レビュー
ドコモ、今年の冬コミは「令和の新スタイル」で対策強化、5G SAや新型基地局車による対策を現地で見てきた
2025年12月31日 07:00
東京ビッグサイト(東京都江東区)で12月30日~31日の期間、「コミックマーケット107」が開催されている。毎回大勢の参加者が訪れ、一般参加者は11時の開会を目指して会場周辺の待機場に列を作り、会場に入っていく。
例年話題になるのが、携帯電話の通信環境だ。3Gが全盛の時代からこの話題は尽きず、「電話が繋がらない」「メールの問い合わせが繋がらない」といった経験があるユーザーも少なくないはず。近年では、SNSによるサークル情報の拡散やカタログのWeb化など、現地でのデータ通信はより必要性を増してきている。
そのため、各キャリアは“爆増”する通信トラフィックを捌くべく、臨時の基地局を整備したり、基地局の調整をしたりして“コミケ対策”に力を入れている。ただ、残念ながらその効果も空しく「○○が繋がらない」「○○が今年も繋がらなかった」といった投稿も少なくない。
そんな中、NTTドコモから「今年の通信対策はすごいから、当日見に来て欲しい」(意訳)とのお誘いがあった。本当に大丈夫だろうか? 若干の不安と期待を胸に、筆者は“冬コミ”1日目の有明に向かった。
今回のドコモの対策
先述の通り、イベントなど大多数のユーザーが訪れる場所では、携帯キャリア各社がそれに向けた対策を実施する。ドコモ担当者によると、たとえば基地局間のトラフィックを調整するためアンテナの角度を調整したり、周波数の均等分散を施すといった対策や、出力やアンテナの指向(電波を強く出す方向)の調整、そして基地局設備自体の増設といった対策が挙げられる。
ドコモでは今回、MMU(Massive MIMO Unit)を搭載した臨時基地局を活用し、通信対策を強化した。従来のアンテナよりも多くのアンテナ素子を搭載したもので、従来よりも2倍以上の通信性能を発揮するという。MMUでは、端末ごとにエリアを最適化するビームフォーミングや端末に合わせた周波数リソースを提供するMassive MIMOに対応するため、より通信リソースを効率よく利用できる。
臨時基地局は、従来の東待機列(東棟屋外臨時駐車場)のほか、西待機列(センタープロムナード)側にも設置し、一般待機列に対しての通信対策が強化された。また、東待機列の臨時基地局には、同社初の「3セクタMMU車両」(後述)が導入され、面的な対策も進められた。
加えて、会場の屋内そして臨時基地局を含めた屋外エリアも含めて全面を「5G SA」(Stand Alone)対応とすることで、SA対応端末を含めた全体の通信速度向上が図られた。
ドコモの「5G SA」推し
今回担当者は「5G SA」を押していきたいと意気込む。5G SAは、5G専用のコア設備を利用した通信サービスのこと。SAではない5G(NSA、Non Stand Alone)は、コア設備を4G通信と共用しており、4Gのトラフィック量が多ければ5Gでも通信が遅くなってしまう可能性がある。SAであれば、コア設備まで専用のもので提供されるため、通信速度の低下が抑えられるといったかたちだ。
道路に例えると、5G NSA(従来の5G)幅が広い5G道路に出るまでの道のりが4Gと同じだったため、4Gの渋滞に巻き込まれてしまう。一方、5G SAでは、5G道路に出るまでの道のりも専用の道路が敷かれているため、4Gの渋滞に巻き込まれずに済む。さらにたとえると、東名高速で名古屋方面に向かうのに、5G NSAは東京インターまで下道(4G)で向かうのに対し、5G SAでは首都高速を使って直通で向かうので早い、といった具合(高速も渋滞してるという話は別にして)。
5G SA対応の端末と5G SAの契約(5G SAオプション、当面無料)があるユーザーであれば、専用線を使える5G SA通信を利用することで、速い通信速度が期待できる。また、SAにトラフィックが逃げることで、5G NSAや4Gユーザーにとっても混雑が若干緩和される可能性がある。担当者としても、多くのユーザーに5G SAを利用してもらえれば、より効果的な対策を打てたことになる、というわけだ。
現地ではどうか
早速、西待機列の様子を見に行ってみる。
西待機列では、センタープロムナードの待機列に向かって臨時基地局が設置されている。担当者が約2カ月かけて交渉を重ね、ようやく設置許可を得られたものだという。
筆者が訪れたのは、9時30分過ぎ。基地局の正面には参加者が列を作っており、これから並ぶユーザーも大勢通り過ぎる場所だ。
通信速度を計測してみる。今回は、ドコモの5G NSAと5G SAで計測した。5G NSAでは下りが1.8Mbpsだったのに対し、5G SAでは132.9Mbpsとなり、同じ5G通信でも大きく差が現れた。端末自体が異なるため、あくまで参考値となるが、5G SAの優位性は示せる結果ではないだろうか。
続いて、東待機列に移動すると、待機列の入口にはドコモの新型基地局車と“コミケ対策”をアピールする幕が登場。これが、同社初だという「3セクタMMU車両」となる。3セクタとは、3つのセクター、指向性アンテナを使って3方向に電波を発射することを指しており、これまでよりもより広い範囲をカバーできる。
筆者が東待機列に訪れたのは、10時30分過ぎでちょうど一般参加者の入場が始まったところだった。「3セクタMMU車両」は、待機場の後方にあり、参加者の列は前方に進みつつあった頃だったので、5G NSAであっても速度が遅いと感じることはなかったが、それでもスピード計測を実施すると、5G NSAが下り125.0Mbpsに対し、5G SAは249.2Mbpsとストレスなく利用できることがわかる。
東待機列では、合計3台の移動基地局車が設置された。いずれも「MMU」と「5G SA」に対応している。ビッグサイト内の基地局も5G SA対応となっているため、屋内外問わずにSAの威力を実感できるのだという。担当者は、5G SA対応端末があれば、「コミケット期間中だけでも5G SAの設定をオンにしてほしい」と呼びかける。
現地担当者も神経をとがらせる
担当者は「2023年の夏コミ(コミックマーケット102)では、参加者の皆様から厳しい意見をいただいた」と語る。設備面では、ビッグサイト内の基地局設備の更新を進め、また臨時基地局を含めて最新設備、技術を投入しており、“コミケ対策”に注力している様子が見えた。ドコモ以外のキャリアも通信対策を実施しているが、中には「スピードテストを実施できない」回線もあり、各社対応に苦慮しているようだ。
ドコモでは、コミケット期間中もSNSを監視し、通信環境に関する投稿を分析している。たとえば、特定の箇所に関するコメントが多く寄せられた場合、実際に現地担当者が現地に向かい、設備の点検を実施するという。
もちろん、場所やタイミングで通信環境は時々刻々と変化していく。読者諸君も速度の低下を感じたり、逆に速度の改善を感じたりした場合は、ぜひSNSに投稿し、次回開催時の改善を期待しよう。


















