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クアルコムが“生成AI”への注力アピール、アモンCEOが基調講演で語る
2023年10月26日 00:01
米ハワイで、24日(現地時間)、クアルコムのイベント「Snapdragon Summit」が始まった。
同日午前、イベント開幕を告げる基調講演において、クリスティアーノ・アモンCEOが語ったのは、ジェネレーティブAI(生成AI)の重要性だ。
約2時間に及ぶイベント初日の基調講演は、例年、同社の最新製品が発表される場。スマートフォン向けチップセット「Snapdragon mobile」プラットフォームなどが発表される機会であり、今年も基調講演の後半に紹介された。
一方、今回の講演前半を占めていたのは、先述したように生成AIの重要性についてだ。アモン氏は、クアルコムが2023年の今、生成AIへどのように向き合っているか、「クアルコムは通信の会社から、コネクテッドプロセッシングカンパニーへ進化しようとしている」と端的に表現する。
アプリ中心の世界に生成AIがやってくる
スマートフォンに代表されるように、近年のスマートデバイスは、さまざまなアプリを利用するプラットフォームになっている。
そこに生成AIが新たに組み込まれようとしている、とアモン氏は指摘する。
現在のところ、生成AIがその性能を十分に発揮するのは、パワフルな処理能力を備えたコンピューター上でのこと。一方で、スマートフォンのようなデバイスは処理能力へ偏りすぎると消費電力が増してしまうため、高い処理能力を必要とするサービスは、Webサイトやアプリのようなかたちでスマートフォンから利用できるとしても、処理自体はクラウドコンピューティングが担うことがほとんど。
しかし、アモン氏は、今後、デバイスとクラウド上のアプリが統合される状況になると説明。ユーザーのデバイスへの関わり方が変化することになり、アプリに対する考えも変わり、たとえばアプリを利用するのも会話のようなインターフェイスとなり、直感的で、パーソナルになる、と説明。そうした変化は、スマートフォンだけではなく、パソコン、自動車など幅広いデバイスにも発生していく、とアモン氏は未来像を描く。
その上でアモン氏は、デバイスの垣根を超えて、生成AIの力を活用できる環境をいかに整えるかが重要と指摘。「次のスマートフォンかもしれないデバイス」のため、クラウドではなくデバイス上でいつでも利用できる効率的に動くAIモデルが求められるようになり、その実現に向けたコンピューティングパワーの実現を目指すことが、Snapdragonでのアプローチと語る。
画像生成AI「Stable Diffusion」をスマホ上で
今回発表された「Snapdragon 8 Gen 3」の目玉機能のひとつは、現在、クラウドで稼働する画像生成AI「Stable Diffusion」をスマートフォン上で動作させるというもの。
2月に開催された国際展示会「MWC」でも、Snapdragon 8 Gen 2で動作する同様のデモンストレーションが披露されており、今回も会場内ではSnapdragon 8 Gen 3で文章からイラストを生成する様子が披露された。そのデモでは、生成まで約20秒ほどと、時間がかかるものだったが、アモン氏は今後登場するフラッグシップのSnapdragonデバイスでは、0.6秒で画像生成まで実行できると語った。
マイクロソフトやメタと連携
基調講演では、アモン氏とマイクロソフトを率いるサティア・ナデラCEOとの対談の映像や、FacebookやInstagramを手掛ける米Metaのマーク・ザッカーバーグ氏からのビデオレターを紹介。パートナーシップを通じて、Snapdragonシリーズのチップセットを搭載するパソコンやXRグラスで生成AIモデルを動作させ、AIの恩恵をユーザーに届けようとするクアルコムの姿勢があらためてアピールされた。
24日(現地時間)に発表されたSnapdragonシリーズ(PC向け、スマホ向けチップなど)の詳細は25日にあらためて披露される。これらの新製品では、従来よりもパワフルな処理能力を備えるだけではなく製品の垣根を超える「Snapdragon Seamless」といった環境を用意し、ユーザーが好みのデバイスで、やりたいことを実現できるようにするという将来をもたらそうとしている。
アモン氏は「業界にとってエキサイティングなとき。時代は生成AIの時代へ変わりつつある。モバイル業界、モバイルコンピューティング業界にまったく新しいサイクルを生み出すだろう」と熱弁をふるい、講演を締めくくった。