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新世代の太陽電池を搭載したKDDIの「ペロブスカイト基地局」を見てきた
2024年3月8日 00:00
KDDI、KDDI総合研究所、エネコートテクノロジーズは、ペロブスカイト太陽電池を使用した携帯電話基地局の実証実験を、群馬県大泉町の基地局で2月に開始した。
携帯電話基地局で使用する電力を、グリーン電力でまかなうべく、さまざまな取り組みを進めているが、これまでの太陽電池を使ったものと、今回のペロブスカイト太陽電池を使った実証とどのように違うのか？
KDDIのCO2排出、全体の約半分が携帯電話基地局
KDDI 技術統括本部 技術企画本部 カーボンニュートラル推進室 室長の市村 豪氏によると、KDDIのCO2排出のほとんどが通信関係で、そのなかで約半分が基地局運営によるものだという。
このため、KDDIでは、基地局のカーボンニュートラル化を進めており、一部の基地局では太陽光パネルを敷地内に設置することで、晴天の昼間では使用電力をまかない、夜間や曇天、雨天時には、電力会社のカーボンフリープランを使用することで、CO2排出量を削減している。
太陽光パネルでは、1日あたりの使用電力量の3割以上を供給できているという。このような基地局は、関東エリアを皮切りに、2024年から東北、中国地方に拡大している。
今回の実証では、電柱型の基地局
一方、今回の実証では、敷地が狭い電柱型の基地局のカーボンニュートラル化を図るべく、電柱に据え付けられる「円筒形」の太陽電池を使用する。
従来の太陽光パネルでは、パネルを9枚使用するため、鉄塔型のような大きな基地局で利用していたが、今回の実証では、コンクリート柱の基地局で、敷地面積を広げることなく太陽電池を設置できる。面積としては、4畳半～6畳程度の敷地面積で済むという。
今回実証実験の場所に選ばれた群馬県は、KDDIとauリニューアブルエナジーが「GX推進による自律分散型社会の実現に向けた連携協定」を締結しており、さまざまな条件を考慮し選定された。
実証実験では、コンクリート柱の基地局に、合計10本の円筒型太陽電池を設置する。太陽電池は、ペロブスカイト太陽電池だけでなく、CIGS太陽電池やCIS太陽電池の3種類を使用する。いずれの太陽電池も、曲げられるものを使用しており、将来的な製造コストなどを含めて、今後活用できるものを検討していくという。
実際には、今回の検証で基地局に使用するすべての電力をまかなうことはできないが、日の出～日の入まで発電できているという。これにより、ピーク時で使用電力の最大20％を太陽電池でまかなえる。
実証では、今後約1年間かけて、耐久性などを検証していく。
電柱から飛び出す形で設置
実証の現場では、電柱の南西と南東方向に電柱から飛び出す形で設置されている。電柱に腹巻きのようにも設置できるというが、ケーブルの配置などを考慮し、今回の実証では金具を使って設置する形になったという。
高さは8～11mの場所に設置される。太陽電池自体はシート上の物で、それをアルミポールに巻き付けて設置する。太陽電池を搭載したポール自体の重さは4kg程度で、大人1人でも持てる大きさ、重さだ。
太陽電池で発電された電力は、電圧変換装置などを経由して、無線機やバッテリーなどに出力される。太陽電池以外の装置も、既存の装置を収めたボックスの中に収まる程度のものだといい、地上にも大がかりな装置を置かずに設置できる。
ペロブスカイト太陽電池自体は、太陽電池のなかでも第3世代と呼ばれる電池で、現在は一般的な市場に流れていないが、将来的に量産されると低コストかつ高効率化が期待できるという。また、主要な材料が、日本が世界シェア2位という「ヨウ素」を使用しており、供給面でも利点がある。
災害対策にも
地震などの災害発生時には、停電などで停波してしまうことがある。1月の能登半島地震では、通信ケーブル断が多く、Starlinkの活用に注目されたが、停電が発生した基地局では、発電機やその燃料の運搬に、多くの人手が必要であったという。
今回の実証では、太陽光による発電を行うため、災害時に非常用バッテリーを温存できる可能性があると話す。
実際に、同社の検証によると、サステナブル基地局では晴天時の昼間は太陽光発電だけで使用電力をまかなえ、余剰分は非常用バッテリーに充電することで、バッテリー切れで停波となってしまうタイミングを遅らせることができるとしている。
