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NTTなど4者、光通信と光量子を融合する技術――スーパー量子コンピューター実現に向け一歩

 NTTと東京大学、理化学研究所、科学技術振興機構の4者は、43GHzでのリアルタイム量子信号測定に成功したと発表した。スーパー量子コンピューターの実現や既存のコンピューターの高性能化、省電力化などが期待される。

 大規模化と高速化を実現できる「時間領域多重化技術」を用いた測定誘起型の光量子コンピューターでは、超電導量子ビットで一般的な「定在波量子ビット」ではなく光子が高速で飛来する「進行波料理ビット」を用いていることが特長。これを時間軸上に並べることにより、大規模化の際に装置の大型化や素子の集積化の必要がなくなるという。

 3者は「光パラメトリック増幅器」により光量子情報を保持したまま、光を増幅し、これまで難しかった光通信を適用する手法を開発した。従来、光通信用のディテクターをそのまま光量子分野に適用した場合、十分な帯域を確保できるものの量子情報が劣化し利用が難しいという課題があった。一方で、従来の光量子用に設計されたディテクターでは量子情報は劣化しないものの、動作クロックは数MHz程度と高速計算が難しい。今回、3者ではPPLN導波路を用いた「光パラメトリック増幅器」を用いて、高速計算と量子情報の保持を実現することに成功した。

 NTT先端集積デバイス研究所 研究員の井上飛鳥氏によれば、光通信用43GHzディテクターとリアルタイムオシロスコープを用いた実験の結果、量子ノイズの圧縮率がおよそ65%で、光量子コンピューティングの動作に必要最低限とされる量子ノイズ圧縮の値である60%を超えていることから、従来技術と比較して1000倍以上ものクロック数で動作する量子演算を実現できる見込み。

左=東京大学大学院 吉澤教授。右=NTT先端集積デバイス研究所 井上研究員

 光通信と光量子の技術をかけ合わせることで、100GHz超の帯域での高速量子演算が可能になるほか「長分割多重化技術」を用いて、装置規模を拡大することなく量子プロセッサーのマルチコア化が可能になることから従来型のコンピューターを凌ぐ、100GHz帯100マルチコアのスーパー量子コンピュータが実現できるという。

 現在、全世界でのエネルギー消費におけるその3割ほどがコンピューターによるもの。東京大学大学院工学系研究科の吉澤明教授は、今回開発に成功した技術は省電力化にも寄与することから、環境問題への改善にも期待感を示した。実用化時期としては、1年半後程度には限定された問題に活用できる状態でクラウド公開するとしている。