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IIJの第3四半期決算は増収増益、ドコモの接続料単価は1万円台に/20GBを超えるプランも検討中

左から、専務取締役CFOの渡井 昭久氏、代表取締役社長兼Co-CEO&COOの勝 栄二郎氏、創業者 代表取締役会長兼Co-CEOの鈴木 幸一氏

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は、2024年3月期第3四半期決算を発表した。売上収益は2010億9800万円(前年同期比+8.5%)、営業利益は202億8000万円(同+7.9%)、四半期利益は131億3700万円(同+1.3%)だった。

 システムインテグレーション(SI)事業は需要が旺盛である一方、案件の大型化による期またぎが発生した影響で、今期決算では下振れした一方、ネットワークサービスが堅調に推移。個人向けサービス「IIJmio」についても、回線数を伸ばしているほか、NTTドコモのデータ接続料の22年度単価確定による費用戻りが1億円強発生している。

 なお、通期予想の見通しは、2023年5月発表のものから変更されていない。

IIJ mioなど個人向けサービス

 IIJ mioモバイルサービスなどが含まれる個人向けインターネット接続サービスの売上高は、前年同期+2.0%の187億200万円、IIJmioモバイルサービスでは+1.8%の162億2100万円となった。

 IIJmio全体の回線数は、前年同期から+4万1942回線の123万8625回線。ギガプランに絞ると、前年同期比+11.7万回線、前期比+3.2万回線の99.5万回線となった。

法人向け、MVNEサービス

 法人向けのモバイルサービスの売上高は、前年同期比+23.3%の100億4500万円、回線数は前期比+21.1万回線の224.9万回線となった。新規ユーザーの獲得に加え、既存ユーザーの取引が拡張できたことで高増収を達成できた。

 見守りGPSトラッカーなどIoTデバイスのほか、タクシー搭載端末やドライブレコーダー、訪日外国人向けサービスなどで大口の追加発注が伸長しているとしている。

 また、ほかのMVNOへプラットフォーム/サービスを提供するMVNEの売上は、前年同期比+4.7億円の78.7億円、回線数は前期比+0.8万回線の114.7万回線となった。提供事業者数は、前年同期比+13社の189社となった。

ドコモのデータ接続料、22年分は「1万9979円」

 IIJmioなどで利用しているドコモ回線について、2023年12月に「2022年分のデータ接続料」が確定した。22年3月に提示されたMbps単価の月額「2万327円」から348円減少した「1万9979円」となった。これをふまえ、今期決算では、一括費用戻りで1億円強が営業利益に反映されている。昨年同期は5億円強の戻り効果があった。

 MVNOがMNOに支払うデータ接続料は、MNOが将来かかる原価を予想し、それに基づいて向こう3年間の接続料単価見込みを提示して接続料を支払い、後日かかった原価に基づいた確定単価を提示し精算する方式を採っている。

 2023年3月に提示されたデータ接続料の見込みは、2023年が1万5644円(前年比-21.7%)、24年が1万3084円(同-16.4%)、25年は1万1255円(同-14.0%)で推移している。その年の確定単価は翌年末に確定する。

IIJmio「20GBを超えるプランも検討」

代表取締役社長兼Co-CEO&COOの勝 栄二郎氏

 質疑で、電気通信事業法の改正で端末値引きルールの改定について「ソフトバンクの新端末購入プログラム」と「IIJとしての現況」を問われた代表取締役社長兼Co-CEO&COOの勝 栄二郎氏は、IIJとして「2024年に入ってから大きな影響はない。IIJとしては、おそらく国内で1番の機種ラインアップで提供しており、従前から通信と端末の分離を推進している」とコメント。

 キャリアの端末購入プログラムについては、「キャリアが乗り換えるときに債務残高、残債を帳消しにするという“法の穴を抜けたような”やり方だと感じている」としたうえで、IIJとしては1つの方向として「長期利用者向けに還元ができないかという方向で検討している」と回答。長期利用者向け特典の提供時期については「それも含めて検討中」とした。

 また、同法の改正で規制の対象外となったことについては「歓迎すべきこと」としながらも、「従来ガイドライン通りにしてきたので、大きな事にはならない。長期利用者向けの還元も、そんな極端なことをするつもりはない」とコメントした。

 ところで、これまで低~中容量のプランが多かったMVNO各社だが、近年は中容量の目安とされてきた20GBを超える通信プランを提供する事業者が増えている。勝氏は「確かに大容量利用者が増えてきている」とし、「大容量のニーズに沿った新しいプランを検討している」とした。

政府クラウド「自治体は低廉なものを求めている」

代表取締役社長兼Co-CEO&COOの勝 栄二郎氏

 2023年11月に、政府クラウドの提供事業者として国内の企業「さくらインターネット」が選ばれた。IIJが選定されなかった旨について勝氏は「基本的には今の政府の方針については賛同している。適切なクラウドサービスシステムへ対応していきたい」とコメント。

 続けて勝氏は「地方自治体向けには、政府の要件が緩和され、自治体では使わない機能があり、自治体も『費用の低廉化』を希望している」とし、今後これらにも取り組んで行きたいとした。

 また、生成AIを含めたAIの動向については「インターネットの上にAIがある」とし、同社としては通信の質を良くするのがまず第一、次いでセキュリティ、データを蓄積/分析する基盤となるデータセンターを冷却する技術などが課題になるとした。