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ナイアンティックと任天堂から新スマホアプリ「ピクミンブルーム」、ピクミンと現実の街を歩こう
2021年10月27日 09:00
米ナイアンティック(Niantic)は、任天堂と共同開発したスマートフォンアプリ「ピクミンブルーム(Pikmin Bloom)」の提供を開始した。まずは豪州とシンガポールで配信が開始され、その後、世界各地の国と地域で配信が開始される。
「ピクミンブルーム」は、その名の通り、任天堂の人気ゲームに登場するキャラクター「ピクミン」と一緒に街を歩いて楽しむゲームアプリ。「Pokémon GO」や「Ingress」を手掛けるナイアンティックらしく現実の世界を舞台にした内容に仕上げられている。
遊び方
ゲームを始め、歩くことで「ピクミンの苗」を入手できる。その苗をリュック(プランターパック)にセットし、歩数が貯まると成長し、大きくなるとピクミンが誕生する。ピクミンは、ユーザーと一緒に歩くようになり、複数いれば隊列を作る。任天堂と共同開発したこともあり、プレイヤーのアバターはMiiとなる。アプリ上でのカスタマイズは限られるが、ニンテンドーアカウントと連携するとWebサイト上でフルにカスタマイズできるという。
歩くことで、ピクミンは「フルーツ」などをいつの間にか手に入れる。「デコピクミン」と呼ばれる、アクセサリーのようなアイテムを見つけることもある。
フルーツからは「エキス」が貯まる。笛アイコンをタップしてピクミンを集め、エキスをピクミンにあげると、ピクミンの頭には花が咲き、その花をタップする(花びらを摘む)ことで花びらがアイテムとなり、歩く際に花びらを使うと、歩いた場所に花が咲くようになる。道に咲いた花は、ほかのユーザーからも見えるようになる。
ARモードも用意され、現実世界にあたかもピクミンがいるかのように表現して、触れ合うこともできる。
1日の終わりには、歩数とルートを振り返ることができ、「ライフログ」機能にメモや写真を追加できる。
課金要素として、ピクミンを育てる鉢植えを置くスロットを増やすといった点がある。
ほかのユーザーとの関係
ほかのユーザーとはフレンドになれる。時おり、ピクミンが通った場所の写真をポストカードとして持ち帰ってくることがあり、そのポストカードをフレンド登録した、ほかのユーザーへ送ることもできる。
一方、活動した痕跡は、「街に咲いた花」が、ほかの人に共有される。その花を消すこともでき、自宅を隠すようなこともできる。
体験してみると……
実際にプレイしたところ、ピクミンと徐々に仲良くなることがあることがわかった。
また、花を何度も咲かせたピクミンは活力を失ったように花を咲かせなくなるものの、しばらく休憩させておけば良いなど、ピクミンとの関係を深める要素がある。
コミュニティデイも
毎月「コミュニティデイ」が開催され、多くのユーザーが同じ時間帯に歩くことで、街中に多くの花を咲かすことになる。イベントの詳細は追って案内される。
ジョン・ハンケ氏、コロナ禍のなかでの「歩くこと」の価値
ピクミンと歩く。そして街に花を咲かせる。それが「ピクミンブルーム」の大まかな内容だ。
冒頭、「ゲームアプリ」と表現したが、数日、テストプレイに参加したところ、果たしてゲームと言えるのか? と思えるほど、「静かでおだやかな世界」という印象を与える仕上がりだ。
ナイアンティック創設者でCEOのジョン・ハンケ氏は、「任天堂とともにピクミンブルームを配信できることを嬉しく思う。このアプリは『歩くことをもっともっと楽しくする』ために作られたアプリ」と語る。
「外の世界を冒険して新しい発見をして人々と繋がりを持つ」というミッションを掲げるナイアンティックにとって、「ピクミンブルーム」はまさにそのミッションを体現する存在。
今年3月に開発が発表され、世界的なコロナ禍の中で「歩くことの価値が再発見される、ということがたくさんあった。自由に出かけられない、でもその近所を歩く。そういったことによって、この世界の美しさに再度気づかされる。そんなことがたくさんあった」とハンケ氏は語り、歩くこと、外へ出かけることの価値があらためて見直された時代と指摘する。
そうした状況で、誰もが楽しめるアプリを任天堂と開発することになった。「外へ出かける」ためには、どのコンテンツ、サービスが良いのか……という議論の結果、ピクミンを題材に開発されることになったという。
宮本茂氏が語る「ピクミンブルーム」
ハンケ氏が「ピクミンブルーム」開発のきっかけを語ったあと、ビデオレターで登場したのが、ピクミンの原作者でもあり、スーパーマリオなど数え切れない作品で知られる任天堂の宮本茂氏だ。
宮本氏
