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ソフトバンクグループ孫氏、「AIがこけたらソフトバンクもこける。ネットがこけたらGAFAがこけるようなもの」

 10日、ソフトバンクグループは2021年度第1四半期の業績を発表した。当期純利益は7615億円で、前年同期の1兆2557億円と比べると約5000億円減少した。ただしこれは前年同期に米スプリントの株式売却益(1.1兆円)が含まれていた。

孫氏

 同日16時からの決算説明会で代表取締役社長兼会長の孫正義氏は、自社を単なる投資業ではなく「資本家」と位置づけ、引き続きAI関連企業への投資を意欲的に進めていることを紹介。同社の投資ファンド「SVF(ソフトバンクビジョンファンド)」の投資先は301社となり、スタートアップ企業が中心。今後の成長を控える企業が多く、世界のAI活用企業の10%に出資していると語る孫氏は、少数の企業に偏らず、リスクを分散できているとアピールする。

 ただし「AI」というジャンルには集中して投資することは唯一、リスクを取っていることと語り、「AIがこけたらソフトバンクもこける。ネットがこけたらGAFAがこけるようなもの」と逆説的なたとえで、AIが切り開く未来が確実に訪れるとアピールした。

上場株の扱い

 同社投資先の価値(時価純資産)のうち、87%が上場株を占める。

 今回の会見では、ビジョンファンドで投資した分などのうち、2兆円分は売却したことが明らかにされた。今後の投資資金として活用される。

 ノーススター(投資専門のソフトバンクグループ子会社)やFacebook、Amazon、グーグルなどの株式もそうした手元の余剰資金で運用しているとのことだが、ノーススターの運用分は最近になって減らし、ビジョンファンドへ振り分けている。

孫氏が今注目するAIアプリ・サービス

 ここ最近のソフトバンクグループの決算説明会は、前半に投資概要、後半に投資先のうち、孫氏が特に着目するアプリやサービスが紹介されるという構成。ここからは、説明会で紹介された、孫氏が期待するアプリの一部をピックアップする。

クレカなしでショッピングできる「Klarna」

クレカなしでもワンタイムカードを発行して買い物できる「Klarna(クラーナ)」。即時払いのほか、割賦や後払い、キャッシングといった決済・サービスをアプリ上で提供している。

 ユーザーへの信用枠は、クレジットスコアや購入履歴・閲覧履歴をもとに、与信リスクをリアルタイムでAIが分析する。リピートして利用することで、クレジットスコアも向上し、実際に続けて使うユーザーは購入頻度や平均購入額がアップしているという。

 何年も前から投資したかった、と語る孫氏によれば、2020年度は取扱高が6.3兆円に達した。資金は十分と断られていたが、最近孫氏が話をして、やっと投資を受けてもらえるようになったという。

倉庫の効率をアップ「AutoStore」

 「AutoStore」というサービスは、倉庫にグリッドを設置し、その上で動くロボットが在庫を置き直していくことで、倉庫を新設することなく、効率的な収納を実現する。

 「3次元で横だけではなく上下で棚をコントロールして、スペースの利用効率を一気に上げる」(孫氏)というもので、ウイズコロナ時代で世界的にEコマースの利用が増えていることを背景に、今後の成長が期待されている。

 ソフトバンクグループは40%、出資しており、「かなり利益が出ている。近い将来、楽しみな上場ができるのではないか」と孫氏も大きな期待を寄せた。

インドのフードデリバリー「SWIGGY」

 米国での投資で利益を出したと語る孫氏が紹介する期待のフードデリバリーが「SWIGGY(スウィギー)」だ。

 インドでのシェアは50%(もう一社も50%)と市場を分け合う存在とのことで、月間アクティブユーザーは2000万人、1日あたり150万件、ドライバーが20万人という規模。オーダー件数は1年前と比べ2.5倍、売上は2.8倍と急成長を遂げた。

 最近は、フードだけではなく、日用品のデリバリーも開始しており、配車効率化や、ユーザーへのリコメンドにおいて、購買履歴・時間帯・曜日などをAIが分析したデータが活用されている。

中国市場への姿勢と経営陣のコミットメント

 ソフトバンクグループが保有する投資先の資産価値(プレゼンテーションでは時価純資産と表現)のうち、39%を占めるのが中国のアリババグループ。しかしそのアリババには中国政府から規制が強まっている。孫氏も今回の会見で「6月末を過ぎて、中国で問題が出てきた」と語る。

 中国の株式市場は、アリババ、テンセント、バイドゥなどハイテク株にとって受難のときと説明した孫氏は「業績は伸び続けている。株価も持ち直すと信じている。良いとき悪い時はあるが、私の信念『AI革命は必ず革新する』ことを信じている。経営陣はしっかりリスクをとって、今後の投資活動を続けたい」と説明。

 その後の質疑でも、中国市場に対する受け止めを問われた孫氏は「世界のAIの中心は米国と中国。中国におけるAI技術、ビジネスモデルの革新はどんどん続くと信じている。しかし投資活動としては、さまざまな規制が始まっている。どんな影響があるか、もう少し様子を見てみたい。中国政府の動きへの反対や疑念はないが、新たな規制が始まろうとしており、固まるまで様子を見たい」と語り、期待感は示しつつも、新規の投資については慎重な姿勢を示した。

 また同社に大きな利益をもたらしてきたアリババについては、「中国の独禁法規制で、多額の賠償金みたいなものを支払ったばかり。新しいルールに基づいて、今後の事業活動が継続されると信じている。売上は依然として1.3倍増くらいがここ最近続いており、直近も衰えていない。アリババの株価もいずれ落ち着けば、また回復してくると信じている」とした。

 このほかソフトバンクビジョンファンド(1号)では、ソフトバンクグループの経営陣は、17%ほど自身の資金で出資していることを取締役会で決議していたが、その後、コロナ禍で赤字となったため中断。しかし、最近は、中国市場の状況などはあるが、落ち着いてきたとのことで、あらためて取締役会で承認され、2号ファンドへ経営陣からの出資が実行されることになった。手順としては、17%相当を孫氏自身が全額出資。その後、ソフトバンクグループの経営陣がその一部を手にする形にしていくという。