ニュース
ソフトバンクが実用化を目指す「テラヘルツ通信」とは
2021年7月25日 09:00
先日、本誌では「ソフトバンクの湧川氏が語る、Beyond 5G/6G構想」というタイトルで記事を公開した。内容は、ソフトバンク 先端技術開発本部の湧川隆次氏の講演を取り上げたものとなっている。
講演の中で湧川氏が紹介した技術のひとつに、「テラヘルツ通信」がある。現在はミリ波帯が5G通信で用いられているが、テラヘルツ帯はさらにその先、もっと高い周波数帯だ。
ソフトバンクは、「周波数の拡張」というテーマのもと、テラヘルツ通信の実用化を目指していく。本記事では、その取り組みをご紹介する。
超高速で大容量な通信の実現へ
テラヘルツ帯は、一般的に100GHz~10THzまでの周波数帯域を指している。ソフトバンクは未開拓かつ広大なこの周波数帯域を利用し、超高速で大容量な通信の実現を目指す。
テラヘルツ通信の速度目標は、100Gbps~1Tbps程度になるという。これは、5Gのミリ波を大幅に上回る数字だ。
その反面、課題として挙げられるのが、電波の減衰の大きさ。電波が劣化しやすく、通信エリアが狭くなってしまう。
エリアの拡大に向けては課題も
減衰によって通信エリアが狭くなる課題を解決する方法として、アンプで電波信号を増幅する方法や、電波を集中的に発射する「ビームフォーミング」が挙げられるが、それぞれに課題がある。
アンプの課題
まず、アンプで電波信号を増幅する方法に関して、基地局やスマートフォンに入っているアンプでは、GaN(窒化ガリウム)などの半導体を使って電波を増幅している。
ただし、こうした既存の増幅器は100GHzまでの増幅にしか対応していない。研究開発も進んでいるが、100GHz以上の電波信号の増幅は現状では難しい。
ビームフォーミングの実現を目指す
前述のような課題があるため、テラヘルツ通信に関する実験はビームフォーミングではなく、ビームを固定する形で実施されている。
ただしこの場合、アンテナの方向が少しでもずれてしまうと電波が劣化してしまうため、移動通信には向かない。
「移動通信のためのテラヘルツ」を掲げるソフトバンクは、ビームフォーミングを実現するために「回転アンテナ」の独自開発を進める。
これは、文字通りアンテナ部分を回転させることにより、これまで固定されていたビームを動かすという取り組みだ。
回転アンテナの開発では、パラボラアンテナの原理を応用し、ビームを形成する。反射板は3Dプリンタで制作されており、コスト削減を実現している。
この回転アンテナを活用することで、360度の通信エリア化や、複数端末の同時通信などが実現するという。