「皆さんこんにちは。ピクミンの原作者でスーパーマリオの父でもある宮本茂です。ジョンさん、ありがとうございました。私もナイアンティックの皆さんと、このアプリの開発はとても新鮮で楽しく進めています。
さて、皆さん地球上には人の目には見えないピクミンという不思議な生き物がいます。
あなたのそばにもいるんですよ。
そして、このピクミンブルームではスマートフォンを通して、皆さんもピクミンを見ることができるようになります。
ピクミンは虫のような植物のような不思議な生き物で、頭には花を咲かせます。
ピクミンブルームでは、初めての場所に行くと新しいピクミンが見つかります。あなたが笛を引いて指示をすると仕組み立ちは大勢集まってきて仕事したり、荷物を運んだりしてくれますよ。遠くに出かける時も必ず連れて行ってくださいね。
旅先でピクミンの写真を撮ったり、出かけた記録は日記帳のように残ります。さあ、ピクミンと一緒に思い出を作る生活を始めてみませんか? それではジョンさんよろしく」
ナイアンティックが語る「ピクミンブルーム」
発表にあたり、ナイアンティックは本誌を含むグループインタビューに応えた。対応したのは、ハンケ氏のほか、Pokémon GOの開発をリードした人物でもあり、「ピクミンブルーム」を開発したナイアンティックの東京スタジオ代表の野村達雄氏、同スタジオエンジニアリングディレクターの淺川浩紀氏、そしてナイアンティックでプロダクトマーケティングを担当する須賀健人氏。
野村氏
いろんなその機能があるんですけども、基本的に「ピクミンブルーム」は、毎日の散歩、通勤通学などが楽しくなるようなアプリを目指しています。歩くことでピクミンを増やし、歩くことで花を咲かせて、歩くことで思い出を残す。
そんな、歩くことが楽しくなるアプリになっています。
――「ピクミンブルーム」開発の課題、難しさはどういったものがありましたか。また、ナイアンティックのこれまでのゲームと比べ、悪い言い方をすれば刺激が少ないゲームに思えましたが……。
野村氏
ARでは「外で遊ぶ」ということは、生活の一部としてやっていただく必要があります。家庭用ゲーム機だと、「今から1時間、ソファに座ってゲームするぜ」となりますが、そうではなく、人によって異なる、生活のリズムの中で、通勤時間中にちょっとだけですとか。
どうやって生活に溶け込ませられるかという点は、かなり難しいチャレンジでした。その答えが、実は「刺激が少ない」「派手さがない」ということに繋がります。
極端な話をすると、「ピクミンブルーム」をそんなに気にせず生活していただいて、時々思い出していただくのが、良いバランスだと考えています。1日歩いて終わり、帰宅して「今日は、何歩、歩いたかな? あのピクミン、どんなものを見つけてくれたかな? どんなピクミン育ったかな、ちょっと日記して残そうかな」とスローに、それでいて長く楽しんでいただく。そんなものができたんじゃないかと思います。
これが100%の完成形ではなく、サービスとして提供していくにあたって、これからも進化させ続けていきます。
ただ、方向性としては「すごく刺激の強いゲーム」というよりも、「生活の一部」「ご飯のように毎日食べても飽きないもの」にしていきたい。で、それができているんじゃないかなと思っています。
ハンケ氏
野村の語ったことに加えて、私自身の印象をお伝えしますね。開発中のバージョンで、この1年以上、遊んでいました。このアプリはですね、ゲームというよりも「相棒のような存在」だと思って持っています。
「ピクミンブルーム」を開いて、一緒に散歩して、時々開くだけでもいい。これがやはりとても良いんですよね。
たとえば、カフェまで散歩しに行き、到着前に少し開いて「ピクミンブルーム」を開いて、様子を見て、コーヒーを頼んでまた少し見る。
「ピクミン」が私に対して求めすぎないというところが、とてもバランスの良いサービスだと思っています。なので、自分がピクミンと会いたい時、このサービスを開けば、ピクミンがそこに居てくれる。そんな日常の相棒、あるいは友達のような存在になってくれると思っています。
――ハマる要素、継続性を高める要素はどういった点になりますか?
野村氏
ゲーム要素として、「デコピクミン」という存在がいます。ピクミンが、特定の場所に落ちてるものを身につけることがあります。カフェに小さいコーヒーカップを身につけたピクミンがいたりとか、あるいは薬局などを通ると、そこに落ちてる歯ブラシを背負ってるピクミンがいたりとか。どんなピクミンがいるか、見つけていただくというのは、楽しみ方のひとつとしてご用意しました。
楽しみ方についても、皆さんの生活と結びつくことがすごく大事です。
――ナイアンティックの理念とは相容れないかもしれませんが、昨今はVRのメタバースへの注目が高まっています。ナイアンティックとしてどう取り組みますか?
