本社ビルの省エネ化などを推進し、これらの数字の達成を目指す。

 また、自然循環に関する取り組みも、スマートフォンのリサイクルやペーパーレスの推進など、さまざまな取り組みを実施している。

人材戦略

人事本部 本部長兼総務本部 本部長兼Well-being推進室 室長の源田 泰之氏

 人事本部 本部長兼総務本部 本部長兼Well-being推進室 室長の源田 泰之氏は、同社の人材戦略について、AIエンジニアやグローバル人材、DX人材などこれまで会社が必要としていた人材が、これからの事業戦略でますます重要度が増してくると説明。また、社内のリスキリングなどをすすめ、新規領域の拡大などにも取り組んでいるとしている。

 人事戦略にあたっては、人事の基本的なものに加えて、グループ内の要員の最適化や、パフォーマンスを最大化するための働き方改革の推進や、雇用体系の変化などをすすめる。

 一方で、社員の成長が会社の成長につながるとし、社員自らの成長をサポートする取り組みも実施している。

 たとえば、全社員向けの研修制度として「SoftBank University」を用意し、さまざまなコースを用意している。この中には認定制度を用意しており、社員が社員を教える形態が整えられている。社員が教えることで、よりリアルな事例を使ったことで伝えられるようになるという。

 また、孫 正義氏の後継者育成を掲げる「SoftBank Academia」や、社内起業制度の「SoftBank InnoVenture」を設けている。社内起業制度のなかには、グループ社員全体が参加できる起業家育成プログラム「イノベンチャーラボ」の仕組みがあり、すでに21社が事業化している。

 採用面では、攻めの採用としてさまざまな層に対して個別にアプローチしているほか、特にインターンに力を入れており、学生側と部署側とどちらも希望があれば、インターン先の部署に配属される制度などもある。

 同社では、このほか生成AIの活用基盤や女性活躍推進などを進めている。