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ナイアンティックCEO、「メタバースはディストピアの悪夢」

 「Pokémon GO」などを提供するナイアンティック(Niantic)社のCEOであるジョン・ハンケ(John Hanke)氏は、8月10日に同社のブログで、仮想世界「メタバース」に関する考えを明らかにした。

メタバースとは

 メタバースという言葉が初めて登場したのは、1992年のこと。SF作家のニール・スティーブンソン(Neal Stephenson)氏による小説『スノウ・クラッシュ(Snow Crash)』の中で、この言葉が使われた。

 近年のデジタル技術革新に伴い、インターネット上における仮想世界を意味するメタバースは、次世代のビジョンとして注目を浴びている。

テクノロジーを見直す

 ジョン・ハンケ氏はメタバースに関して懐疑的な見方を示しており、メタバースをテーマとした小説や映画は、「テクノロジーが間違った方向に進んだディストピア的な未来への警告」であると表現した。

 その上で、「ナイアンティックは、テクノロジーを使って拡張現実の『現実』に寄り添うことができる」と述べている。

 同氏によれば、「テクノロジーは人間の基本的な経験をより良くするために使われるべきであり、それらに取って代わるものではない」。

現実世界と仮想世界をつなぐプラットフォーム「Lightship」

 ナイアンティックが目指すのは、現実世界と仮想世界をテクノロジーによってつなぎ、ユーザーに対してより良い現実の体験を提供すること。

 同社はその目標に向けた取り組みのひとつとして、開発者向けのプラットフォーム「Lightship」を提供中。ユーザーの力も借りながら、現実世界をさらに魅力的なものにする方法を追求していく。

ARスマートグラスへの投資

 1972年にアラン・カーティス・ケイ(Alan Curtis Kay)氏が発表した論文『Dynabook』で予測されていた通り、デスクトップパソコンからノートパソコン、そしてスマートフォンへと、デジタルデバイスの小型化が進んでいる。

 ナイアンティックはスマートフォンのその先をすでに見据えており、ARスマートグラスへの投資を進めている。

 特にゲーム分野でARスマートグラスを活用することで、たとえばポケモンが本当に近くを歩いているかのような、まったく新しい体験が実現するという。

「リアリティチャンネル」というアイデア

 ナイアンティックが仮の名前として「リアリティチャンネル」と呼ぶアイデアは、現実世界に対して、ポケモンやマリオなどのゲームの世界を重ね合わせるというものだ。

 現実世界の建物はポケモンの世界にあるようなパステルカラーで彩られ、近所のショッピングセンターにはPokémon GOのジムが建つかもしれない。

 ナイアンティックによれば、こうした体験を通じて、「日常生活が少し不思議で、興味深く、刺激的で、そして何よりも楽しいものに変わる」。

 同社はリアリティチャンネルの活用方法として、ゲーム分野にとどまらず、たとえば建設現場などへの展開も想定している。