ハンケ氏
我々は、いかに現実の世界を変えていくかという考え方をしています。ユーザーがテレビのチャンネルを変えるように、この現実世界のチャンネルを変えるというイメージで我々は考えています。なので、その日の気分によってこのチャンネルを変えることによって、現実世界も変わっていく。
SF的世界観がよければ「Ingress」、ポケモンと遊びたいなら「Pokémon GO」、そして平和な世界であれば「ピクミンブルーム」を選ぶと。
何千もあるチャンネルのなかで、ユーザーが趣味趣向にあわせてチャンネルに合わせていく。そんな未来を我々は想像しています。
――なぜピクミンだったのでしょうか。
野村氏
最初の検討時、「日常生活をサポートするようなものを作りたい」ということを任天堂さんと考えました。日頃の通勤や通学を楽しくするにはどうすればいいのか。自分のリアルの生活にフォーカスをしたいと。
ピクミンの原作では、「とある惑星の出来事」という設定ではあるんですが、実在するものが登場します。たとえばパナソニックの電池が登場したりとか。
「リアルな世界との強い結びつきがある」と僕は考えまして、「自分が歩いていく、後ろにピクミンがたくさんついてくる」「実はこの世界にピクミンがもともと存在しており、これまでみんな見えなかっただけ」という設定もあり、今回の作品でピクミンがベストなのでは? と考えたんです。
――Pokémon GOについてけなかったユーザーにはちょうど良いアプリのようにも思えます。ストレスの多い社会に一石を投じたいという思いもあるのでしょうか。
野村氏
繰り返しになりますが、どう生活の中で使っていただくかっていう点がチャレンジだと思っています。それでいて、これまでのナイアンティックの取り組みと大きく異なるわけではないとも思っています。
これまでも、たとえば「Ingress」では日常が冒険になり、「実はあなたの見えている世界は、ちょっと違う世界なんだよ」という設定があります。
普段の生活がちょっと面白くなる、ちょっと良くなるのは、ナイアンティックとして永遠の課題です。今回の「ピクミンブルーム」はその回答のひとつです。飾らない日常といいますか、普段通りの日常のなかで、カフェを訪れたらデコピクミンが登場し、動物園に行けばそこにあわせたデコピクミンが増えます。生活に寄り添ったものになっているんです。プレイ結果は日記のようにログとして残ります。みんなの生活を少し楽しくさせる回答なのかなと。
――現実世界の企業とのタイアップで、何かしらゲームに登場する可能性はあるんでしょうか。
野村氏
現時点で、お答えは控えさせていただけたらと思います。
――任天堂からの要望はありましたか?
野村氏
任天堂さん、宮本さんとは密にやり取りしており、週に2~3回。話し合うことも多かったです。なので、具体的に「これ」と絞り込むのは難しいですね。今も任天堂さんと日々話し合いながら進めていますので、「ピクミンブルーム」の全ての部分において、お互いのアイデアが集まっているとお考えください。
――Pokémon GOと一緒に遊べるようになっていますか? 課金要素はあるのでしょうか。
野村氏
もちろん一緒に遊べます。「ピクミンブルーム」のデザインしていく中で、Pokémon GOと競い合うアプリではなく、補完し合うようなあのサービスを作ろうということをずっと念頭に置いていました。
どちらかと言えば、ピクミンブルームは、ポケットに入れたまま遊べる要素が多くなっています。歩いているだけで、バックグラウンドで色んなことが起き、花を植えるのもポケットにしまったままで良いようになっています。
ピクミンブルームの一方で、Pokémon GOのレイドをしたり、ポケモンを捕まえたりできるのです。
課金については、たとえばピクミンを育てるプランターのスロットなどを追加で購入いただけます。ただ、ナイアンティックとしては重い課金は追求していません。スロットを買うだけではピクミンは生まれず、さらに歩く必要があります。課金することで、さらに歩きたくなるというふうにデザインしています。
――フレンドとの関係では、ポストカード以外の関わり方はありますか? ARモードがあるのとのことでしたが、ピクミンとの写真を共有するような仕組みがあるのでしょうか。
野村氏
ナイアンティックがすごく大事にしていることのひとつは「リアルでのコミュニケーション」です。ゲーム内で完結させるのではなく誰かと一緒に出かける、歩くということをゴールにしています。
その前提の上で、「ピクミンブルーム」ではポストカードの交換ができます。
ARモードの写真交換は当初できません。今後はまだお話はできないところです。
アバターとして「Mii」がありまして、友達と一緒に花を植えるモードがあります。これを使うことで一緒に友達のMiiも歩いていきます。
オンラインでのコミュニケーションは、もう数多く世の中にあります。そこよりも、(ピクミンブルームでは)オフラインで一緒にどうコミュニケーションに持っていくか。そこが一番僕らがやりたいことです。「花を一緒に植える」「一緒に散歩する」ことのほうを大事にしています。
――ピクミンといえば、ボス戦がある。ピクミンをたくさん投げつけるバトルを今回の「ピクミンブルーム」でも楽しめるのでしょうか?
