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米ナイアンティック、AR開発プラットフォーム「Lightship」正式ローンチ、集英社やソフトバンクなど参画

 米ナイアンティック(Niantic)は、AR開発者向けプラットフォーム「Lightship」をグローバルで展開すると発表した。

 あわせてパートナー企業第1弾としてソフトバンクや集英社、LIFULL(ライフル)などの参画が発表された。

ジョン・ハンケCEO

Lightshipとは

 これまで「Ingress」「Pokémon GO」を展開し、最近では「ピクミンブルーム(Pikimin Bloom)」といった「現実世界を舞台にしたゲームアプリ」を展開してきたナイアンティック。

 「Lightship」は、同社が手掛けてきたAR(拡張現実)技術をもとに、より多くの企業や開発者がARコンテンツを展開できるようにするプラットフォーム。

 今年5月にはARDK(AR開発キット)のベータ版が提供されてきたが、今回、正式に提供されることになった。

 その柱は「リアルタイムでの現実世界の再現(Mapping)」、「環境の理解」(Understanding)、「体験の共有(Sharing)」の3つとなる。

Mapping

 Mappingでは、スマートフォンのカメラ機能を用いて、現実世界のオブジェクトを撮影すると同時に、同社技術により深度情報を読み取って3Dメッシュマップを作成する。

 リアルタイムに生成された3Dメッシュマップにより、ユーザーの周囲にある地形、建物などを把握し、仮想のオブジェクトが現実と重なりあわせて表現される。たとえばバーチャル上のボールを蹴って、現実世界の生け垣の向こうへ飛ぶと、バーチャルのボールは生け垣に隠れ見えなくなる。

 こうした体験は、LiDARセンサーのようなデバイスを持つ機種だけではなく、標準的なRGBセンサーのカメラでも利用できる。Lightshipで開発されたARアプリを使うユーザーのいち情報や状況を読み取って、3Dメッシュマップが構築され、リアリティのあるARレイヤーを開発できる。

Understanding

 Understanding(環境の理解)では、「セマンティック セグメンテーションAPI」により、仮想のオブジェクトを現実世界の物体の表面と、より正確に反応できるようにする。

 地面や空、水、建物など、ユーザーの周囲にある要素を識別してくれる。

Sharing

 ナイアンティックのARゲームの大きな特徴のひとつは、「世界中で同時に複数のユーザーが、同じ体験を共有できる」という点だ。

 Lightshipでもそうした体験を実現できるようにする。

 用意されるAPIでは、最大5人のプレイヤーを同時にサポーするARセッションを簡単に作成できるという。ユーザーの体験する内容はリアルタイムに同期され、シームレスで、よりインタラクティブなコンテンツを開発できるとうたう。

 体験の共有をスピーディに実現するため、ARDKではP2Pネットワーキングスタックと管理サーバーでバックアップされる。 ARDKではプレイヤーロビーシステム、同期クロック、セッション永続性ストレージなど、負荷の軽いマルチプレイヤーゲーミング機能が用意される。

ビジュアル・ポジショニング・システム

 同社設立当初から目指してきた「世界の3Dマップの作成」に向け、「Niantic ビジュアル・ポジショニング・システム(VPS)」のデモンストレーションも披露された。

 VPSでは、ユーザーが、現実のある場所に仮想オブジェクトを置くと、その場所に仮想オブジェクトが存在し続ける。そしてほかのプレイヤーにもそのオブジェクトが見えるようになる。

 2022年には、一部の都市での本格的なローンチに向けてVPSへのアクセスが一部開発者に開放されるという。

APIの料金

 セマンティック セグメンテーションAPI、メッシングAPIなど、ARDKの中核となるAPIはユーザー数に関わらず、現在は無料で提供される。

 マルチプレイヤーAPIは、月間アクティブユーザー数が5万人未満では無料、5万人以上は有料となる。ただし、2022年5月1日以前にARDKへ登録したすべての開発者については、最初の6カ月間、アプリの規模を問わず無料で利用できる。

第1弾のパートナーブランド

 日本からは、長くナイアンティックのゲームパートナーとして活動してきたソフトバンクのほか、出版社の集英社、不動産事業のLIFULLが名を連ねる。

 このうち集英社は、「ワンピース」などのキャラクターを現実世界へ取り込めるとして、2022年にもアプリをリリースする方針を示した。

 また、音楽フェスのCoachellaや、ゴルフジュニアリーグでの展開を予定するPGA of Americaなどもパートナー第1弾。

 ロンドン塔など英国の歴史的な施設を管理する団体、Historic Royal Palacesは、「ロンドン塔周辺の堀を、2022年から花で埋め尽くされた新しい風
景へと変貌させようとしています。Historic Royal PalacesはロンドンのPreloadedの開発スタジオと協力し、塔の周辺にいる人や世界中の誰もが見ることのできるARフラワーの体験を構築しました」とコメント。

 同じく英国のScience Museum Groupは2022年5月にARアプリをローンチする。

 Warner Music Groupのメッセージでは「好きな音楽を聴いたときに想像する感情的な風景をARでは現実世界にもたらせる」としており、好みの局が流れると空の色が変わったり、初めて曲を聴いた場所野近くを歩くと曲のベースラインが聞こえたりするといったイメージが描かれている。

 このほか、JR(アーティスト)、Superblue(アーティスト)、TRIPP、Universal Picturesがパートナーとなる。

 開発スタジオパートナーは、T&S、Curiosity、Designium、Heavy.io、Preloaded、Nexus Studios、Trigger Globalとなる。

ナイアンティックがAR開発企業に投資

 あわせてナイアンティックでは、AR開発企業を対象としたNiantic Venturesを設立する。

 同社では「リアルワールド メタバース」(現実世界のメタバース)というビジョンを掲げ、グローバルなエコシステムに貢献するアプリを開発する企業へ、2000万ドルを投資する。