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西新宿で「5G」「メタバース」「自動配送ロボ」2024年度実現へ、宮坂副知事らが語るその狙い

 東京・西新宿エリアにおいて最先端のサービスを実装して新たなまちづくりを目指す「西新宿先端サービス実装産官学コンソーシアム」が発足した。5Gやメタバース、自動配送ロボットなどを駆使した新サービスを、2024年度をめどに実現していきたい考えだ。

 先端サービスを社会実装して、東京・西新宿のビル群全体を活性化させるためのコンソーシアムが設立。中央、モニターの左が宮坂学・東京都副知事

高層ビル立ち並ぶ西新宿で

 新宿駅の西側にある西新宿エリアは、都庁をはじめとして大規模なビルが建ち並ぶエリアだ。

 新宿NSビル、京王プラザホテル、KDDIビル、新宿アイランドビル、新宿住友ビルなど、日本でも有数のビル群だが、この一帯で先端的なサービスを実現することで、街のさらなる活性化と発展を目指すのが今回のコンソーシアムだ。

 西新宿エリアでは、2010年に新宿副都心エリア環境改善委員会が設立され、ビル群に居を構える多くの企業が参加。ビル単体の集客や環境への取り組みには限界があるとして、公共空間を含めてエリア全体の利活用を目指していた。2020年にはこれが西新宿スマートシティ協議会へと発展した。

新宿副都心エリア環境改善委員会の参加企業とその範囲。エリア内は高層ビルが建ち並んでいる

 協議会では、自動配送ロボットやARナビアプリなど、8件の実証実験を実施。これをさらに発展させ、実際の本サービスとして実装することを目指して、産官学が連携したコンソーシアムを設立された。2024年度までに成果として本サービスをスタートしたい考え。

これまでの取り組みの経緯。最終的な目標は先端サービスの都市実装

 都副知事の宮坂学氏は、「サービスを提供する民間事業者のみならず、地元企業が多く参加しているのが特徴」と話し、都や民間企業の意向だけでなく、地元民の声を取り入れてサービスを実現していきたいと話す。一大ビル群だが、エリアを1つの商店街と見立て、地域の活性化を目指すのが今回の取り組みだ。

宮坂副知事

5つの分野でサービス実装目指す

 コンソーシアム発足時点で61社・者が参加。今後も順次参加企業や団体などを募っていきたいとしている。まずは5つの分科会を立ち上げ、参加者が共同でサービス実装を目指していく。

コンソーシアムの構成
大学発スタートアップや大学研究室とも連携

 たとえば自動配送分科会(代表・川崎重工業)では、自動配送ロボットを川崎重工業が開発し、自動運転システムをティアフォーが、5G通信環境をKDDIが提供。フードデリバリーのmenu、医療物資の配送・回収の武田薬品工業が、それぞれサービスを提供する。

実装を目指すサービスの例
5つの分科会を立ち上げて議論や実証実験を行う

 実際の実証実験は、2022年冬に1カ月ほどだが、それまでに分科会で様々な議論を行い、実験後も同様に議論を進めていくことで、最終的に本サービスとしての実装を目指す考え。

リアルハプティクス✕5G

 他にもモーションリブが代表の「感触制御技術を活用した社会課題の解決手段の検討分科会では、同社が開発した感触制御技術「リアルハプティクス」を応用。同技術搭載デバイスと5G、ARを組み合わせることで、スマートフォンの画面内に現れる動物に触れて、その本当の感触を感じられる、という実験を行う。舞台は新宿中央公園で、「新宿感触動物園」を2023年2月中旬に提供する。

新宿感触動物園は、ARで出現した動物に、「実際に触れた感触が伝えられる」というもの
専用装置(画面はイメージ)に触れることで、その動物の実際の感触が伝わる、という
イメージとしてはこのように動物に触れている、というようなもの
実際にリアルハプティクスの感触を体験して驚きを見せる宮坂副知事
実際のデモ装置。1枚目の装置でつまむ操作をすると、2枚目の装置が挟んだ物体の感触が伝わる
柔らかいスポンジの感触、硬いビー玉の感触が伝わり、しかも「つかんだビー玉が滑る」という感覚さえも伝わる。この「硬くて滑る」という2つの感触が伝えれるのも特徴だという

乗換案内で回遊性をアップ

 ジョルダンが代表の地域の認知度向上・事業参画を促進するデータ連携プラットフォーム分科会では、ジョルダンの乗換案内・スマートシティモードをさらに拡張してエリアの回遊性向上などに繋げる。

小田急はXR、大成建設はデジタルツインをリード

 小田急電鉄が代表の地域の魅力向上に向けたXRの都市実装検討分科会では、VR/ARを使った施設やサービスを提供。

 大成建設が代表の都市サービスの創出と実装を実現するデジタルツイン分科会では、同エリアの高精度な3D都市モデルを構築して新たなデジタルツインを構築。様々なユースケースの基盤としての確立を目指す。

 こうした5つの分科会が、実際に事業化してサービスを提供することを目指した活動を行い、2024年度にはこれを実現。その後も、継続した取り組みを続けていくことが想定されている。

大学も参画、西新宿全体での実装へ

 参画企業の中には、モーションリブやcotonが大学発のスタートアップで、筑波大学岩田研究室のような大学からの参加もあり、事務局となる東京都側も、各種の手続きや関係機関との調整で積極的に参加し、社会実装に向けて連携したい考えだ。

今後は、先端サービスを単独の企業が事業化するだけでなく、西新宿エリア全体で連携することで、持続的な展開と発展を目指していく。