野村氏
原作での「原生生物」は、当初、登場しません。ただ、「ピクミンをたくさん送り込んで、キノコを破壊する」という遊び方をご用意しています。
――Mii のカスタマイズはどこまで拡充されますか? 自分そっくりにできるのでしょうか?
野村氏
ニンテンドーアカウントと連携していただければ、フルにMiiをカスタマイズできるようにしてます。
――原作となる「ピクミン」シリーズの醍醐味は、原生生物の登場や、ユニークな名前のお宝、フルーツといったことだと思うが、今後のアップデートでそれらの要素を追加したり、原作に近いシステムを実装したりする予定はありますか?
野村氏
もちろんいろんなアップデートを予定しています。しかし、「ピクミンブルーム」が原作の延長線にあるかというと、ちょっとズレると思っています。あくまで原作と分けて、「ピクミンブルーム」というサービスなんです。
いかに歩いてもらい、楽しんでいただくかという点にフォーカスしています。原作は原作で、「Switch」でも最新作が用意されており、そちらで楽しんでいただく部分と、ピクミンブルームで楽しんでいただくものを分けていただく、楽しんでいただくほうがいいのかなと思います。
――原作の主人公であるオリマーは登場しますか?
野村氏
原作では、どこかの惑星ですが、「ピクミンブルーム」の舞台は地球上なんです。宇宙人が登場する予定はないんです。
――歩数以外にカロリーなども表示できるようにする計画はありますか?
野村氏
今後のアップデートで、そういったものが増える可能性は十分にあります。ただ、まずは歩数にフォーカスしました。
距離にしろ、カロリーにしろ、運動のためのダイエットアプリといったサービスはすでに数多く存在します。そこで、まずは(外出を促す、歩くことを楽しめるようにするため)まず歩数にフォーカスしました。
――Mii のアイテムで、たとえば「オリバーの服」が登場する可能性はありますか?
野村氏
そういったバリエーションは今後増えていく予定です。どういったものになるかは楽しみにしていただければと思います。
――多くのプレイヤーが参加するようになれば、多くの花が咲き誇ることになるでしょうが、どういったタイミングで消えるのでしょうか。
淺川氏
マップ上に植えられる花には寿命があり、植えてから数日で枯れるようになっています。人が植えた花に、重ねて別の色の花を植えることもできます。いろんな色合いになることを楽しんでいただけるという形です。
野村氏
植えた花は、プレイヤー同士で見えるようになりますが、ユーザー同士で挨拶したり、コミュニケーションしていただいたりしてほしいと思っていますが、そこは個人の判断と言いますか、プライバシーや安全に配慮して、安心できる範囲のなかで遊んでいただけるのが良いのかなと思います。
――プライバシー対策はありますか?
淺川氏
地図上に植えた花は、ほかの人からも見えます。ただ、誰が植えた花かは、全くわかりません。
友だちと一緒に花を植える「いっしょに花植えモード」をONにしていると、自分のMiiがほかの人にも見える状態になります。
自宅まで花を植えた場合も、あとから削除できます。
――散歩を楽しめるアプリということだが、「ピクミンのゲーム」と思ってプレイする人もいると思います。マーケティング上で、どうユーザーに向けてメッセージを出していくのでしょうか。
須賀氏
非常にマーケティングが難しいプロダクトだと僕個人としても思います。アプローチとしては、それぞれに違ったアプローチをしなくてはいけないと思っています、。
たとえば「ピクミン」ファンには、「これはピクミンを使ったゲームです」というコミュニケーションが必要でしょう。そのピクミンを期待してくださった方々ががっかりしないようなゲームといいう自信もある程度あります。
Pokémon GOのトレーナーに向けては、「Pokémon GO」と補完するものとお伝えしていくことが大切でしょう。
それ以外の方々には、「このアプリは無理しなくてもいいんですよ、アプリで時間を使うのではなく、インストールしていただくだけでいい」と伝えていきたい。もちろんインストールしていただくことがとても大きな課題でしょう。