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「電波オークション」実現に向け総務省で有識者会議が始動

 総務省は28日、割当て方式検討タスクフォースの第1回を開催した。本稿では公開された資料をもとにその方針や事業者の意見を紹介する。

電波オークション方式を検討へ

 同タスクフォースは、「5Gビジネスデザインワーキンググループ」のもとで開催されるもので、5G用周波数の割当てにおける電波オークションの具体的な制度設計について検討する。

 現在、日本では携帯電話の周波数を割り当てる際に、各事業者のエリア整備計画や事業計画などを考慮して審査する比較審査方式のひとつである「総合評価方式」を用いている。この仕組みでは審査項目に各社が「特定基地局開設料」というかたちで周波数に値段をつけるというオークション的要素が加味されている。

 オークションの方式には、単純に入札額のみを考慮する「純粋オークション」のほか、カバレッジなどの条件を課す「条件付きオークション」、サービスや技術を係数化し入札額をあわせて評価する「スコアリングオークション」などがある。タスクフォースで制度設計を進めるのは、これらのうち条件付きオークションとなる。

 オークションは事業者を審査する仕組みに比べて透明性の確保が期待されるが、入札額の高騰による基地局整備の遅れや特定の事業者に周波数が集中することなどが課題として挙げられる。

ミリ波などが電波オークションの対象に

 今後、5Gで新たに割当てが予定されるミリ波やダイナミック周波数共用を用いる周波数は、大容量の伝送が可能なものの伝搬距離の短さやほかのシステムと共用する特性上、高度な技術が必要とされるなどの特性がある。

 タスクフォースでは、世界に先駆けて利用技術やノウハウの確立、イノベーションの実現促進が重要としている。過去の実情を踏まえて、今後の周波数割当では、事業者ごとに想定するニーズがさまざまあると想定。これまでのカバレッジ重視の考え方よりも、それぞれの創意工夫によるイノベーションを後押しし電波の有効活用を促進するべきとされ、そのような周波数割当ではオークション方式が適しているとされている。

 一方で前出の課題をクリアすべく、十分な周波数枠の確保や周波数キャップの適用、ラウンド制限など、諸外国の例を踏まえて検討される。

 具体的にオークション方式の導入を検討している周波数は2025年度末までに新たに割当てが予定されている4.9GHz帯、26GHz帯、40GHz帯。同タスクフォースでは、政策目標の適切な設定やそれを踏まえた割当て方式の制度設計が必要なほか、周波数の利活用やビジネス展開を妨げる課題の洗い出しや行政・事業者に必要な対応策の検討、増加する事業者の負担を考慮して、オークション収入でインフラ整備の高度化や安全・信頼性確保のための対策強化への活用が検討される見込み。

事業者からは

 ヒアリング対象の事業者として参加したNTTドコモとKDDIからは、タスクフォースの方針に同意する方針が示されている。

 さらに両社ともにタスクフォースが示す方向性と同様に、落札価格の高騰を防止するため、オークションのラウンド数に上限を設けるべきとしたほか、特定の事業者への周波数集中を回避するため、各社が持つ周波数に上限を設ける「周波数キャップ」の適切な設定の設定を求めた。このほか、帯域幅・ブロック数を十分に確保し、特定の帯域へ入札の集中・落札価格の高騰を防ぐ必要があるとも主張した。

 また、ドコモでは周波数の有効利用は客観的データにもとづき評価すべきとして、より多くのトラフィックをより多くの基地局で提供している状況を反映したトラフィックデータと基地局の設置密度などを重ねた指標、第三者による測定の結果などを例に挙げた。加えて高い周波数帯の評価は、混雑する駅のホームやスタジアム、繁華街など逼迫するピンポイントなエリアでのトラフィック容量対策に対する利用状況、ニーズに応じたエリア展開など新しい評価項目の検討を訴えた。

 KDDIからは落札価格について、現状では「特定基地局開設料の標準的な金額を著しく下回る金額」が公表されていることから、最低落札価格を利用する地域の経済規模など、現在と同様の方法で設定し、あらかじめ示されるべきとした。

 オークション収入の使徒については、両社で5G地方展開の促進支援、携帯電話が利用できないエリアの対策への補助、災害対策・復旧費用への補填などが意見として提出された。KDDIは、事故対策費用やBeyond 5G時代の日本の国際競争力工場に向けた研究開発の推進などを挙げた。

 同タスクフォースは、28日に開催された第1回ののち、順次会合を実施して5月下旬には報告書案が提出される見込みとなっている。