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ソフトバンクの「B.LEAGUE」顔認証実験レポート――顔パスで入場、参加者はフードとドリンク無料
2021年10月1日 18:16
ソフトバンクとジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)、沖縄バスケットボールは9月30日、沖縄アリーナ(沖縄県沖縄市)で開催された「B.LEAGUE 2021-22 開幕戦 琉球ゴールデンキングスVSアルバルク東京」において、顔認証ソリューションを活用した新たなスポーツ観戦体験の実証実験を実施した。
今回は、同実証実験の模様をご紹介する。
今回の実証実験では、試合を観戦するユーザーを対象に、チケット情報とユーザーの顔の情報を事前に登録してもらい、ユーザーの顔情報をもとに「顔認証で入場できる」取り組み。
実験に参加したユーザーには、「スタジアムまでの無料シャトルバス」や「オリジナルグッズの配布」、「スタジアム内の無料フード/ドリンク」、「選手からのオリジナルメッセージ」、「専用プレミアムラウンジ」が提供された。
顔認証システム
今回の実証実験で使用する顔認証システムは、iPadのインカメラが利用されている。また、後述の体温測定は、外付けのセンサーが利用されている。
ソフトバンク担当者によると、今回の顔認証では、ユーザーの顔の骨格などの特徴点をもとに認証をしているという。このため、認証時は「マスクを取り外す」ことや、サングラスや眼鏡の取り外し、前髪を上げるなどが必要なケースもある。
認証システムは、通信環境によって認証が遅くならないよう、事前登録済みの情報がデバイスに保存され、デバイス上で認証を行う。
スタジアムまでの無料シャトルバス
事前に登録しているユーザーには、近隣の大型施設からの無料シャトルバスが用意されている。
シャトルバス乗車時に、顔認証を行い同時に検温を実施。体温が正常範囲から外れている場合、オレンジのデザインのポップアップ画面が表示され、案内するスタッフから改めて検温を実施する。
顔認証のスピードは、人によりまちまちで数秒でスムーズに進む人もいれば、何度やってもうまくいかないユーザーもいた。
ソフトバンク担当者によると「光の反射や太陽光、明るさなど環境に依存することがある」という。また、「顔認証を登録した環境」によっても、認証精度が変わってくるとのこと。今回の実証実験では、こうした登録/認証環境の変化の実験データなどを収集し、今後の開発に生かされるのだろう。
入場ゲートでは多少の混雑がみられる
入場ゲートでは、2つのレーンで顔認証によるチケットの確認が実施された。
入場口手前で手荷物確認を行った後、顔認証システムで認証し入場する流れ。一方、顔認証を利用しない来場者は、手荷物確認のあとスマートフォン上でチケットの二次元コードをスキャンし、入場する。
入口付近では、顔認証システムについて案内を求める来場者や、メディアによる取材などで多少混雑している印象だった。顔認証システムは、子供や背の低いユーザーも利用することがあり、iPadのスタンドを傾けたり箱馬のような台に乗って認証する必要があった。
大盛況のフード/ドリンクコーナー
会場内には、顔認証ユーザーに無料フードとドリンクが提供されていた。ドリンクカウンターが1カ所、フードカウンターが2カ所用意されており、カウンター手前の顔認証システムで認証後、カウンターのフードやドリンクをピックアップできる。
入場開始から試合開始まで時間があったためか、多くのユーザーがカウンターに立ち寄り、フードやドリンクを楽しむ光景が見られた。
今回の実証実験では、一人あたりの利用制限については特にカウントせずに実施した。前述のように顔認証の精度について実験の段階であるため、「ユーザーに損得がないよう」配慮されたようだ。現場でも、認証がうまくいかないユーザーには、柔軟に対応されていた。
オリジナルグッズの配布カウンターでは、カウンターに認証システムが設置され、同様に認証されるとグッズが配布されていた。
専用プレミアムラウンジには、「5G LAB」体験コーナーも
事前に抽選で当選したユーザーが入室できるプレミアムラウンジでは、ドリンクの提供のほかソフトバンクの「5G LAB」の体験コーナーが用意されていた。
試合開始までの間、ユーザーが消毒されたデバイスで「5G LAB」のコンテンツを楽しむ光景が見られた。
またプレミアムラウンジでは、このほかユニフォームの展示などがあり、試合前から気分を高められるコンテンツを体験できる。
スマホを取り出さないイベント体験を
イベント施設での顔認証システムの活用について、ソフトバンク担当者は「スタッフとの接触機会をなくすという点において、この先のウィズコロナで非常に重要なポイントになる」とコメント。
今回のシステムでは、「認証精度」や「マスクの取り外しが必要」など課題がある印象だった。担当者は「今回が初めての取り組み」と前置きした上で、「今回は、精度を上げることはできなかったが、技術的にはマスクの取り外しなしで認証はできると思う」とした。
ソフトバンクが顔認証システムを手がける意義について「スポーツDXを推進していきたい思いがあり、福岡ソフトバンクホークス(プロ野球)やB.LEAGUE(プロバスケットボール)などと関係があるソフトバンクとして、国内外のスポーツの反映をサポートしていきたいという観点から、今回の取り組みを実施した」(ソフトバンク関係者)とし、今後も精度向上などに取り組んでいきたいとしている。
また、「顔認証」にこだわった点について担当者は、「スマートフォンを取り出さずにできる」ことを理由に挙げ、将来的には決済などを絡めた新たなスポーツ観戦体験を提供していきたいと、今後の開発に意気込みを見せた。
琉球ゴールデンキングスの今季開幕戦となった「B.LEAGUE 2021-22 開幕戦 琉球ゴールデンキングスVSアルバルク東京」は、後半にキングスが逆転し63対62でキングスが勝利した。
実証実験は、10月2日も実施される。参加には、チケットの購入と、事前に試合観戦チケットの購入と顔情報登録アプリ「Face&Go」で顔情報の登録が必要となる。