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ソフトバンクの22年3月期決算、22年度はPayPay連結も含めて営業利益1兆円へ

宮川氏

 ソフトバンクは、2022年3月期の決算説明会を開催した。説明会には、同社代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏らが登壇した。

登壇者
  • 同社代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川潤一氏
  • 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 榛葉淳氏(リモートで登壇)
  • 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 今井康之氏
  • 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原和彦氏
左から宮川氏、今井氏、藤原氏
榛葉氏(リモートで登壇)

2021年度連結業績

 宮川氏はまず、2021年度の連結業績について説明。売上高は5兆6906億円で、前年度から4900億円ほど増加。9%の増収は過去最高となっている。

 セグメント別の売上高において、宮川氏は4%増収となったコンシューマー分野に言及し、「新料金の逆風を受けている真っ最中だが、端末の販売が好調だった」とした。唯一の減収となった流通については、「半導体不足の影響を受けた」という。

 また、2021年度の営業利益は9857億円で2%の増加を記録し、過去最高益を達成。

 セグメント別に分けると、コンシューマー事業が3%の減益となり、要因は「通信料の値下げの影響が大きかった」(宮川氏)。そのなかで、法人事業などの他事業が減益分を補うかたちとなった。

 純利益は5175億円で、5%の増加を記録。営業利益同様、これも過去最高となっている。

 宮川氏は2021年度のサマリーを振り返り、「すべての項目で期初の見通しを上回った」と胸を張る。続けて、「社長就任の初年度ということで厳しい1年ではあったが、過去最高の売上や利益を達成できて、なんだかほっとしている」と語った。

2022年度連結業績予想

 続いて宮川氏は、2022年度の経営方針や業績予想を紹介した。

 2022年度の予想として、売上高は前年比4%増の5.9兆円となる見通し。また、営業利益は1兆円以上を見込む。

 純利益の予想は5300億円以上。2022年度の業績予想は、2020年8月に発表された中期業績目標をすべて上回るものになるという。

 セグメント別の営業利益予想に目を移すと、コンシューマー事業は25%減。法人事業が17%増、流通事業が3%増、ヤフーやLINEを含むその他事業で78%以上の増加を見込む。

 営業利益の予想について、コンシューマー事業での25%減(約1600億円減)に言及した宮川氏は、その主要因として、「通信料の値下げの影響」「好調だった端末販売の反動などによる販管費の増加」を挙げた。

 また、その他事業での大幅な増加(78%以上)に関連して、宮川氏は「時期は未定だがPayPayを子会社化する」とコメント。そこで発生する再評価益などが、増加分に含まれるとした。同氏は、「PayPayに対しては我々も巨額の投資をしてきたので、それが少しずつ、いろいろなかたちで評価される時期が来た」と語った。

 また、今年度の設備投資額は、前年比8%増の4300億円となる見込み。宮川氏は、2022年3月に人口カバー率90%を達成した5Gネットワークの整備について、「まず面を5Gでしっかり埋めきって、トラフィックについては需要に応じたスポット設計をしていく」と意欲を見せる。

2023年度以降について

 宮川氏は、2023年度以降の考えについても言及した。

 「今期は1兆円の営業利益を達成するわけだが、正直に言うと、PayPayの連結影響を除いた場合、ビジネスの営業利益は残念ながら前年対比でマイナスになる」と宮川氏。

 同氏は「通信料の値下げの影響が本当に大きい」と嘆くが、「2023年度はビジネス成長で増益を目指す」と語り、意気込みも見せる。

 通信料の値下げの影響をカバーするのが、固定費の削減。宮川氏が「昨年からいろいろと手を打ってきた」と語る固定費の削減効果が、来年以降に出てくるという。同氏は、「通信料値下げによる減益の影響は、2022年度を底として、大幅に縮小する」と語った。

