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あらためて知っておきたい「人口カバー率」、4キャリアに定義と最新値を聞いた

 携帯電話サービスのサービスエリアがどれほど広がったか示すものとして、「人口カバー率」という言葉がある。携帯電話サービスが広がる時期にはよく耳にしていたものだが、ある程度、エリアが行き渡った、ここ数年はちょっと出番が減ってきた言葉でもある。その一方で、たとえば最近では、第4の携帯電話事業者である楽天モバイルが、「人口カバー率が96%に達した」と発表した。

 しかし、「人口カバー率」という言葉が意味する内容はどういったものか、ご存知だろうか。もちろん知っている人にとっては「いまさら」なワードだが、実は携帯電話が広がっていた時期と現在では、その定義は違う。今回はあらためてその内容をご紹介しよう。

「役所をカバー」したらアップするもの?

 「人口カバー率」については、2010年代初めごろまで「国内総人口に対する、市町村役場において携帯電話サービスの利用が可能である市町村の人口の総和の割合」とされてきた。ちょっと極端かもしれないが、平成の大合併などで広大な面積をもつ市町村であっても、その役所/役場さえサービスエリアに抑えてしまえば、人口カバー率に含めることができることになる。

2014年にリニューアル

 ところが、2014年に電気通信サービス向上推進協議会は人口カバー率の算定方法を「全国を500m四方に区切り、そのうち半分以上をカバーしていればエリアカバーとしては100%、半分未満であれば0%と見なす」という新基準を発表し、各社もこれに合わせる形をとった。

 とはいえ、この基準変更から8年経った。通信も第5世代の通信サービス(5G)が登場している。「人口カバー率の定義」は、2022年の今、どうなっているのだろうか。

各社の人口カバー率の定義

 本誌では、あらためてNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に人口カバー率の定義を聞いた。

  • NTTドコモ
    「全国を500m四方に区切り、そのうち半分以上をカバーしていればエリアカバーとしては100%、半分未満であれば0%と見なす」という定義を4G、5G共に用いています。
  • KDDI
    2014年に公表した4Gの定義「全国を500m四方に区切り、そのうち半分以上をカバーしていればエリアカバーとしては100%、半分未満であれば0%と見なす」4G/5Gで人口カバー率の定義に違いはありません。
  • ソフトバンク
    2014年に示された「全国を500m四方に区切り、そのうち半分以上をカバーしていればエリアカバーとしては100%、半分未満であれば0%と見なす」という算定基準に則っています(4G、5Gとも)
  • 楽天モバイル
    4G人口カバー率につきましては、総務省規定の人口カバー率に準じて算出しております。屋外基地局による夜間人口に対する人口カバー率、かつ人口カバー率は、国勢調査に用いられる約500m区画において、50%を超える場所で通信可能なエリアを基に算出しています。つまり全国を約500m四方に区切り、そのうち半分を超える場所が通信可能な区域であれば、人口カバー率の算定対象としております。

 4社の回答はいずれも「約500m四方のメッシュで区切った上で算出した」というもの。50%以上をカバーしていればサービスエリアとみなしている。前述した2014年の基準に沿ったものだ。

新たな指針「基盤展開率」との関係

 一方で、5Gの周波数が割り当てられる際、総務省は、「人口カバー率」ではなく「基盤展開率」という指針を審査項目に加えた。

 「基盤展開率」は、日本全土を10km四方のメッシュに区切り、海上や無人地帯などを除いた区域に対して、5G専用周波数を使った基地局が設置されている範囲の割合を指している。

 もう少しかんたんに説明すると、「人口カバー率」は人口が集中している地域をカバーすれば割合が上がるが、「基盤展開率」は広い土地をサービスエリアをカバーしないと上がらない。5G通信では、都市部だけでなく地方など人口が少ない地域もサービスを提供することを総務省は求めた形だ。

各社の「人口カバー率」と「基盤展開率」

 そこで、4社に5G(楽天モバイルは4Gも)の「人口カバー率」と「基盤展開率」の最新値を聞いたところ、以下の回答が得られた。

各社の「人口カバー率」と「基盤展開率」の最新値

  • NTTドコモ(5G)
    非開示情報との回答
  • KDDI(5G)
    • 基盤展開率の直近の実績は非開示
    • 人口カバー率も現状開示していないが、「お客さまの生活動線にこだわってエリア化を推進しており、現在鉄道17路線の構築に加え全国131商業地域で5Gがご利用可能」との回答
  • ソフトバンク(5G)
    • 基盤展開率の最新値は非開示。計画に沿って順調に推移しているとの回答。
    • 人口カバー率は1月末時点で85%超。
  • 楽天モバイル(4G・5G)
    • 5Gの基盤展開率と人口カバー率は公表していないとの回答。
    • 4Gでは基盤展開率の算出は行っていない(「第4世代移動通信システム普及のための特定基地局の開設に関する指針」において、1.7GHz帯の開設計画の記載事項として、基盤展開率の記載を求められていないため)
    • 4Gの人口カバー率は2月4日時点で96%に到達。

 残念ながら最新の数値は非開示という回答が多く、5Gでは「ソフトバンクの人口カバー率85%超」が最新の数字であることがわかった。

 なお、総務省は2021年12月28日付で「5G基地局整備の加速化に関する措置」を要請。各社に22年3月11日までに5Gの「基地局数」や「基盤展開率」、「人口カバー率」などに関して、2025年度までの各年度末日ごとの計画を提出するよう要請している。このため、3月以降に順次各社最新の計画値が公表されるものと思われる。

 ちなみに各社の5G専用周波数帯の基地局開設計画で示された「認定から5年後の基盤展開率」は、ドコモが97.0%、KDDIが93.2%、ソフトバンクが64.0%、楽天モバイルが56.1%となっている。

各社の申請内容

 2019年の認定から今春で3年となる5Gサービス。市町村の役場だけカバーできればいいとされていた時代とは異なり、5Gサービスは今後「スポット(点)」ではなく、より広く「面」でのエリア整備が求められている。今後のエリア展開に注目したいところだ。