事業別の取り組み

 宮川氏は最後に、事業別の取り組みを紹介した。

 まず、コンシューマー事業では、モバイル分野と各種サービスのシナジー効果により、契約数の拡大を図る。

 純増数が順調に回復しているというモバイル契約について、2023年度には3000万のスマートフォン契約数を目指す。

 法人事業では、対大企業では取引額の拡大を図り、対中堅企業では顧客数の拡大を図るというように、企業規模に応じた戦略でビジネスを拡大していく。

 物販eコマースの取扱高が11%増を記録したヤフー・LINE事業では、付与ポイントの一本化やID連携(予定)といったクロスユース施策により、経済圏の拡大を図る。

 また、決済取扱高が5兆円を突破したPayPay事業においては、決済手数料収入の増加に加え、加盟店向けサービスや金融サービスを含む「事業の多層化」により、高収益を目指していく。

質疑応答(一部)

――PayPayの還元について、今後の考えは。

宮川氏
 還元については、積極的に行っていきたいと考えている。これはZホールディングスの決算内容にも関わる話であるし、PayPayも今は別会社の構造になっているので、「積極的に還元していきたい」ということだけお伝えする。

――PayPayの子会社化について詳しく教えてほしい。

藤原氏
 現在の議決権だが、SBG(ソフトバンクグループ)が50%、我々が25%、Z(Zホールディングス)が25%という構成。我々が優先株を持っていて、Zも同様に(優先株を)持っている。すべて転換できると、我々が33%、Zも33%保有できるので、Zが我々の子会社という意味では、66%ということで連結可能なポジションになる。

 これが優先株のしくみとなっており、現在は戦略面やガバナンス面での協議を進めている。

――PayPayの上場に関してはどう考えているのか。

宮川氏
 現時点で決まっていることはない。

――通信料値下げの影響で、22年度は900億円の減益を見込んでいるとのことだが、値下げの影響とはどのような内容なのか。

宮川氏
 私たちのブランドでいうと、ソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOの3つがあるが、現時点でお客さまに支持されているのは正直ワイモバイル。

 ワイモバイルのユーザーが増加していることは、順調といえる。ただし、本来であればソフトバンクのユーザーが多かったのが、ワイモバイルが少しずつ増えているということになると、全体的には減収につながる。

――5Gの“面展開”に関する現状と、今後の展望を教えてほしい。

宮川氏
 もともと「“なんちゃって5G”ではないか」と揶揄されたこともあったが、ローバンドで面展開を加速している。具体的にいうと、700MHzと1.7GHz帯の2つを最大限活用して、まずは面をいったんつくる。加えて、都心部に集中して、ミッドバンドからミリ波を展開している。

 (人口カバー率は)現時点では90%を少し超えたところだが、最終的にはやはり、98%だとか99.8%だとか、現在の4Gでやっている環境までは持っていきたい。4Gのエリア=5Gのエリアというところまではやりきるつもりだが、環境がもう少し整うまでは、どこまでフルアクセルを踏むか慎重に判断したい。

 5Gと4Gのスマートフォンの違いについて、事業者である我々自身も、「そんなに変わらないじゃないか」と考えている。いろいろなデバイスがこれから出てくると思うので、そうしたタイミングなども見ながら効率的な投資をしていきたい。

――端末販売が好調だったという話があった。決算短信を見ると、「高価格端末の比率が増えた」とあるが。

宮川氏
 今は、ちょうど5Gの普及時期にあたる。チップセットの価格などもあり、5G対応端末がどうしても高くなりがちである、ということがひとつ要因にあると思う。

榛葉氏
 高価格端末でいうと、やはりiPhone 13を中心としてiPhoneが好調だった。そして、AndroidではPixelのような端末が、お客さまの需要に応えられた。

 それに加えて、LINEやPayPayなどといった、グループ全体でのシナジー効果も大きかったのでは。

――今後の成長戦略について、“非通信”が占める割合はどの程度をイメージしているのか。

宮川氏
 きちっとしたお話は来年の5月にしたいと考えているが、ここでは現時点で考えていることだけお話しする。

 今回、営業利益に占める通信の割合はずいぶん下がった。望ましいのは、(通信と非通信の)両方を伸ばしながら比重が変わってくるということだが、最終的には通信が3分の1くらいになって、3分の2くらいが非通信の部分で構成されるような会社を目指していきたいと思っている。